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地球温暖化に関する議論

2013年3月10日の記事「ニセ科学」と仮称される問題群の論点整理の試み」に関する議論のうち、地球温暖化問題に関するものは、次に温暖化に関する記事を書くまで、ひとまずここで続けましょう。

ヒマラヤの氷河と水資源 (情報更新)

== チベット高原を含むアジア広域の水資源問題 == このブログで次のように何度も書いている件について、いくらかの新しい情報。 2010-01-28:チベット・ヒマラヤの氷河は十億人の水資源なのか 2011-08-09:チベット・ヒマラヤの氷河は十億人の水資源なのか (ふ…

どういう意味の科学者の合意(コンセンサス)が望まれるのか

2012年9月15日に仙台で開かれた環境経済・政策学会のシンポジウム「気候変動に対処するための分野横断的研究を目指して: 研究分野間の対話の試み」(趣旨説明ポスターPDF http://www.managi-lab.com/seeps/poster.pdf )に参加した。シンポジウムの話題の紹介…

持続可能な社会に向けた環境・エネルギー科学技術の課題

勤務先のウェブサイトにわたしが職務の一端として書いた文章がのりました。 「持続可能な社会に向けた環境・エネルギー科学技術の課題」 http://scienceportal.jp/reports/strategy/1207.html http://scienceportal.jst.go.jp/reports/launchout/20120720_01…

日本気象学会講演会「地球温暖化問題における科学者の役割」

日本気象学会(http://www.metsoc.or.jp/ )の2012年春季大会は5月26日(土)から29日(火)まで、つくばで開かれた。わたしはそのうち26日と27日に出席した。これはそのうち、26日午後に開かれた公開気象講演会「地球温暖化問題における科学者の社会的役割」につ…

放射強制(力?) -- radiative forcing

「放射強制力」(英語ではradiative forcing)という用語は気象学者の間でも通用するとは限らない。しかし、地球温暖化のしくみを説明しようとすれば、表現はともかく、これに対応する概念を含む話になるはずだ。これは物理学用語でいう「力」ではない。それに…

温室効果

このことばは他分野でも使われるようになったが、議論の混乱を避けるため、他分野のかたも気象学者の使いかたに合わせていただきたいと思う。「温室効果」(英語 greenhouse effect、フランス語 l'effet de serre、ドイツ語 Treibhauseffekt)は、地球などの惑…

気候変動適応研究にどう取り組むか

(今、わたしは、この研究に直接取り組む立場ではなく、研究を推進する(予算をつける)立場を想定して(しかし実際に予算をつける権限は持たずに)考えている。)(すでにどこかに書いていることのくりかえしが多くなってしまうが....)地球温暖化については、軽減…

極東の槌田敦氏と極西のJames Lovelock氏の功績と限界

2006年初めに槌田敦氏の「CO2による温暖化は起こらない」という趣旨の講演 (槌田 2006の本とほぼ同じ内容)を聞いた。同じ年のなかばにはLovelock (2006)の「温暖化は生態系の破滅をもたらす」と主張する本を読んだ。とても悲しかった。([ある本の読書ノート]…

地球温暖化問題についての視野を広げる

11月16日に出席した会議[注]の中で、IPCC第3部会の編著者のひとりである杉山大志さんの講演を聞いた。杉山さんはもちろん地球温暖化問題の重要性やIPCCの意義を否定はしないが、「『温暖化を産業革命前+2℃以内にくいとめる必要がある』という主張がIPCCのも…

エントロピー問題と地球温暖化問題の関係

地球環境問題と天然資源枯渇の問題は境目がない。Daly流に「自然資本の消耗」とまとめたほうがよいかもしれない。この問題がむずかしいことには、自然的理由と社会的理由がある。社会的理由を総括的に述べることもむずかしいが、関係するキーワードとして「…

科学者までがチベット・ヒマラヤの氷河は十億人の水資源と思っているのか?

[8月9日の記事「チベット・ヒマラヤの氷河は十億人の水資源なのか (ふたたび)」]の補足。[2010年1月28日の記事「査読を経た論文だから信頼できるとは限らない」]で、とくに論文の序論や、結論を述べたあとの補足的考察の部分は、著者の勝手な発想を査読者が…

経済成長へのこだわりを捨て、再生可能エネルギーに適応しよう

原子力発電所の事故をきっかけに、地球温暖化(の原因)は加速してしまったにちがいない。(直接の被災地以外の)日本の(そしてたぶんほかの国の)人々が、エネルギー資源の消費をいくらか節約はしたが、産業構造を変えてまで減らすことはせず、原子力による電力…

環境税(炭素税)または排出枠収入でどんな国民の負担を減らすか

環境問題は、経済学の用語でいう「外部不経済」を含む。生産活動に伴って他の人に損害(外部費用)が生じるのを避けるためには、その費用を生産者に負担させる必要がある。費用負担のしくみを作るところは市場経済だけではできず、政治による市場への介入が必…

IPCCは第5次報告書を出したあと発展的解消を

IPCC (気候変動に関する政府間パネル http://www.ipcc.ch )の将来についてのわたしの考えは、[2010年3月5日の記事]に書いたのと基本的に変わらないが、関連する世の中の動きに応じた改訂をして述べる。現代の人類社会は、気候変化への対策、生物多様性・生態…

ヒマラヤの氷河の縮小:確かな情報

こちらは本来の意味のヒマラヤの氷河に関する研究のニュースです。名古屋大学の藤田耕史さんと縫村崇行さんによる論文が、アメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)に出ました。印刷版が出る前のオンライン公開です。[2012-12-29改訂: 正式版への参照に変えておきま…

チベット・ヒマラヤの氷河は十億人の水資源なのか (ふたたび)

IPCC第4次報告書(2007年)の第2部会の巻には「ヒマラヤを含むアジア高地の氷河のとけ水に頼る人口がなん億人もいる」という趣旨の記述があるが、これはまちがっている。出典となる文献の知見に忠実に述べれば、「氷河のとけ水」を「積雪および氷河のとけ水」…

IPCCとそれに関係する科学の自律性について

IPCC (気候変動に関する政府間パネル)は、政策決定者のために科学的知見を整理して提供するが、政策をしばることはしない、という位置づけで作られた。このようなしくみによって、科学者が、科学者としての規範を曲げずに活動しながら、政治に影響を与える道…

IPCC業務改善のゆっくりした動き

IPCC (気候変動に関する政府間パネル http://www.ipcc.ch )の再生可能エネルギーに関する特別報告書が出た([別ブログの記事]でふれた)のを機会に、それを認めた5月10-13日のIPCC総会のほかの議事について少し見てみた。ただし、調査したというほどではないし…

地球温暖化に農作物をどう適応させるか

地球温暖化は、ある程度は、避けられなくなってきた。ただし、その数量となると、グローバルな予測もむずかしい。まして、各地域のローカルな気候変化の予測は、残念ながら、あまり詳しくはできないのだろう。(感覚的にはわかりにくいことだが、理論から出発…

(メモ) この嵐は地球温暖化のせいなのか?

アメリカのたつまき(tornadoes)による災害について「このように激しくなったのは地球温暖化のせいだ」という表現が適切かどうかについて論争がある。わたしはMichael Tobisさんの個人ブログの記事Spinning Tornadoes (4月30日)で知った。ものごとがわかって…

気候変化には適応策だけでなく軽減策も必要だという、不確かさの中での判断

地球温暖化の科学にかかわる科学者たちのブログ RealClimate のRasmus Benestadさんの3月7日の記事http://www.realclimate.org/index.php/archives/2011/03/what-we-do-not-know-in-terms-of-adaptation/ で紹介されていたので、次の論文を読んだ。 Naomi Or…

「地球温暖化による地球規模の大干ばつがもたらす食料危機」Yes and No

地球環境問題については、正確さを保って短く要約することがむずかしいことがらが多い。新聞の見出し、Googleなどの検索に出てくる各ウェブサイトの表題・内容断片、Twitterなど、字数制限のきびしいところに要約された表現は、どうしても正確さに欠けるとこ…

気候変化に関する科学と政策の関係の見なおし

Sylvia Tognettiさんに紹介されたRommetveitほか(2010)の論文(本の章)を読んだ。著者の議論のわたしなりの要約 地球温暖化の科学的見通しが確かになったにもかかわらず、温暖化対策の政策がなかなか進まない。その原因は、科学的知識が正しく人々に伝わって…

気候決定論ではいけない。気候影響評価よりも、将来歴史可能域評価をするべきではないか?

気候モデルによるいわゆる温暖化予測実験の結果を影響評価に活用しようという研究集会に出席しました。IPCC第5次報告書をにらんだいくつかの研究計画が背景にあるものです。ただし、わたしの日程が大学で担当している授業と重なってしまい、途中までしか出席…

「あしたのエコでは間に合わない」という宣伝を聞いて思ったこと

たしか2008年の1年間だったと思う(もっと正確な情報がわかったら訂正する)。NHKテレビが、番組の切れ目ごと、たぶん1時間に1回以上の頻度で、「あしたのエコでは間に合わない」というメッセージを出していた。わたしは、一方でそれは出すべきメッセージだと…

地球温暖化に関する講演(11月4日、秋田県本荘で)

11月3日の秋田での講演(11月1日の記事で述べた)に続き、11月4日には秋田県立大学本荘キャンパスで金澤伸浩准教授の「環境システム工学」の一環として、地球温暖化に関する講義をした。重点は前日の講演とは違い、温暖化という自然科学的現象の理解について、…

講演「地球温暖化を見渡す」(11月3日、秋田で)

11月3日、「大学コンソーシアムあきた」からの依頼で、秋田市(カレッジプラザ)で地球温暖化に関する話をすることになりました。http://www.consortium-akita.jp/info/detail.html?no=638 に予告が出ています。この記事ページは、講演の補足と、講演に関連し…

IAC (InterAcademy Council)によるIPCCのレビュー: わたしの理解

IPCC (気候変動に関する政府間パネル) の仕事のしかたを見なおすInterAcademy Councilによるレビューの報告については、8月31日の記事(9月1日追記)で紹介した。これについて、わたしは次のように理解している。(少ない情報にもとづいて推測をまじえて述べた…

IAC (InterAcademy Council)によるIPCCのレビュー: 報告書が出た

[8月31日、とりあえず情報のみ。]IPCC (気候変動に関する政府間パネル) の仕事のしかたを見なおすInterAcademy Councilによるレビュー(このブログでは3月11日、5月5日の記事で紹介した)の報告が、8月30日に出た。そのウェブサイト http://reviewipcc.interac…