macroscope

( はてなダイアリーから移動しました)

IPCCは第5次報告書を出したあと発展的解消を

IPCC (気候変動に関する政府間パネル http://www.ipcc.ch )の将来についてのわたしの考えは、[2010年3月5日の記事]に書いたのと基本的に変わらないが、関連する世の中の動きに応じた改訂をして述べる。

現代の人類社会は、気候変化への対策、生物多様性・生態系機能の保全、貧困を減らすことを、並行して進めなければならない。このためには、これまでIPCCがやってきたような、科学的知見を整理する仕事は、ますます必要だ。そのうちには、対策の案を比較検討する仕事もある。しかし、対策を検討するときに、気候変化だけに最適化して考えたのでは、他の面でまずい策を提案してしまうおそれがある。人類社会の持続可能性を高めるという大きな目標に立って評価するべきだ。

IPCCが気候変動枠組み条約(FCCC)に対するのと同様な役割を、生物多様性条約(CBD)に対してするものとして、IPBES (Intergovermental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services, 生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)が国連環境計画(UNEP)のもとに作られることになった。ウェブサイト http://ipbes.net もできている。これはMillennium Ecosystem Assessment (http://www.maweb.org )を引き継ぐものでもある。

そこで、わたしの意見は、IPBESが最初の総合評価報告書を、IPCCが第5次評価報告書を完成した時点で、両者を合併するべきだというものだ。ただし、IPBESにもIPCCにも人間社会に関する要素があるけれども、もっと正面から人間社会の持続可能性を考える仕事も必要だろう。それは国連のミレニアム開発目標 (MDG, http://www.un.org/millenniumgoals/ )に関連すると思う。ただし国際政治として政策の達成度を評価したり目標を改訂したりする立場(気候ではFCCC、生物多様性ではCBDのそれぞれ締約国会議の役割)とは別に、その背景となる科学(社会科学を含む)的知見をなるべく公平に展望する立場があるべきで、IPCC、IPBESと統合されるべきなのはそれだと思う。

組織論はよくわからないが、わたしの考えられる範囲での案を出してみる。

  • 持続的社会のための国際科学評価パネル International Scientific Assessment Panel for Sustainable Society
    • 第1作業部会(WG1): 物理・化学的環境変化の評価
    • 第2作業部会(WG2): 生態系・生物多様性の評価
    • 第3作業部会(WG3): 人間生存の基礎的条件の評価
    • 第4作業部会(WG4): 持続可能性を高めるための政策や技術の評価

新WG2はIPBESの発展的継続だ。新WG1はIPCCのWG1の発展的継続とも言えるが、温暖化・海洋酸性化ばかりでなく、オゾン減損や広域大気汚染も主題に含まれてくる。IPCCのWG2の活動は新組織の4つのWGに分散する。たとえば気候変化の生態系への影響は新WG1と新WG2にまたがる主題だが、生態学者が集まる新WG2の課題に気候変化の影響を含めておき、その議論には新WG1のメンバーも参加する形が適当だと思う。同様に気候変化の社会への影響は新WG3の課題になるだろう。IPCCのWG3の活動は要素に分解され、新WGそれぞれの観点から必要な要素が拾いあげられることになるだろう。