macroscope

( はてなダイアリーから移動しました)

2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

極東の槌田敦氏と極西のJames Lovelock氏の功績と限界

2006年初めに槌田敦氏の「CO2による温暖化は起こらない」という趣旨の講演 (槌田 2006の本とほぼ同じ内容)を聞いた。同じ年のなかばにはLovelock (2006)の「温暖化は生態系の破滅をもたらす」と主張する本を読んだ。とても悲しかった。([ある本の読書ノート]…

頭文字略語、MJO、ENSO、NAO、AO、PDO、AMO

気候に関心のある気象学者・海洋学者が使う英語頭文字略語は O で終わるものが多いようだ。そのうち固有名詞的なものの O は、「組織」や「機関」を意味するorganizationであることが多い。他方、概念を表わす略語の O は oscillation (振動)であることが多…

頭文字略語、SST

専門的な内容の文章には略語が出てくることが多い。専門的概念を表わす語は長くなることが多く、その語をたびたび使いたい場合に毎回正確な表現をすると、くどくなってしまい、決められた字数の枠に書ける情報が少なくなってしまうのだ。日本語では、専門用…

いろいろな平衡

「平衡」ということばは文脈によって違った意味に使われる。第1は、力のつりあいだ。ある物体にかかる力のベクトルとしての合計が0になることであり、Newtonの運動方程式によって、その物体は静止または等速直線運動をすることになる。気象でよく使う「静水…

地表面、地表面温度、地上気温

地面(陸面)と水面(海面、湖面)のどちらにもあてはまる用語は日常には必要ないのかもしれないが、気象学では必要になる。下が固体であろうと液体であろうと、大気という気体のあるところの下の端の面をさすことばだ。日本語では「地表面」という。英語では単…

科学者の役割に関する図についての議論

吉川 (2010)の図2 (表題は「持続的進化のための科学者の役割」とある)は、 社会、自然 → 観察型科学者 → 構成型科学者 → 行動者 → 社会、自然 というループを含んでいる。この図をわたしは、ある、やや具体的な課題に関する科学研究をどう進めるかという文脈…

労働契約法改正の趣旨はもっともだが任期制研究労働者には抜け道が必要

労働契約法の改正案が閣議決定されたそうだ。 労働契約法:有期雇用の処遇改善 5年超で「無期」に転換 毎日新聞 2012年3月23日 13時47分(最終更新 3月24日 14時02分) http://mainichi.jp/select/wadai/news/20120323k0000e040239000c.html この報道よりも…

日本語140字は英語140字の約2倍

Twitterの字数制限は140字だが、英語のアルファベットも日本語の文字も1文字と数えられることを最近知った。日本語140字ならば英語140字のだいたい2倍の情報を書ける。きちんと数えなおすゆとりがないのだが、英語の文書を日本語に訳したとき、バイト数で約2…

つぶやき

Twitter上の議論に参加したいと思うことがときどきあるのだが、わたしが言いたいことが140字以内で書けることはめったにない。別のところに書いておいてそれへの参照をtwitterに書くという手はあるのだが、そう思って「別のところ」に書き始めると、twitter…

元御用学者は匿名で発言してはいけないのか

またしても、わたしとしてはぜひいっしょに議論してほしいと思う二つのグループ【と仮に書いたがどちらもメンバーが明確な組織ではない】の人々が、おもにtwitter上で、相互不信を強めてしまったようだ。背景には[1月1日の記事]にも書いた、放射能の問題、と…

春分

春分の日だから何か書こうと思ったのだが、おととしの立秋に書いた[立秋をすぎると、どういう意味で秋になるのか]と同じになりそうなので、リンクだけ示しておくことにする。

パーセントとppm、濃度と湿度

【この記事は 2018-11-04 に増補改訂した。これからも書きかえるかもしれない。いつどこを書きかえたかをかならずしも明示しないことをおことわりしておく。】 -- 1 : 割合の表現 -- 大きな量に対する小さな量の割合を示すときに、次のような表現をよく使う…

空気についての気体定数

気体や液体の「状態方程式」とは、その物質の圧力・体積・温度の関係を表現する式だ。その代表的なものとして「理想気体の状態方程式」がある。どんな成分からなる気体でも、理想気体で近似できるのならば、同じ式が使えるのだ。多くのみなさんが、高校の化…

西風は東向きの流れ

「西風」とは西の方角から吹いてくる風だ。「東風」「南風」「北風」も同様だ。この表現は、気象学者・気象実務家だけでなく一般の人も使うので、方言ではなく共通語というべきだろう。しかし、風は空気の流れだ。一般に流れの向きをどう表現するか、さらに…

「気象むらの方言」シリーズ記事のまえおき

同じ専門の勉強をした人どうしの話を、その専門の勉強をしたことがない人が聞くと、まったく違った意味にとってしまうことがある。しかし現代には、一般の人の生活の中でも、そしてとくに政策決定の場では、いろいろな専門の知識を使わなければならないこと…

ゆく川の流れはたえずして . . . 持続性の思想、準定常系の概念

「方丈記」(鴨 長明, 1212年) の最初の2文はとても重要なことを言っていると思う。このことをわたしは2003年に[英語のウェブ記事]に書いた。しかし、その2文についてのわたしの記憶が正確でなかったようで、いま [2012年] になって英語の記事を訂正した。た…

消費税論議をとらえなおす

日本でいま最大の政治課題は、消費税の増税(税率上げ)のようだ。ただし、政党間の対立ではなく、主要政党がそれぞれ内部で分裂した状態にあり、どう落ち着くかわからない。増税よりも先に支出のむだを削るべきだという議論がある。筋としての正論ではある。…

カチャタナパマヤラワ

10年ほど前、タイ語の初歩を勉強しようと思った。もっとも、タイ語を話せるようになろうと思ったわけではなく、タイ語で注記された地図が読めるようになりたかっただけなので、実質、文字の読みかただけを勉強した。ただし、タイ語・日本語やタイ語・英語の…

十万年、百万年の桁の時間スケールを歌う人々が住む国

現代日本で、「君が代」は論争のたねとなる。論争はとくに、それを歌いたくない人に強制的に歌わせることについてのものだ。歌いたくない理由は、たいてい、この歌が、天皇に主権があるとされた明治憲法のもとでの国歌だったことによる。また、この曲が雅楽…

アメリカへの武器輸出許可はイスラエルへの横流し禁止が前提 (くりかえし)

[2011年10月13日の記事]をごらんいただきたい。日本はアメリカに対して、日本の防衛技術がイスラエルに流れることについては、イランに流れることと同等にきびしく制限することを要求するべきだと思う。それが認められなければアメリカに防衛技術を出しては…

怒 = ndo

Donald Keene氏が日本国籍をとった。名まえの正式表記はかたかなの「キーン ドナルド」にしたらしいが、「雅号」として漢字の「鬼怒鳴門」と名のることにしたそうだ。日本の地名の知識のある人ならば、これを「きぬ なると」と読むのがふつうだろう。しかし…