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静岡県 牧之原市 での たつまき・突風 (2025年 9月)

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたか、かならずしも明示しません。】

【わたしは気象学の専門家ではありますが、この記事は個人的おぼえがきにすぎず、専門的知識の提供はできていません。気象庁その他の情報源へのリンクを正確にするところだけ、専門家としての意識でやっています。】

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2025年 9月 5日 (金)、台風15号にともなって日本のあちこちで災害が生じたが、そのうちに、「静岡県 牧之原 [まきのはら] 市で たつまき らしい突風」というものがあった。

わたしは、なじみのある地域のことなので気にかかっていたが、くわしい報告をまつことにした。

ところが、わたしのブログへのアクセス記録をみると、[(1) 2021-05-02 の記事] が読まれている。それは、2021年5月1日におきた たつまき についての話題で、つづきの [(2) 2022-12-09 の記事][(3) 2023-04-13の記事] も書いた。しかし、今回のたつまきの話題ではないので、検索した人はがっかりしたかもしれない。

ひとまず、今回のたつまきについて、すぐわかった範囲の情報をまとめておくことにした。

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【この記事のこの部分は、気象庁からくわしい情報がでるにつれて、書きなおす予定です。中間報告の情報を紹介しつづけることを約束しません。】

たつまきの可能性のある突風があると、気象庁では現地調査をして、被害報告とともに、たつまきであったかどうかの判断をすることにしている。今回のたつまきについては、静岡地方気象台のサイト https://www.data.jma.go.jp/shizuoka/ に報告がでる。

9月8日 (月) の朝8時の時点では、短い「中間報告」がでていた。

その発表要旨の部分を引用しておく。

9月 5日 12時 50分 頃、静岡県 牧之原市 静波 (しずなみ) から 細江 (ほそえ) にかけて発生した突風の種類は竜巻と認められます。その強さについては分析中です。
また、掛川市及び吉田町の突風については、調査で得られた資料を分析し、現象の特定について調査中です。
牧之原市で発生した突風の強さ、掛川市及び吉田町の調査結果については、明日 (8日) 以降に公表する予定です。

- 2A - [2025-09-08 夜]
9月8日中につぎの報告がでた。これは現地調査の報告で、このあとさらに広域の情報をふくめた報告がでるだろう。

その発表要旨の部分を引用しておく。

9月 5日 12 時 50 分頃、静岡県牧之原市静波(しずなみ)から榛原郡吉田町大幡(おおはた)にかけて発生した突風の種類は竜巻と認められます。その強さは風速約 75m/s と推定され、日本版改良藤田スケールで JEF3 に該当します。
掛川市浜野(はまの)から大坂(おおさか)にかけて発生した突風の種類は竜巻の可能性が高いと判断しました。その強さは風速約 55m/s と推定され、日本版改良藤田スケールで JEF2 に該当します。

中間報告であつかわれた突風は たつまき と断定され、JEF スケール 3 と評価された。今回の報告には「細江」という地名は登場しないが、静波と吉田町 大幡のあいだにふくまれている。

もうひとつ、掛川市で発生した突風があり、 たつまき の可能性が高いとされ、強さは JEF スケール 2 相当と評価された。

- 2B - [2025-09-11]
9月10日中につぎの報告がでた。

その発表要旨の部分を引用しておく。

9月 5日 13 時 00 分頃、静岡県焼津市惣右衛門(そううえもん)から下小杉(しもこすぎ)にかけて発生した突風の種類は竜巻の可能性が高いと判断しました。その強さは風速約 65m/s と推定され、日本版改良藤田スケールで JEF2 に該当します。
9月 5日 14 時 10 分頃、伊東市吉田(よしだ)付近において発生した突風の種類は竜巻の可能性が高いと判断しました。その強さは風速約 50m/s と推定され、日本版改良藤田スケールで JEF1 に該当します。

このうち伊東市のものはだいぶ遠い (60 km ぐらい東) ものだが、焼津市でたつまきの可能性が高い突風がおきた地域は吉田町から大井川のすぐ北側 (旧 大井川町) であり、数十 km あるいは「メソ β」といわれる空間スケールでは、牧之原市・吉田町のたつまきと一連の現象とおもわれる。しかし、牧之原市 静波 と 吉田町 大幡 をむすぶ線からは東にずれているので、1個の たつまき の動きではなさそうだ。

- 2C - [2025-09-13]
9月11日中につぎの報告がでた。

その発表要旨の部分を引用しておく。

9月 6日 12 時 50 分頃、静岡県菊川市半済(はんせい)付近で発生した突風の種類は竜巻の可能性が高いと判断しました。その強さは風速約 45m/s と推定され、日本版改良藤田スケールで JEF1 に該当します。
13 時 00 分頃、菊川市神尾(かんのお)付近で発生した突風の種類は竜巻の可能性が高いと判断しました。その強さは風速約 40m/s と推定され、日本版改良藤田スケールで JEF1 に該当します。
13 時 30 分頃、菊川市西横地(にしよこじ)付近で発生した突風の種類はダウンバーストまたはガストフロントの可能性が高いと判断しました。その強さは風速約 35m/s と推定され、日本版改良藤田スケールで JEF0 に該当します。
また、9月 5日 12 時 40 分頃、御前崎市において発生した被害は突風によるものとは確認できませんでした。

- 2D [2025-09-18] -
9月12日に、気象庁 (本庁) のウェブサイトにつぎの報告がでた、これには、茨城県、高知県の報告もふくまれているが、静岡県については、上の 2A, 2B, 2C で紹介した内容の要点をまとめたものにあたる。

- 2E [2025-09-19] -
9月19日に、静岡地方気象台の「静岡県の気象災害:災害時気象資料」のウェブページに、「令和 7 年台風第 15 号に関する静岡県気象速報」という文書ファイルが置かれた。9 月 18 日 18 時現在のまとめとのことである。これまでの速報よりも充実した内容で、台風15号にともなう雨、風、気象庁が出した警報その他の情報を紹介するうちに、たつまきの件もふくまれている。要約するのがむずかしいので、ひとまずリンクをしめしておく。

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牧の原という地名とその文字表記については [2024-11-04 牧の原、牧ノ原、牧之原] という個人的おぼえがきを書いた。

牧之原市という地方自治体は、2005年に榛原 [はいばら] 町と相良 [さがら] 町が合併してできたものである。

静波は、旧榛原町の中心市街地といえるところで、牧之原市役所 (2か所にわかれているうちの榛原庁舎) もそこにある。駿河湾に面していて、「静波」は海水浴場の名まえとして知られている。市街地として知られた地名はむしろ「(遠州) 川崎」だったのだが、いまの行政地名としては、川崎は (静波と横ならびの地名としては) 存在せず、かつて「遠州川崎駅」のあったところは静波にふくまれている。

細江は、静波の北側、吉田町とのあいだにあたる、やはり駿河湾に面した地区で市街地でもある。

静波という地名の範囲は台地にもかかっているけれども、おそらく今回のたつまき被害の生じた地域は (吉田町もふくめて) 海岸ぞいの沖積平野だろう。 わたしは「牧の原」という地名を台地をさすものとしてつかっているので、今回のできごとを「牧の原でのたつまき」とは言いたくない。行政地名としての「牧之原市でのたつまき」と言うことはある。(わたしの感覚としては「榛原町でのたつまき」なのだがそれでは若い人に通じないだろうから。)

- 4 - [2025-09-08 夜]
掛川市の浜野から大坂は、海 (遠州灘) に近い平野にある。2005年までは大東町、1973年までは大浜町だった。掛川市の中心市街地からは南に 10 km 以上離れている。

- 5 - [2025-09-09 昼] [図のさしかえ 2025-09-11, 2025-09-13]
これまでの気象庁の報告ででてきた地名を、[(2) 2022-12-09 の記事] の地図にあげた地名にくわえて、地図表示してみた。

牧之原市付近のたつまきに関連した地名 (2025-09-13 作図)

2022年12月の記事にいれた図とちがって、地形標高は国土数値情報のいわゆる 1 km メッシュのデータ、海岸線・行政界も国土数値情報にもとづいている。(御前崎の北側あたりに変な線群があるが、国土数値情報の行政界のデータの線の属性をよく理解せずにつかっているせいである。)

×印の位置は、「地理院地図」でそれぞれの地名を検索して得られた地点の緯度経度であり、かならずしもその地名に対応する集落を代表する位置ではない。

- 6 - [2025-09-09 昼]
静岡県による、この災害の被害状況および県としての対応の情報は、つぎのウェブページにふくまれている。

また、小山 真人 静岡大学 名誉教授 (@usa_hakase) の、9月8日の現地踏査およびドローンによる被災地の写真がつぎのページにまとめられている。

(まとめページの最初に出てくる静岡空港の駐車場の洪水は、同じ台風による被災だが、たつまきと直接に関係はない。)

- 7 - [2025-09-11]
たつまきのおきたときのやや広域 (数百 km あるいは「メソα」スケール) の気象状況をみるため、気象衛星 ひまわり 9号の 1時間おきの赤外と可視の画像を、千葉大学 環境リモートセンシング研究センター で位置合わせずみのデータにもとづいて、作図してみた。ただし、衛星がとらえた電磁波 (光、赤外線) の信号の強さと画像の色との関係づけはわたしの作業用のもので、気象衛星画像の慣例と同じではない。

[気象衛星 ひまわり9号 画像の事例: 2025年9月 台風15号・静岡県のたつまき関連]

9月5日 日本時間 12-13時 (世界時 03-04時) ごろには、静岡県のほぼ全域 (浜松から西をのぞく) を、雲頂高度が高く (赤外画像のわたしの色づけで濃い青)、厚い (可視画像のわたしの色づけで濃い赤) 雲が覆っていた。このときの雨雲にはもっとこまかい空間スケールの構造が生じていたにちがいないが、赤外や可視の画像からはその構造を知ることはむずかしい。