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2011-11-01から1ヶ月間の記事一覧

電力供給は不確実になる。適応と多重化を。

東日本大震災前、日本は電力の質を誇っていた。簡単に言えば、電気がほしいときにいつでも得られること、つまりavailabilityである(日本語にしにくいのだが「可用性」というあまり聞かない単語がある)。まず、停電の確率が低いことだが、それに加えて、電圧…

これからはスケールメリットがあるとは限らない

19世紀から20世紀にかけて、多くのものの生産に関して、生産量を多くしたほうが、生産者があげられる利益が多くなり、また消費者もより安い値段で製品を手に入れることができるので、社会にとってもメリットがあると言われることが多かった。しかし、これの…

再生可能エネルギー技術のうち応援すべきなのはシェアを拡大できるもの

再生可能エネルギー技術にはいろいろな芽がある。そのうちどれを積極的に育てるか、選択しなければならないだろう。人間社会の資源消費を持続可能にしていくためには、おおぜいの人が使うエネルギーが再生可能エネルギーになっていくことが必要だ。したがっ…

サービス科学(市民によって評価される科学)

科学のありかたには、同じ分野の専門家どうしの間で評価されるアカデミズム科学、企業や官僚機構の目的のために雇われた人が働く産業化科学のほかに、市民によって評価される科学があるべきではないか。それを中山(1979, 1980)は「サービス科学」と名づけて…

「中山茂、学問を語る -- 科学史と歩んだ60年」より

11月19日、科学史家の中山茂さんの話を聞く会があったので出席した[主催者によるお知らせのページ]。科学史の総論を聞きたいと思った人はがっかりしたと思う。しかし、中山氏は科学史の通史を最近語ったばかりであり(中山, 2011)、その本のことは主催者によ…

地球温暖化問題についての視野を広げる

11月16日に出席した会議[注]の中で、IPCC第3部会の編著者のひとりである杉山大志さんの講演を聞いた。杉山さんはもちろん地球温暖化問題の重要性やIPCCの意義を否定はしないが、「『温暖化を産業革命前+2℃以内にくいとめる必要がある』という主張がIPCCのも…

高速増殖炉をやめないとしても「もんじゅ」をやめるべきだろう

わたしは、核エネルギーの利用を絶対してはいけないとは思っていない。しかし、その具体的な技術体系について、操業中と操業終了後の廃物管理とにわたって安全が確保できるという見通しがあって初めて実用設備の設計にかかれるのだと思う。この観点で、軽水…

定量的地球物理学に寄与した東洋の伝統

確かめられていない科学史的思考の覚え書き。20世紀の後半に、気候モデルをはじめとする地球物理学の数量的方法が発達したことに、日本出身者(おもにアメリカ合衆国で活動したので日系一世というべきかもしれない)が多数活躍したことは、偶然ではないだろう…

TPPを環太平洋地域の食料生産を持続可能にするための連携にしよう

2月5日にTPP貿易協定には自然資本保全条項(ナチュラル・ダンピング関税など)が必須と書いたのだが、ダンピングという用語づかいは、相手国(アメリカ合衆国を想定)に対して必要以上に敵対的だったかもしれない。もっと親切に考えることにしよう。 ===== 日本…

ベトナムには「脱原発」を輸出しよう

日本政府がベトナムに原子力発電所一式を輸出する予定を変えないという報道を聞いて、残念に思った。しかし、ベトナムが原子力発電所をもつ計画を変えず、日本ではなくほかの国から輸入するのならば、改善にならない。日本が輸出する案の最大の問題は、放射…