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2010-01-01から1年間の記事一覧

地球環境政策に役立つ古気候研究を考える

(古気候モデリングの会議の印象の記事をもとに、今後どんな研究を推進したらよいかの提案づくりに貢献するためのたたき台的な覚え書きに書きかえている。さらに改訂するつもり。)人間社会は完新世の限られた幅の気候に適応してきた。とくに人口のふえてしま…

古気候モデリングの会議の印象

[英語版と基本的に同じ内容だが、どちらもまだ改訂するつもりである。]先週(6日から10日まで)京都で古気候モデリングに関する研究集会があった。わたしは7日から10日までの会に出席した。わたしは以前には古気候モデリングを展望したり推進しようとしたりし…

Impressions of a meeting on paleoclimate modeling

[This note is still to be revised. I have also written in Japanese.]A scientific meeting on paleoclimate modeling was held in Kyoto last week (from Monday 6th to Friday 10th December). I attended the sessions from Tuesday to Friday.I used …

3×5 = 5×3、しかしベクトルではB×A = -A×B。

おおくぼさんの「雑感:小学校の算数」で知ったのだが、dankogaiさんの「3x5=5x3」をはじめとしてあちこちで議論になっている。小学校の算数で さらが 5まい あります。 1さらに りんごが 3こずつ のっています。 りんごは ぜんぶで 何こ あるでしょう。 とい…

Re-defining Climategate (Plan B)

Climategate is an issue to urge communication about climate. Conversation among climate experts has been disjoint from conversation among outsiders. It seems that the gate between the experts and the outsiders has seldom been used. We need…

Re-defining Climategate (Plan A)

Climategate is none other than the Watergate affair born again. It is something like eavesdropping conspired by an eccentric faction of supporters of the U.S. Republican Party in order to make their favorite candidate(s) win the coming ele…

Workshop on solar activity and climate change (Nagoya, 15 Nov. 2010): A personal summary

This is an English version of my posting here on 2010-11-18. The contents are not exactly the same.I participated in a workshop on solar activity and climate change held in Nagoya University on 15 Nov. 2010. Its official announcement is he…

「太陽活動と気候変動の関係」に関する名古屋ワークショップ(出席後の覚え書き)

10月9日の記事で予告した「太陽活動と気候変動に関する名古屋ワークショップ」という会合に出席した(講演者ではないが質問などはした)。印象が薄れないうちに覚え書きを残しておく。ただし、会合全体のまとめを意図したものではなく、わたしの印象に残った限…

CRU電子メール暴露事件(いわゆるClimategate) 1周年

昨年11月に、イギリスのイーストアングリア大学のClimatic Research Unit (CRU)の研究者の電子メールが暴露されてから1年がたった。事件の日付をひとつにしぼることはむずかしいが、11月17日にRealClimateというブログに不正な形でアップロードされたのがた…

0次元エネルギー収支モデルは気候システムのよい近似になっていないところがある

前回に続き今度も、へたをすると、気候システムに関する科学の基礎があやふやだと思われかねない問題だ。しかし、これは単に、現実が単純なモデルほどは単純でないということなのだと思う。気候システムのいちばん単純な数値モデルは、全球0次元エネルギー収…

地球環境論のためにほしい熱力学、放射(電磁波)に伴うエントロピーの流れは4/3がかかるのか

[この記事はわたしの疑問を他のかたに説明できるところまで整理するために書いた。その目的に対してまだ不満なので、今後も改訂すると思う。必ずしも改訂履歴を残さないことをおことわりしておく。]環境問題・資源問題の基本には熱力学第2法則がある。わたし…

地球温暖化に関する講演(11月4日、秋田県本荘で)

11月3日の秋田での講演(11月1日の記事で述べた)に続き、11月4日には秋田県立大学本荘キャンパスで金澤伸浩准教授の「環境システム工学」の一環として、地球温暖化に関する講義をした。重点は前日の講演とは違い、温暖化という自然科学的現象の理解について、…

講演「地球温暖化を見渡す」(11月3日、秋田で)

11月3日、「大学コンソーシアムあきた」からの依頼で、秋田市(カレッジプラザ)で地球温暖化に関する話をすることになりました。http://www.consortium-akita.jp/info/detail.html?no=638 に予告が出ています。この記事ページは、講演の補足と、講演に関連し…

太陽が出す可視光のエネルギーは黒点が少ない時期のほうが多いのか?

菊池誠さんのブログ「Kikulog」の「地球温暖化懐疑論批判(2)」の記事 http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1270268042 へのコメント(現在1047番)として10月10日に書いたことの後半のくりかえしになりますが、ここにも書いておき…

太陽活動の気候への影響についてのわたしの考え

このブログでは、科学と政策の関係とか、科学者はどういう価値観で仕事をするかとかいう話題を多く書いてきたが、科学の中身に立ち入って考えたことを書くことが少なかった。今後はそういうものも混ぜていくことにする。ただし、多くの科学者が正しいと思っ…

「太陽活動と気候変動の関係」に関する名古屋ワークショップ

「太陽活動と気候変動の関係」に関する名古屋ワークショップが、名古屋大学太陽地球環境研究所、名古屋大学地球生命圏研究機構、名古屋大学グローバル COEプログラム「地球学から基礎・臨床環境学への展開」の主催で、2010年11月15日(月)、名古屋大学で開か…

領土問題は存在する。存在しないとよいのだが。

外務大臣が「尖閣諸島に関しては領土問題は存在しない」と言ったそうだ。かつてのソ連や現在のロシアの外務大臣などが「クナシリ・エトロフに関しては領土問題は存在しない」と言ったのと同じ理屈にちがいない。わたしから見ると、複数の国の領土に関する公…

知的公共財の費用をどうまかなうか? (とくに地球観測データについて)

知識・情報は、だれかに提供してももとの持ち主のもとからなくなるわけではない。したがって、だれでも使える公共財とするのが自然であり、特定の人の財産にするためには人工的な制度によって制限をつける必要がある。とくに、地球観測データは、もとの情報…

来年度科学技術予算の優先度について、わたしの意見

9月7日の記事で書いたように、9月17日まで、科学技術関係施策の優先度判定のための国民の意見の募集があった。国民ならばだれでも意見が言えるわけなので、たくさん集まったと思う。しかるべき人が目を通す時間がとれるのだろうか。件数だけが問題になるとい…

ある反省

バスに乗り遅れて、タクシーを使ってしまった。化石燃料消費をふやしてしまい、もったいないことをした。地域経済にはいくらか貢献できたかもしれない。しかし、地域の産業構造の化石燃料依存性を高める向きに貢献してしまったかもしれない。

来年度科学技術予算の優先度についてコメント募集中

総合科学技術会議では、概算要求されている主な科学技術関係施策について優先度判定等を実施するため、国民の意見を募集している。期限は9月17日(金)正午。説明は次のウェブページにある。https://form.cao.go.jp/cstp/opinion-0015.html

IAC (InterAcademy Council)によるIPCCのレビュー: わたしの理解

IPCC (気候変動に関する政府間パネル) の仕事のしかたを見なおすInterAcademy Councilによるレビューの報告については、8月31日の記事(9月1日追記)で紹介した。これについて、わたしは次のように理解している。(少ない情報にもとづいて推測をまじえて述べた…

IAC (InterAcademy Council)によるIPCCのレビュー: 報告書が出た

[8月31日、とりあえず情報のみ。]IPCC (気候変動に関する政府間パネル) の仕事のしかたを見なおすInterAcademy Councilによるレビュー(このブログでは3月11日、5月5日の記事で紹介した)の報告が、8月30日に出た。そのウェブサイト http://reviewipcc.interac…

科学者は政策決定にどのようにかかわるべきか?

昨日(2010-08-17)書いた記事に至る途中の段階のメモである。昨日の記事では論点をなるべく一般的にした反面でわかりにくくなったかもしれないので、こちらも出しておく。 - IPCCは、政策決定に有用(policy-relevant)であって、政策決定をしばるものではない(…

科学者が社会に発言する立場をしわけてみる

科学者が、専門にも関係があるが政策決定にもかかわりのあるような話題について発言するとき、またその発言を聞くときには、どのような立場で発言しているのかを区別する必要がある。なん種類を区別するのがよいかはわからないが、ここでは仮に3とおりに分け…

人気変(?) -- 人為起源気候変化

英語圏のブログで、ある気候研究者が、global warming (地球温暖化)という表現はよくないと言っていた。その人はclimate change (気候変化)と言うべきだという。もっと正確にはanthropogenic climate change (人為起源の気候変化)だ。この主張には賛同したい…

アダム・スミス以後の経済学はジェームズ・ワット以後の経済学

地球温暖化を別としても、人間社会は化石燃料の消費を拡大しつづけることができないことは明らかだ。いわゆる「低炭素社会」(この表現はわたしが使いたいものではないが)あるいはecological footprintの小さい社会に移行しなければならないはずだ。しかし、…

高速道路料金の件はこう考えるべきだと思う

お盆前の帰省で高速道路が混雑していることがテレビのニュースで報道されていた。料金が値下げされた結果、渋滞がひどくなったところがあるという話があった。(おそらく場所によっては実際にそうであり、場所によってはそうでなかったのだと思うが、因果関係…

立秋をすぎると、どういう意味で秋になるのか

今年は8月7日が立秋だった。立秋を含む二十四節気は、天球上の太陽の方向(地動説によれば地球の公転軌道上の位置というべきだが)の角度で定義されたものだ。立秋は夏至と秋分のちょうど中間となる角度にあたる。夏至や秋分の特徴は、多くの人は昼と夜の(時間…

世界の地上気温データ整備の動き

http://www.surfacetemperatures.org は、イギリス気象庁(Met Office)からWMO (世界気象機関)への提案によって始められようとしている、世界の地上気温のデータセットを作る国際共同事業のウェブサイトである。まず「白書」(whitepapers)と呼ばれる文書が準…