[8月31日、とりあえず情報のみ。]
IPCC (気候変動に関する政府間パネル) の仕事のしかたを見なおすInterAcademy Councilによるレビュー(このブログでは3月11日、5月5日の記事で紹介した)の報告が、8月30日に出た。そのウェブサイト http://reviewipcc.interacademycouncil.net に、報告書のPDFファイルがある。まだ最終版ではないそうだが、残っているのは文章上の細かい修正だけらしい。
[ここから9月1日補足]
勧告(recommendation)として書かれた点の大筋を紹介する。(*)印をつけたものは要旨(executive summary)にも勧告として書かれた点。翻訳ではなくわたしの再表現であり、わたしの理解が正確でないかもしれないのでご注意。
- 組織運営について
- (*) 事務局長(executive director)をおく。
- (*) 執行委員会(executive committee)をおき、総会の開かれない間の意思決定を行なう。
- 議長などの役員、報告書の著者、報告書の視野を決めるscoping会議の出席者をそれぞれ選ぶ際の評価基準を明確にする。
- 議長、作業部会共同議長、事務局長は、1つの評価報告書作成にかかわる期間を任期として交代するようにする。
- 役員,著者、報告書にかかわる技術スタッフのそれぞれの利害相反に関するIPCCのポリシーを明確にする。(現実の利害相反と潜在的な利害相反を区別して対処する。)
- 報告書の作成過程について
- 著者は科学者たちの観点の広がりを明示的に記述する。
- 未出版あるいは査読なしで出版されている文献の扱いの手続きをもっと明確にする。
- (*) Review Editorが、査読コメントについて著者が適切に対応したか、また専門家の見解が一致しない点が報告書に適切に反映されたかを確かめる。
- (*) 査読コメントに対応する効果的な手続きを決める。Review Editorが重要なコメントの要点をまとめた資料を作り、著者はそれに詳しく答え,その他のコメントには簡単に答える。編集作業上の問題点に対するコメントにはいちいち答えなくてよい。(IPCCはすべての査読コメントに著者が文書で応答する約束になっているが、コメント数が多くなって応答困難になっていた。勧告はアメリカ合衆国のNational Research Councilのやりかたを参考にしている。)
- 地域別の章の著者には地域内の専門家のほか地域外にいる専門家にも参加してもらう。
- 不確かさの表現について
- (*) どの部会も原則として,定性的な理解の度合いの尺度(第4次で第3部会がおもに採用した方式)を使う。定量的確率の尺度はじゅうぶんな証拠がある場合に限って使う。
- (*) 定量的確率の尺度を使う場合、著者は確率がどのように得られたか明示する。
- 定量的確率の尺度を使う場合は、「可能性が高い」(likely)などの表現だけに頼らず、確率の数値の形で示す。
- 「確信度」(level of confidence)を主観的確率のようなものとして使うことは避ける。
- 主観的確率が必要な場合はきちんとした手順の専門家聞き取り調査などによる。
- 政府による承認に至る手続きについて
- 政策決定者向け要約(SPM)の承認に至る手続きは、総会よりも前に政府代表のコメントを文書でもらうように手順を変更する。
- コミュニケーションについて
- (*) IPCCは明確なコミュニケーション戦略をもつようにする。それには、だれがどのようにIPCCを代表して発言するかの指針を含む。