macroscope

( はてなダイアリーから移動しました)

頭文字略語、SST

専門的な内容の文章には略語が出てくることが多い。専門的概念を表わす語は長くなることが多く、その語をたびたび使いたい場合に毎回正確な表現をすると、くどくなってしまい、決められた字数の枠に書ける情報が少なくなってしまうのだ。

日本語では、専門用語は漢語から構成されることが多く、略語は、主要要素から漢字をひとつずつ取り出して作られることが多い。気象関係でも、「熱帯低気圧」を「熱低」と略すなどの例がある。【[2021-02-10 補足] 本論からそれてこの例についての話だが、「heat low」はこの「熱低」とは別ものである。】

英語では、複数の単語からなる複合語について、各単語の最初の文字(アルファベット)をつないだ頭文字略語(acronym)が作られることが多い。組織名や研究プロジェクト名などの固有名詞的な頭文字略語が意識的に作られることもある。学術的概念などを表わす普通名詞的な頭文字略語もある。ひとつの文献限りの臨時の略語が定義されて使われることもあるが、それをまねする人が出てきて専門家集団で通用する語になることもある。

日本語の文章の中にも英語の頭文字略語が混じることもある。とくに、専門の新知識を英語の論文から得ることが多い人どうしの会話では、日本語に適切な表現がある場合でさえ、英語での表現が混じることが多い。

1980年代以後、もう少し正確に言うと1982-83年の強いエルニーニョ事象以後に、気候に関心のある気象学者の間で「SST」と言ったら、それは海面水温 (sea surface temperature)のことだ。

しかし1970年代にはそうではなかった。SSTと言えば超音速旅客機(super-sonic transport)をさしていた。成層圏を飛行機が飛ぶとその排ガスに含まれた成分がオゾンを破壊する可能性が指摘され、評価(アセスメント)が行なわれたのだ。