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頭文字略語、MJO、ENSO、NAO、AO、PDO、AMO

気候に関心のある気象学者・海洋学者が使う英語頭文字略語は O で終わるものが多いようだ。そのうち固有名詞的なものの O は、「組織」や「機関」を意味するorganizationであることが多い。他方、概念を表わす略語の O は oscillation (振動)であることが多い。

振動というと、ふりこのように明確な周期をもつものを考える人が多いだろう。気象学・海洋学のうちでも一定の境界の中にある流体の固有振動のような場合はそのような振動もあることはあるが、気候の話題ではそれは少ない。現象がくりかえす周期を「数十日」とか「数年」という程度の大まかな周期帯で示すことはできるが、その内に明確な周期があるわけではない。したがって、ふりこの場合のように、つりあいの位置からの変位に比例する復元力が常に働いているような状況だとは考えにくく、いくつもの因果関係が連鎖して当初とほぼ同じ状態に帰ってくるような状況だと考えられる。

また、下に述べる NAO や AO などの場合は周期性は必ずしも考えられておらず、対象領域に二つの中心となる場所があって一方で(たとえば気圧が)平常よりも高ければ他方では低いというシーソー型の変化があることを「振動」と言っているようだ。

具体的に O で終わる略語をいくつか思い出したが、残念ながらそれぞれについてきちんと説明しようとすると、わたしも勉強しなおさなければならず、いつになったらできあがるかわからなくなる。ひとまず、ごく大まかに列挙しておく。

  • MJO : Madden-Julian Oscillation (マデン・ジュリアン振動) 熱帯大気、数十日周期。MaddenとJulianは人(研究者)の名まえ。
  • ENSO : El Niño (and) Southern Oscillation (エルニーニョ・南方振動) 熱帯太平洋海洋・大気、数年周期。
  • NAO : North Atlantic Oscillation (北大西洋振動) 北大西洋中高緯度の大気の主に冬の年々変動。
  • AO : Arctic Oscillation (北極振動) 北半球中高緯度の大気の主に冬の年々変動。NAOと同じ現象の別のとらえかたであることが多い。
  • PDO : Pacific Decadal Oscillation (太平洋十年規模振動) 太平洋(熱帯と中高緯度を含む)の海洋(・大気)。数十年周期。
  • AMO : Atlantic Multidecadal Oscillation (大西洋数十年規模振動) 大西洋(熱帯と中高緯度を含む)の海洋(・大気)。数十年周期。