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地学の高校用図集について (数研、第一、浜島の新旧課程版の構成の比較)

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたか、かならずしも しめしません。】

[高校地学用図集の構成]
↑ 対照表をふくむページへのリンク

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わたしは、大学教員として、自然科学のうちの地学の授業を担当することがある。その科目は、教職課程専用ではないのだが、中学・高校の理科の教員をめざす人の理科の教科の科目ともされている。それで、わたしは地学の授業の内容を、高校の地学の範囲を意識して決めている。その授業では、いろいろな図や画像を見せる必要がある。わたしの研究のうえでの専門の外にあたる題材もあり、図を引用するのに適切な文献をさがすのは簡単でない。高校教育でも同様なので、高校の地学の授業のために、教科書とは別に、図集の本が出版されている。地学を開講する多くの学校で、履修する生徒に図集を買わせて、教員がそれを参照して授業しているだろう。

わたしは、大学のわたしの授業の「教科書」として高校用図集を指定してつかうことにした。大学の教材としてみると、高校用図集には不満な点がある。大学教員として、わたしは、図を引用するときはその根拠にさかのぼれるようにしておくべきだと思い、学生にもそのように指導している。ところが高校用図集は、図にかかれた情報の根拠となる文献などをしめしていないことが多い。研究機関名や著者名が書かれていることはあるが、それだけでは文献にさかのぼるのはむずかしい。この点は残念ではあるが、高校用図集よりもこの目的に適した本はみあたらない。

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わたしの知るかぎりで、ちかごろ出版されている高校地学用の図集は、第一学習社 (広島) の『地学図説』、浜島書店 (名古屋) の『地学図表』、数研出版 (京都・東京) の 『地学図録』だ。3社いずれのものも、寸法が横はA4なみ、縦はB5なみ、横書きのペーパーバックで、内容は全ページ色刷り、だいたい見開き2ページでひとつの主題 (例外はある) という、同様な体裁になっている。内容を個別にみると、ひとつの社の本の特徴といえるところもあるが、概括的にみると、内容では差がつかない。

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現在の高校学習指導要領は、2018年3月に告示され、2022年4月から実施されている。便宜上、それにしたがったものを「新課程」、ひとつまえの学習指導要領にしたがったものを「旧課程」とよぶことにする。理科の学習指導要領は、ここでいう「旧課程」がはじまったとき、そのまえからおおきく変更され、地学に関する科目は、初級の「地学基礎」と、そのうえにつみあげられる「地学」の2つになった。(物理、化学、生物も同様に2つずつになった。) まぎらわしくてこまるのだが、ここでは、かぎかっこなしで 地学 と書いたときは、「地学基礎」と「地学」の2つの科目にわたる内容をさすことにする。ここでいう「旧課程」から「新課程」へは、理科の科目の構成はかわらず、内容の変化も小規模である。(同じ時期に「地理歴史」という教科の科目が破壊的に変化したのと対照的である。)
[地学基礎、地学 -- 高等学校 学習指導要領 (2018年3月告示) からの抜き書き]
[ 2018-03-03 高校学習指導要領案 大気水圏科学について (3) 地学基礎の現行との対比 ] (ブログ記事でいう「現行」がここでいう「旧課程」、「案」が「新課程」にあたる。)

どの社の図集も、「地学基礎」と「地学」にわけた構成にせず両科目にまたがって編集されている。細かい項目ごとに「地学基礎」の科目に出てくる内容ならば「基礎」あるいは「基」の注記をつけている。

指導要領の改訂にともなって、浜島第一 では 2022年度開始にまにあうように、数研 では 2023年度開始にまにあうように、新課程用の図集が出版された。

第一 では2022年度用に旧課程用の図集の小改訂版も出している。2022年度用の図集の新旧課程用を見くらべたところ、内容の変化は見あたらず、内容を配列する順序だけがちがっていた (それにともなって章・節の番号もかわるが)。[第一学習社 『図説』 の新旧対照表]。新課程の「地学基礎」の学習指導要領に出てくる順序にあわせたらしい。

浜島 については、わたしは同じ年度に発行されたものを比較していないのでくわしいことが言えないが、新課程用の2023年度用の「二訂版」では旧課程用と配列がかわっており、同様に、新課程の「地学基礎」の学習指導要領に出てくる順序にあわせたらしい。

数研 の新課程用の配列は、第一浜島の新課程用とはちがう。上級の「地学」の学習指導要領に出てくる順序にあわせたのかもしれない。数研の旧課程用で宇宙の話題が最初と最後にわかれていたのが最後にまとめられ、わたしにとってはわかりやすくなった。

3社の新旧の題材の配列の概略を、このページのあたまのリンクさきの表にまとめた。

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このような対照表をつくったのは、わたしの授業でどの図集を参照するか考えるためと、他の版の図集をもっている学生にも可能なかぎり対応しようとしたためだった。

わたしの授業は、高校の教科書を併用するわけではない。見たい材料が図集のどこにあるか見当をつけるために、わたしにとっては、題材が 学問的分類 または あつかわれる対象 によって分類されているのがのぞましく、(わたしからみて) 似た対象が本のなかで大きくはなれたところにあるのはのぞましくない。第一浜島課程用は、地球内部をあつかう地質学がはじめのほうとおわりのほうにわかれ、途中に大気・海洋と宇宙がはいっている。数研課程用は、宇宙が最初と最後にわかれている。このようなものはつかいにくい。

授業中だけでなく他の時間にも図集を参照してもらいたいので、わたしの授業では、図集のどこにある図かをまぎれなく記述しておきたい。大学の授業の受講生は、前の年度に図集を買った学生や、高校のときから図集を持っている学生もいるだろう。同じ会社の図集でも、改訂のときページがずれることがある。どの版のどの章・節であることを明示したうえで、いつもできるわけではないが、可能な場合は過去の版ではどこをみればよいかも示したい。浜島 の本は、章の番号はあるがその下の節の番号がついておらず、そのうえ、(指導要領の改訂によるものではない) こまかい改訂によっても同じ材料がのるページ番号がかわることがたびたびあるので、つかいにくい。

このような考えでえらんだので、わたしの選択は、2021年度は浜島、2022・2023年度は第一課程用、2024年度は数研課程用となった。