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気候変動適応研究にどう取り組むか

(今、わたしは、この研究に直接取り組む立場ではなく、研究を推進する(予算をつける)立場を想定して(しかし実際に予算をつける権限は持たずに)考えている。)

(すでにどこかに書いていることのくりかえしが多くなってしまうが....)

地球温暖化については、軽減策(いわゆる緩和策)と適応策の両面の対策が必要だ。

しかし、適応策は、「地球温暖化への適応」と考えないほうがよい。人間社会が適応する必要のある相手は、自然変動やローカルな人為的な原因による変動も含めた、変動する気候なのだ。ただし、その変動のうちに、温室効果の強化に伴う、ある方向に偏った変化も含まれること、考えておくべきなのだ。

未来の気候は、いくら技術が発達しても、完全に予測できるものではない。温室効果の強化に伴う変化に限っても、全球平均の変化についてはある程度自信を持って言えるけれども、地域を細かくするにしたがって不確かさが増す。

不確かさの中で、農林水産業をはじめとする人間活動について意思決定するには、ありうる気候変動のいろいろなシナリオを考えて、それぞれのシナリオのもとでは人間活動にどういう影響が出るかの予測型シミュレーションをしておくことが役にたつだろう。できれば、それぞれのシナリオがどの程度に起こりそうか、(厳密な意味での確率は無理だと思うが)確率のような重みが添えられるとよい。ただし、シナリオを考えたりシミュレーションをしたりする活動にもコストがかかる。(少なくともものを考えられる人が働く時間が必要だし、計算機も必要だ。現地のデータを集めようとすれば観測機器が必要になったり、現地の人に働いてもらう必要が生じたりする。) 備えをしっかりしたいからといって、シナリオをむやみにふやすのは現実的でない。社会が研究に投入できる資源を意識しながら、シナリオの個数や複雑さを選択していくべきなのだろう。