可降水量 (precipitable water)とは、雨や雪となって降ることができる水蒸気の量、ではない。
ある瞬間に大気中に存在する水蒸気量を、鉛直方向には地表面から(理屈のうえでは)ここより上には空気がないと言える「大気上端」まで積算したものだ。水平方向にはローカルにたとえば数十キロメートルくらいの空間スケールを代表する値を考えることが多いが、ときには全地球平均を考えることもある。
本来は、単位面積あたりの質量(SI単位はkg/m2)としてとらえたほうがよい。しかし、降水量の場合と同様に、液体の水の標準の密度を仮定して、「単位面積あたりの体積」つまり「高さ」(鉛直方向の長さ)で表わすことができる。単位時間あたりの流れの量ではない。降水量とは物理量の次元が違うというべきだろう。
全球平均の「可降水量」は約25 mmである。
わたしは自分ではこの用語を使わないことにしている。感覚的に「実際に降ることができる量」を想像してしまうからだ。「全球平均の鉛直積算した水蒸気量は約25 kg/m2である」のように言うことにしている。