2011-01-01から1年間の記事一覧
[わたしはブログ記事を公開後に修正することがある。大きな修正をしたときにはその日付を示すことにしているが、細かい修正では必ずしも明示していない。あらかじめおことわりしておく。]わたしのよく行く本屋には、目立つところに原発事故関係の本のコーナ…
環境問題は、経済学の用語でいう「外部不経済」を含む。生産活動に伴って他の人に損害(外部費用)が生じるのを避けるためには、その費用を生産者に負担させる必要がある。費用負担のしくみを作るところは市場経済だけではできず、政治による市場への介入が必…
新内閣の顔ぶれが報道される際に、「原発事故担当大臣が環境大臣を兼任する」という表現があった。両方の役割を同じ人が兼ねることになったのは事実だ。また、菅内閣での構想どおり原子力安全庁が環境省のもとにつくられるのであれば、内閣で原子力安全庁を…
「御用学者」ということばがはやっている。狭い意味では、権力者の利害にそった主張に科学的根拠があるかのようによそおうために、うそをつく学者のことをいうらしい。そういう御用学者は、もちろんいないほうがよい。しかし、広い意味でいうならば、いまど…
昨日(8月31日) 22時からのNHKテレビ「歴史秘話ヒストリア」は、地震を主題とした話だった。NHKがすでに放送した番組のために取材したものを、関東大震災の記念日を前に構成しなおしたものらしいが、防災を考えるうえで意義のある企画だったと思う。ただし、…
[7月30日の記事]の補足。「『エコ』とは environment conscious だ」という考えを次の文献(177ページ)で見た。どうやらわたしの頭にあったのはこれを読んだ記憶だったらしい。 水谷 広, 1999: 人間活動と物質循環系のグローバルな変化。水・物質循環系の変化…
「種(しゅ)とニッチの共進化」という語句をどこかで聞いた(あるいは読んだ)と思うのだが、どこだったか思い出せない。あるいは、別の形で述べられていたのをわたしが表現しなおしてしまったのかもしれない。わたしは生物の進化に関心はあるのだが、それに関…
石油に続いて天然ガスも産出量ピークを迎えるのではないかと考えられてきたが、ガスのほうは最近になって産出量がふえる見通しが出てきた。それはおもにシェールガス(shale gas)の開発が可能になったからだ。シェールというのは頁岩(けつがん)という岩石だが…
内閣府にある原子力安全委員会、経済産業省にある原子力安全保安院、文部科学省にある原子力安全関係(放射能モニタリングなど)の部門を合わせて「原子力安全庁」とし環境省の下に置くという構想が示された。制度いじりだけでは意味がなく、むしろ変えないほ…
「これはペンです」という題名の小説が話題になっているが、わたしはそれを読んでいないし、これから読む予定もない。ここに書くのはその小説とは関係なく、「これはペンです」という文について思い出したことだ。1970年に中学生になったわたしは「This is a…
内閣府の「科学技術政策トップ > 科学技術基本計画 > 第4期科学技術基本計画」 のウェブページhttp://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/kihon4.html によれば、 【平成23年8月19日】第4期科学技術基本計画(PDF)が閣議決定されました。 とあり、http://ww…
地球環境問題は気候変化だけではなく、気候変化は温室効果の強化による温暖化だけではない。しかし、現代の人間社会は気候変化に対して弱いので、温暖化をなるべく小さく食い止めるべきだ。その対策の本筋は、化石燃料の消費を減らすことだ。これは、現代の…
IPCC (気候変動に関する政府間パネル http://www.ipcc.ch )の将来についてのわたしの考えは、[2010年3月5日の記事]に書いたのと基本的に変わらないが、関連する世の中の動きに応じた改訂をして述べる。現代の人類社会は、気候変化への対策、生物多様性・生態…
[6月23日の記事]に書いたことだが、要点だけくりかえしておく。再生可能エネルギーの取得を奨励するため、再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が買い取る制度を、国の政策として進めることには、賛成する。ただし、発電された電力を電力会社が即時に…
前に[ある本の読書ノート]の一部として書いたことと重なるが、関連するニュースを見たので、もう少しふくらませて書く。日本列島の北西側、ユーラシア大陸との間にある海は、日本語では「日本海」、英語では「Sea of Japan」と呼ばれている。こう呼ぶからと…
こちらは本来の意味のヒマラヤの氷河に関する研究のニュースです。名古屋大学の藤田耕史さんと縫村崇行さんによる論文が、アメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)に出ました。印刷版が出る前のオンライン公開です。[2012-12-29改訂: 正式版への参照に変えておきま…
IPCC第4次報告書(2007年)の第2部会の巻には「ヒマラヤを含むアジア高地の氷河のとけ水に頼る人口がなん億人もいる」という趣旨の記述があるが、これはまちがっている。出典となる文献の知見に忠実に述べれば、「氷河のとけ水」を「積雪および氷河のとけ水」…
これは明らかに政治的な主張である。科学者という職種からの発言ではない。もちろん勤務先とは関係ない個人としての発言である。わたしは「8月は戦争を思い起こす季節」という第2次大戦後日本の文化現象の中で踊らされているにちがいない。ただしわたしはこ…
「イノベーション」ということばが題名にはいった本をさがすと、その大部分は企業の経営者か技術開発担当者向けのようだ。Schumpeterのいう「企業家」となって「新結合」を実行するにはどうしたらよいか、という話なのだろう。国の政策としてのイノベーショ…
わたしは、人間社会を持続可能なものにしていくために、ある種の政策が必要だと思っている。それは科学技術イノベーション政策と言ってもよさそうだが、今どきの科学技術政策家が科学技術イノベーション政策と言うとき想定されているものとは、ずれているよ…
現代の人間社会は科学技術を必要としている。【科学と技術は本来別々なものであり、おそらく19世紀なかばまでの人には「科学技術」という表現は意味をなさなかったと思うが、今の同時代人の間では大筋で共有可能な意味をもっていると思う。】 人間社会を持続…
震災後の今こそ、長期的視野で国の政策の基本を見なおす機会だと思う。何かの量の成長率が正の一定の値をとることが続くということは、何かの量が時間とともに指数関数的に大きくなっていくことになる。人間社会は物理的に有限の地球環境の中にあるので(宇宙…
7月29日の総合科学技術会議(CSTP)の本会議で、「答申『科学技術に関する基本政策について』に関する意見具申」が決まったそうだ。第98回会議の議事次第http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu98/haihu-si98.html の「資料1−2 答申「科学技術に関する基本…
「エコなになに」という形の表現を、1970年代に聞いたような記憶があるのだが定かでない。ただし、あったとすれば、それは「エコノミー」の略だった。「エコノミー」とは、「経済的」と言ってもよいのだが、経済学とはあまり関係がなくて、前からあった日本…
(疑問にぶつかったのでそれを表題にしたが、明確な答えがあるわけではない。)科学技術(ここでは仮に「科学」で代表させる)研究のうちには、科学者が自発的に研究を進め、それが結果として社会の役にたつものもある。税金に由来する公的資金の一部を、そうい…
5月4日の「本屋さんの棚」の記事の続きで書こうと思ったが保留していたことを、その後の観察で修正して書く。わたしにとって重要な本屋さんは理科系の本が置いてあるところだ。軽い読み物だけではなく、専門書というほどではないが、大学の理科系各分野の教…
日本政府の科学技術研究への目的は「日本の産業の国際競争力向上」だとする議論を聞く。それが複数の同等な目的のひとつならばわたしも賛同できる。しかし、圧倒的に重要な目的のように言われると、わたしには納得できない。政府の第一の存在意義は、明らか…
まえおきわたしが給料をもらっている組織の仕事も、このブログ記事も、日本の科学技術研究に関する提案ではあるのだが、その質はだいぶ違っている。専門組織の成果物として出す提案は、そのブランドをけがさない質のものでなければならず、そのためには、材…
南シナ海の島々のうちでもとくにスプラトリー(Spratly, 南沙[Nansha], Truong Sa [長沙], Karayaan)諸島は、複数の国が領有権を主張しているだけでなく、複数の国がそれぞれ一部の島を実効支配していて、とても複雑な状況にある。とくに今年になって中国と他…
IPCC (気候変動に関する政府間パネル)は、政策決定者のために科学的知見を整理して提供するが、政策をしばることはしない、という位置づけで作られた。このようなしくみによって、科学者が、科学者としての規範を曲げずに活動しながら、政治に影響を与える道…