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2011-01-01から1年間の記事一覧

IPCC業務改善のゆっくりした動き

IPCC (気候変動に関する政府間パネル http://www.ipcc.ch )の再生可能エネルギーに関する特別報告書が出た([別ブログの記事]でふれた)のを機会に、それを認めた5月10-13日のIPCC総会のほかの議事について少し見てみた。ただし、調査したというほどではないし…

気象学会について思うこと(2)気象庁との関係、地球惑星科学連合との関係

(1)の記事の続き。日本気象学会は、事務局を気象庁の建物の一室に置いている。この事実から、気象学会が気象庁に事実上従属した組織であると見る人もいるようだが、学会員の感覚としては、それほどではない。つまり学会から見て気象庁は明らかに他者だ。ただ…

気象学会について思うこと(1)放射能輸送シミュレーションの件

7月14日、日本学術会議(http://www.scj.go.jp )のシミュレーションに関するシンポジウムに出席した。話題はたくさんあって論じきれない。その中で、福島原発事故に関連した気象シミュレーション情報提供について、日本気象学会( http://wwwsoc.nii.ac.jp/msj…

気候改変技術(いわゆるジオエンジニアリング)についての暫定的問題整理

IPCCの3つの部会にまたがる「geoengineering」に関する会合が、2011年6月20日から22日までペルーのリマで開かれた。日本からは杉山昌広さん(「気候工学入門」 [読書メモ]の著者)が出席した。28日にその報告会があった。この専門家会合は、2013-14年に出版予…

再生可能エネルギー資源についての覚え書き (4) 風力についての初歩的な考察

日本の再生可能エネルギー資源開発は、このところ太陽光に集中しているようだが、面積あたりのエネルギー賦存量から考えて、風力にももっと力を入れる必要があると思う。気象学を勉強してきた者でも、風力の見積もりはむずかしい。気象学のうちで比較的重視…

再生可能エネルギー全量固定価格買い取りは暫定特別措置に限って賛成

(個人としての意見。ただし自然界のエネルギーについていくらかの知識がある者として。)日本が、エネルギー資源を化石燃料と原子力に頼るのを減らすために、再生可能エネルギーの利用を促進しなければならないことは明らかだ。そう思う人の中でも具体的にど…

「低炭素社会づくり対話フォーラム」のシンポジウムを聞いて

2011年6月22日、東京四谷の上智大学で開かれたシンポジウム「対話で拓く低炭素社会」(案内ページは今のところ http://www.sh-forum.net/news.html にある)に出席した。これは、国の科学技術研究事業のひとつである科学技術振興機構(JST)の社会技術研究開発セ…

もうひとつの多文化コミュニケーション

電車に、ある大学の広告が出ていた。「多文化コミュニケーション学科」という学科が発足するのだそうだ。世界のいろいろな国のいろいろな民族の生活や考えかたを学ぶことになる。そのためには、それぞれの民族の言語や、それを論じている文献が書かれた言語…

乱暴な温暖化対策はまともな温暖化対策をじゃまするかもしれない

地球温暖化に対しては、適応策と、軽減策の両方が必要だと考えられており、わたしもそう思います。「適応策」は、気候が変化することに対する人間社会の損失を小さくしようとするもので、「軽減策」は、気候の変化自体を小さくしようとするものです。ここで…

「環境気象学」授業follow-upのためのページ

東京農工大学でわたしが担当している「環境気象学」2011年度の授業[教材ページ]のためのページです。授業の受講生からのコメントをもらうことを主目的としていますので、それ以外のコメントは勝手ながら消すことがあります(受講生にとっても有益と思われるも…

文明の言語と学術用語

(言語や文字を専門としないわたしの認識を書き出したものである。)世界にはたくさんの言語がある。同じ言語を話す人々が一種の共同体をつくっている。「民族」ということばの定義はあいまいだが、言語共同体のことだと言ってよいこともあると思う。言語の分…

Google依存症の自覚

わたしは昔は、何かわからないことがあると本で調べたものだった。今でも、手近な本に書いてあることがわかっていればそれを見るし、本を買ってしまうこともあるが、百科事典類をひいてみようなどとは思わなくなってしまった。職場の図書室にあまり行かなく…

地球温暖化に農作物をどう適応させるか

地球温暖化は、ある程度は、避けられなくなってきた。ただし、その数量となると、グローバルな予測もむずかしい。まして、各地域のローカルな気候変化の予測は、残念ながら、あまり詳しくはできないのだろう。(感覚的にはわかりにくいことだが、理論から出発…

エネルギー貯留・運搬媒体についてどんな技術開発を望むか

2006年に別ウェブページ「現代文明持続の鍵、エネルギー貯留技術に期待する」に書いたことのくりかえしになることが多いが、もう一度書いてみる。再生可能エネルギー、とくに太陽光と風力は、供給が間欠的で、時刻ごとには需要を満たせないことが多い。時間…

再生可能エネルギー資源についての覚え書き (3) 環境省の報告書

環境省から、次のような再生可能エネルギー資源についての調査報告書が出ている。 平成21年度 再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書http://www.env.go.jp/earth/report/h22-02/index.html 平成22年度 再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報…

再生可能エネルギー資源についての覚え書き (2) 太陽光 ... 直達日射と散乱日射

(1)の記事で「太陽光」としたものは、いわゆる太陽光利用と太陽熱利用の両方を含めたつもりだ。エネルギー変換技術ごとの分類は、次のようにするのがよいと思う。 「太陽光発電」、つまり光電効果によって光を電気エネルギーに変えること。その装置が「太陽…

再生可能エネルギー資源についての覚え書き (1)

人間社会はエネルギー資源を必要とする。原始的人間社会も食べ物の煮たきのための燃料を必要とするが、現代文明はさらに多くの機器の動力や電源を必要とする。その多くを化石燃料と原子力に頼ってきた。化石燃料と原子力は、集中して得られる資源であり、燃…

mobage

電車の中に広告が出ている。「mobage」と書いてある。英語だと思って、「モーベジ」と読んでみたが意味がわからない。Garbage (ガーベジ、ごみ)のなかまのような感じがする。Mob (モブ、暴徒)から派生したことばかと思ってもみたが、もしそうならば「mobbage…

「予知連“巨大地震想定できず反省” 」は誤報

日本地球惑星科学連合という学会の大会が5月22日から27日まで幕張で開かれている。25日の午後には、この学会と日本学術会議の地球惑星科学委員会との共催で「東日本大震災、今、地球惑星科学のありかたを考える」というセッション(大会の部分をさす名前)が開…

マイクロソフトの牢獄にて

IT

わたしが4月から勤めることになったオフィスには、職員ひとりひとりの机にパソコンが備えつけられている。大きなディスプレイが二面あるのはありがたい。しかし、そのOS (オペレーティングシステム)がMicrosoft Windowsだ。そのうちでは慣れているXPであるこ…

GWキャンペーン

家の郵便受けにはいっていた広告のちらしに「GWキャンペーン」と書いてあった。わたしは今どきの日本で「GW」がどういう意味に使われているか思い出す前に、「地球温暖化キャンペーン」を想像してしまった。わたしが読むような英語圏のブログで「GW campaign…

(メモ) この嵐は地球温暖化のせいなのか?

アメリカのたつまき(tornadoes)による災害について「このように激しくなったのは地球温暖化のせいだ」という表現が適切かどうかについて論争がある。わたしはMichael Tobisさんの個人ブログの記事Spinning Tornadoes (4月30日)で知った。ものごとがわかって…

核エネルギー利用: 夢の技術の基礎研究に投資するか?

原子力発電の技術は、ウランおよびプルトニウムの核分裂ばかりが発達してきた。これは、核兵器(原子爆弾)の材料となるプルトニウムを作るために開発された原子炉の技術を民生用に利用(「平和利用」)するという流れによる。しかし、質量がきれいにエネルギー…

資源リサイクル論: ものづくりは「本質循環」へ

2006年に「資源リサイクル論:持続可能性と熱力学的エントロピーを基礎として」というウェブ記事に書いた意見と基本的には変わらないのだが、標語を思いついた。ものづくりの設計で安全をどう考慮するかに関連して、「本質安全」または「本体安全」という表現…

原発震災後、世界の人間社会がせまられる選択

東京電力福島第一原子力発電所の事故はまだおさまっておらず、その影響が世界の人間社会にどのように及ぶのかを言うのはむずかしい。しかし、「環境保全とエネルギー資源確保についてむずかしい決断をせまられる」と言ってよいのではないかと思う。いま化石…

本屋さんの棚

本をさがすことは、わたしが給料をもらっている理由ではないが、わたしの主観としては「本業」だ。これまで1年ほどの間に、わたしの行きつけの本屋さんのうち2軒がそれぞれ移転した。それに伴う変化を見て考えたことのうち、まずひとつ。本をさがす人の欲求…

数量の話をするときは単位を確認しましょう

4月29日の記事で述べた隈本さんの講演の最初にあった話。石原慎太郎東京都知事が、4月11日に再選されたときの記者会見で、自動販売機とパチンコは電気のむだづかいであり節電が必要なときには率先して止めるべきだ、という趣旨のことを述べたことはよく知ら…

「想定外」 -- トランスサイエンス

サイエンスメディアセンターという団体があります。http://www.smc-japan.org/ のウェブサイトは、福島原発事故に関連して複数の専門家の見解を紹介している特徴あるサイトです。しかしこの団体の主要な業務はこのウェブサイトではなく、科学に関する情報を…

「つぶやき」記事について

このブログに「つぶやき」という種類の記事をときどき書きます。わたしは、ブログの記事を書くとき、なるべく多くの読者のかたに意味が通じるように用語の説明をしようと思っています。(それでも、だれでもわかるところまで説明することはなかなかできないの…

メソβスケールの科学技術政策

わたしの今年度の職務は、科学技術政策に関するものだが、マクロ(国家規模)でもミクロ(1研究室規模)でもない。その中間で、そのうちではやや細かめのところだ。ミクロスケールの対流どうしがどのような相互関係にあったら、severe stormが発達するか?