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本屋さんの棚

本をさがすことは、わたしが給料をもらっている理由ではないが、わたしの主観としては「本業」だ。

これまで1年ほどの間に、わたしの行きつけの本屋さんのうち2軒がそれぞれ移転した。それに伴う変化を見て考えたことのうち、まずひとつ。

本をさがす人の欲求として、なるべくたくさんの本を目にしたい(手にとる本は限られるが、その可能性を得るために背表紙だけでもたくさん見たい)ことと、背表紙をながめることや手にとった本に目を通すことを落ち着いた気分でしたいこととがある。

本屋さんの立場になってみると、前者の欲求に対応するためには床面積に対して棚面積を最大にしたほうがよいが、それは後者の欲求にそぐわない。本屋さんの店のふんいきは、どちらを重視するかによって違う。

もっとも両極端の間に中間もある。鉛直には天井まで本棚で埋めるが水平には棚の密度を高くしないこともできるし、反対に背の低い本棚を高密度にならべることもありうる。(背の低いわたしとしては後者のほうがありがたいのだが、通路が狭いのはほかのお客とじゃましあうことになりやすいという欠点もある。) 壁に作りつけの棚だけは背を高くし、それ以外は低くするという配置もある。

移転した本屋さんの一方は、落ち着けない店になってしまったが、それは、売り場面積が減ったが、店頭で見られる本の種類は減らしたくなかったので、本棚の密度を高くしたからにちがいない。他方は、売り場面積が減らなかったのでこの欠点が避けられたのだ。(その店の場合には時間の次元の問題があるのだが、その話は別のときにしたい。)