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「予知連“巨大地震想定できず反省” 」は誤報

日本地球惑星科学連合という学会の大会が5月22日から27日まで幕張で開かれている。

25日の午後には、この学会と日本学術会議の地球惑星科学委員会との共催で「東日本大震災、今、地球惑星科学のありかたを考える」というセッション(大会の部分をさす名前)が開かれた。わたしも会員のひとりとして話を聞いた。

講演者と講演内容の予告は学会ウェブサイトのうちの次のページにある。http://www.jpgu.org/meeting/u_23.html 内容全体を伝えることはとてもできないが、わたしの印象に残ったことは追って別記事として書くつもりである。

さて、翌日(26日)の朝にこのセッションでの島崎邦彦さんの講演にもとづく報道があちこちのメディアに現われた。たとえばNHKのものはhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20110525/t10013113141000.html にある。この記事の内容は、わたしの大まかな判断では、講演(の一部)の趣旨と合っていると思う。しかし、見出しが「予知連“巨大地震想定できず反省” 」となっていたのは非常にまずい。

学会の予告ページでは、島崎さんの肩書は「東京大学名誉教授」となっている。さらに本人が講演の初めで「きょうは大学人として話す」とことわっていた。わたしがそれを覚えていたのは、続けて(ことばは正確でないかもしれないが)「『名誉教授』という称号を自分で使うのは気がひけるが、現役の教授と区別したいので使う」とも言っておられたことが印象に残ったからだったが。

それでも、島崎さんが地震予知連絡会会長であることは事実なので、報道する側の判断で「地震予知連絡会の島崎邦彦会長が講演し...」のような表現をすることはいけないとは言えないだろう。見出しも、たとえば「予知連会長...」ならばよいかもしれない。

しかし、「予知連“巨大地震想定できず反省” 」では、すなおに読む人は、地震予知連絡会という組織として反省するという意思表示をしたと解釈するだろう。たとえ会長が会長であると名のって述べたとしても、その内容がすべて組織の意思であるとは限らないが、そのような場合は組織の意思であると推測して伝えることにも正当性があるかもしれない。しかし、この講演の場合、明示的に「予知連会長として発言するのではない」とは言わなかったものの、その意味を含む発言があったのだから、講演内容を予知連の判断であるかのように伝える見出しは、まちがった報道だと言ってよいと思う。このような見出しをつけた各報道機関には、明示的に訂正してくださることを望む。