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再生可能エネルギー全量固定価格買い取りは暫定特別措置に限って賛成

(個人としての意見。ただし自然界のエネルギーについていくらかの知識がある者として。)

日本が、エネルギー資源を化石燃料原子力に頼るのを減らすために、再生可能エネルギーの利用を促進しなければならないことは明らかだ。そう思う人の中でも具体的にどういう政策をとるべきかについての考えは分かれるのだが、再生可能エネルギーの利用を早く進めるべきだと思う人のうちには、全量固定価格買い取りを早く実施するべきだと考える人が多いようだ。

わたしは、再生可能エネルギーの利用を早く進めるべきだと思っているが、全量固定価格買い取り制度については懐疑論者である。もし、期待どおり、太陽光や風力による電力が多く生産されるようになり、それがどんどん電力網に供給されるようになると、電力網の電圧や周波数の変動が大きくなり、へたをすると突然の停電が起こりうる。これは電力会社の勝手な言い分ではない。日射量や風速の変動は実際大きく、仮に数百キロメートルくらいの空間規模で集めたところでじゅうぶんならされるものではない。いかなスマートグリッド技術が開発されても、供給・需要の完全な予測は不可能なので、まずショックが起きてあと追いで調節されることはたびたびあるだろう。変動の大きすぎる電力は受け入れを断われるようにしておかないと、電力網全体の電力が信頼できないものになってしまう。適切な量の買い取りはよいことだが、全量買い取りを約束してはいけないのだ。

もちろん、せっかく再生可能エネルギーによる電力が作られても使われないのではもったいない。そこで、国も企業も、太陽光や風力で電力が作られるその場でエネルギーをたくわえるしくみの開発に精力をつぎこんでほしい。今ある蓄電池や燃料電池の性能を高め値段を下げる努力とともに、新しい発想によるエネルギー貯蓄技術の開発にも挑んでほしい。それがうまく動けば、昼夜や日々の変動をならして電力生産のほうが多くなるところでは、電力会社から電気を買わなくてすむようになる。そこで電力が余るとしても、電線を維持するのがむずかしいところは、電力網から切り離してしまってよいと思う。電力会社は津津浦浦まで電線を張りめぐらせる公的義務から解放されてまともな民間会社になれる。しかし、電線を維持する費用を上回って電力が余るならば電力網に供給してもらうべきだ。ただし、いつ供給してもらうかのタイミングは電力網側で選べるようにするべきだ。供給するタイミングを調節できるようなエネルギー貯蓄機能をそなえた再生可能エネルギー発電所だけに限って、全量買い取りを約束するのがよいと思う。

ただし、これは、じゅうぶん多くの再生可能エネルギー発電所が電力網につながれた時点での体制についての意見を述べたものだ。残念ながら、今の段階では、エネルギー貯蓄の装置の値段が高すぎて、再生可能エネルギー発電所にそれを義務づけることは現実的とはいえないだろう。そして幸か不幸か、日本の電力のうちで太陽光や風力によるものの割合は急にはあまり大きくなりそうもないので、まさに暫定的な特別措置として、時間的調整を要求しないで全量買い取りを保証したほうがよいのかもしれない。「暫定」の期間の長さはいろいろ考えられるが、5年くらいが適切だろうと思う。したがって、20年もつ太陽光発電装置を導入する人には、そのうち最初の5年間は全量買い取られるが残りの15年はどういう条件になるか未定である、という条件で決断してもらうことになる。歯切れの悪い政策だが、政策が目的を果たすと同時に破綻するよりはましだ。