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南蛮海・東夷海

南シナ海の島々のうちでもとくにスプラトリー(Spratly, 南沙[Nansha], Truong Sa [長沙], Karayaan)諸島は、複数の国が領有権を主張しているだけでなく、複数の国がそれぞれ一部の島を実効支配していて、とても複雑な状況にある。とくに今年になって中国と他の国との衝突がたびたび報道されている。きょうのニュースの、インドネシアで開かれているASEANと中国の外相会議でルールづくりが一歩進んだという話は喜ばしい。インドネシアはこの海域に面していながら領土争いの当事者でない(Natuna諸島がインドネシア領であることには反対がない)から調整できるのかもしれない。

(日本は、第二次大戦中一時的に支配したという事情があって、全く無関係な国よりもかえって発言しにくいようだ。)

中国は南シナ海の島だけでなく全域(他国の沿岸だけは除くが)の領有を主張しているそうだ。かなり無理のある主張だと思う。

しかし、たとえば英語で South China Sea という名前を使うと、意図しなくても、それは中国の領域だという主張を支えてしまわないだろうか? 日本語の「南シナ海」もそうだ。「シナ」は、日本人が使うと蔑称だとして怒る中国人もいるけれども、語源がChinaと同じであることはまちがいない。

「東ベトナム海」(実際、ベトナム語でのこの海の名前を直訳すれば「東海」だ)でも、「西フィリピン海」でも、「南シナ海」と同等の理屈はたつはずだが、同様に反発を招くだろう。

この海域がSouth China Seaと呼ばれる前に使われていた名前がわかっているならば、それを掘り起こして使うのがよいと思う。

それがわからないので、別の案を考えてみた。ひとまず中華帝国の視点に立ってみると、この海域は「南蛮」の領域だったはずだ。「南蛮海」と呼んだらどうだろう? この用語を日本人が使うと、日本人がこの海のまわりに住んでいる人たちを野蛮人扱いしていることになって、反発されるおそれもある。しかし、ここは中華帝国から野蛮人扱いされた人たち(その一部は中華帝国に「平定」されたわけだが)の生活領域であることを明示するという積極的な意味をもたせることはできないだろうか? ついでに、「東シナ海」と呼ばれているところを「東夷海」としたらどうだろう。われわれ自身が「東夷」であると自覚しながら。