macroscope

( はてなダイアリーから移動しました)

2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

増税は避けられない。消費税増税よりも天然資源環境税が望ましい。

国会での税と社会保障の制度改革に関する審議が、消費税増税の是非という論点に限定されてしまったのがとても残念だ。もし選択肢が「消費税増税」と「何も変えない」だけならば、わたしはしかたなく「消費税増税」に賛成する。しかしこれだけしか選択肢がな…

病的科学

「病的科学」は「疑似科学」と関係があるが別の概念だ。その意味は必ずしも統一されていないと思うが、わたしは次のように考える。(科学の対象になりうると思われるが)科学による答えが出ていない問題について、いろいろな仮説をたててその検証を試みる(Popp…

日本気象学会講演会「地球温暖化問題における科学者の役割」

日本気象学会(http://www.metsoc.or.jp/ )の2012年春季大会は5月26日(土)から29日(火)まで、つくばで開かれた。わたしはそのうち26日と27日に出席した。これはそのうち、26日午後に開かれた公開気象講演会「地球温暖化問題における科学者の社会的役割」につ…

総観規模 (synoptic scale)

「総観」ということばは気象学・気候学に特有だと思う。気象学・気候学では発音が同じ統計学用語の「相関」も出てくるので注意が必要だ。今では、この概念は空間スケールを示す「総観規模」(英語synoptic scale)が基本だと考えてよい。水平スケール数千kmだ…

傾圧不安定

「傾圧不安定」(英語でbaroclinic instability)は、温帯低気圧ができるしくみの話に出てくる概念だ。気象力学で使われる「不安定」ということばの意味については、[5月29日の記事]と[きょうの「CISK」についての記事]を参照してほしい。「傾圧」は「順圧」(b…

第2種の条件つき不安定=CISK

「第2種の条件つき不安定」(英語でconditional instability of the second kind、略してCISK)は、台風を含む熱帯低気圧[6月15日の記事参照]ができるしくみの話に出てくる概念で、前に述べた「不安定」[5月29日の記事参照]という用語が使われているもうひとつ…

前線

気象用語の「前線」は英語では frontという。軍事用語で敵対する軍がぶつかっているところをさすことからの類推にちがいない。概念的には、線の両側に質の違う空気があるような状況で、その線が前線なのだ。実際には空気は連続体でありその温度や湿度などの…

台風

台風とは強い熱帯低気圧 [「低気圧、高気圧」の記事参照]のことだ。日本の気象庁の用語では、地上の風速【注】が約17 m/s (正確にはノット単位で定義されている)を越えると「台風」としている。かつてはこの基準に達しない熱帯低気圧を「弱い熱帯低気圧」と…

低緯度・中緯度・高緯度、熱帯・温帯・寒帯

「低緯度、高緯度」という表現は一定の約束に従って使われているわけではない。それぞれの話題の文脈で、相対的に赤道側か極側かを表わす。ただし、「低緯度、中緯度、高緯度」という組で使うときは、だいたいどのくらいの緯度をさすかの共通理解はあると思…

地衡風、旋衡風、傾度風、温度風

(中に出てくる用語の説明はこれまでの「気象むらの方言」の記事にあるものが多い。ひとまず、本文から各記事へのリンクはつけていない。[このカテゴリーの記事一覧]を参照していただきたい。)大気の大部分(地表面に近い「境界層」を除いた、「自由大気」と呼…

エネルギー技術シンポジウム(2012.06.15)予告

6月15日(金)午後、日本科学未来館(東京、お台場)で、 「日本再生に向けたエネルギー技術の展望と新たな研究開発スキーム」 というシンポジウムが開かれる予定です。キーワードは、蓄電池、熱技術、再生可能エネルギーの貯蔵・輸送などです。詳しくは次のウェ…

経済肥満

経済成長ができる条件が乏しいなかで無理をして経済成長をめざしても、経済肥満になってしまう可能性が高いのではないだろうか。

モデルとパラメタリゼーション

(中に出てくる用語の説明はこれまでの「気象むらの方言」の記事にあるものが多い。ひとまず、本文から各記事へのリンクはつけていない。このカテゴリーの記事一覧を参照していただきたい。)気象学の中でも「モデル」ということばは文脈によって違う意味に使…

(勧めたくない用語) 閉じた系 (閉鎖系)

「系」は英語ではsystemでありいろいろな文脈で使われることばだが、ここでは熱力学用語の「系」に限る。これは日本語で「システム」と言われることは少ない。熱力学の知識は自然科学の多くの分野で基礎として使われる。そこで「開いた系」(あるいは「開放系…

物質

Twitterを見ていたら、「α線、β線は物質か」について、ある人は物質に決まっているという立場で、別の人は物質であるはずがないという立場で議論をしているようだった。議論はだんだん、物理でいう物質(英語ではmatter)と化学でいう物質(substance)との意味…

「バベルの塔の職人長屋」 シリーズ趣旨説明

人々の主張が一致しない理由が、同じ用語を使っているがその意味が違っていて、それに気がつかないか、あるいはそれぞれが自分の使いかたが正しく相手の使いかたがまちがっていると考えているという事情によることがある。こういうときは、自分と相手が違う…

コリオリ (Coriolis)の力(ちから)

多くの人が「コリオリ(Coriolis)の力(ちから)」は気象学特有の用語と思っていると思う。海洋物理学を知っている人はそう思わないだろうが、気象学と海洋物理学に特有の用語だと思うかもしれない。実際には、これは物理学のうちの力学に共通のことばだ。わた…

放射強制(力?) -- radiative forcing

「放射強制力」(英語ではradiative forcing)という用語は気象学者の間でも通用するとは限らない。しかし、地球温暖化のしくみを説明しようとすれば、表現はともかく、これに対応する概念を含む話になるはずだ。これは物理学用語でいう「力」ではない。それに…

気温減率、断熱減率

物理量の勾配について、[「勾配・傾度、気圧傾度力」の記事]ではまず圧力の場合について述べたが、温度についても同様に、鉛直方向や水平方向の「温度勾配」あるいは「温度傾度」が論じられる。鉛直方向の温度勾配については特別な用語がある。大気のうち地…

勾配・傾度、気圧傾度力

物理量が空間座標とともに変化するとき、物理量を空間座標で微分したものをその物理量の「勾配」あるいは「傾度」(「経度」と音が同じだが書きわけている) (英語ではgradient)という。もともとは、地表面の高さを水平の座標で微分したものがそこの地形の勾配…

「科学技術重要施策アクションプラン」の「グリーンイノベーション」に関する意見

国の総合科学技術会議 http://www8.cao.ac.jp/cstp/ が、「平成25年度科学技術重要施策アクションプラン」について、意見募集をしている(6月8日(金)まで https://form.cao.go.jp/cstp/opinion-0024.html )。【[2012-06-08補足] わたしは6月5日に意見を書いた…

わたしは機械翻訳をどのように使うか

正確な事実を確認していないのだが、「どこかのウェブページの外国語版を作る際に機械翻訳の結果をそのまま使って恥ずかしいことになってしまった」という話を聞いた。機械翻訳の結果は、そのまま訳文として公開できるものではない。これは現在の技術水準だ…

会合のメモをとること

研究発表会・講演会・討論会・座談会などを聞きにいくとき、わたしはメモをとることが多い。会場にノートパソコンを持ちこんで動作させてさしつかえない限りはパソコン上でエディタを開いて文字を打ちこむ。問題は電源だ。会場で電源をとれれば別だが、そう…

手動農機具を活用する除染技術の開発

5月30日の朝のNHKテレビのニュースで、(ほかの件でおせわになっている)東京大学農学部の溝口 勝(まさる)さんの顔を見た。福島県飯舘村の農家と研究者でつくるグループが、水田の土の放射性セシウムを取り除く除染の方法として、田車(たぐるま)という手動の農…

2012年日本の夏は2011年アラブの春に続く革命の季節になるのか

原子力発電所の再稼働に反対するデモが起きているそうだ。6月1日、首相官邸前には(デモ側情報によれば) 2700人が集まったという。これで原子力発電所を再稼働しないことについて国民的合意が得られるのであれば、うれしいことだ。他方「政府と電力会社は再稼…

バイオCCSのテクノロジーアセスメントが急務だ

大気中の二酸化炭素濃度が400 ppmを越えたという報道を聞いた。ローカルな人間活動の影響が小さい個別の地点での観測値だそうだが、全球平均値で越える日も近いだろう。温暖化をくいとめるために、二酸化炭素濃度はこのくらいのレベルにとどめたい。もっと低…