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台風

台風とは強い熱帯低気圧 [「低気圧、高気圧」の記事参照]のことだ。日本の気象庁の用語では、地上の風速【注】が約17 m/s (正確にはノット単位で定義されている)を越えると「台風」としている。かつてはこの基準に達しない熱帯低気圧を「弱い熱帯低気圧」と呼んだが、これでも警戒の必要はあるので「弱い」をつけずに単に「熱帯低気圧」と呼ぶことになった。ただし「熱帯低気圧」という用語の広がりには台風も含まれる。

【[注(2012-06-21)]「風速」はとくにことわらない場合は10分平均風速をさす。別に「瞬間風速」という用語が定義されているがここでは使わない。】

熱帯低気圧は、低気圧のうちで特定の構造をもったものを言う。日本付近では、単に低気圧と言ったら温帯低気圧だが、熱帯から来た熱帯低気圧も混在する。台風だったものが寒冷前線などの構造をもつようになったら温帯低気圧に変わったとされ台風とは呼ばれなくなる。温帯低気圧には風速によって階級わけされた名まえはないので、単に低気圧と言っても台風なみの風速をもつこともある。

熱帯の海洋上とその付近では、水平スケール100 kmくらい以上で、ある程度以上の強さ(残念ながらわたしには明示できないが)の、地上の低気圧は、みな「熱帯低気圧」だと思ってよいと思う。(地域によっては区別された名まえをもつものもあるが。)

英語で「低気圧」にあたることばとしては low と cycloneがある。「温帯低気圧」はextra-tropical cycloneというのがふつうだ。(この用語はふつう強い低気圧をさすのだが、強さによる基準があるわけではない。) 同様に熱帯低気圧を全般的にtropical cycloneということもあるが、tropical cycloneは強いもの(風速約33 m/s以上)に限って使うこともあるので注意が必要だ。

国際的な気象事業用語では、熱帯低気圧は地上風速によって弱いほうからtropical depression (TD)、tropical storm (TS)、severe tropical storm (STS)、tropical cyclone (TC)と階級分けされている。そして、TCのうち北西太平洋(赤道から北、180度経線の東経側)のものをtyphoon、北大西洋および北東太平洋のものをhurricaneという。その他のものはtropical cycloneで、温帯低気圧が来ない地域では単にcycloneともいう。インド洋や南太平洋のサイクロンはこれだ。【本によっては「南太平洋の熱帯低気圧はウィリウィリという」と書いてあるものがあるが、この語は気象事業用語として採用されたことはないそうだ。】 日本の「台風」はTS以上にあたる。国際的にもTS以上の階級のものを合わせて海域別に通し番号をつけて認識されている。

発生海域にこだわらずに強い熱帯低気圧を問題にするときは、英語ではtropical cyclone、日本語では「台風」とすることが多い(と思う)。