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総観規模 (synoptic scale)

総観」ということばは気象学・気候学に特有だと思う。気象学・気候学では発音が同じ統計学用語の「相関」も出てくるので注意が必要だ。

今では、この概念は空間スケールを示す「総観規模」(英語synoptic scale)が基本だと考えてよい。水平スケール数千kmだ。地球大気の運動のうちでは大きい規模なので「大規模」(large scale)ともいう。しかし1万km以上の規模は「惑星規模」(planetary scale)として、「大規模」には含めるけれども、「総観規模」とは区別するのがふつうだ。

総観規模の代表的な現象は温帯低気圧(傾圧不安定波)だ。梅雨前線上の数百km規模の低気圧は総観規模のうちの小さいほうとする人と中小規模[メソスケール]のうちの大きいほうとする人がいる。熱帯の総観規模現象とはどんなものかについても人によって認識が違うと思うが、熱帯低気圧偏東風波動[ここでは説明を省略する]などは含まれるとすることが多いだろう。

Synopticの語源は「syn=同じ、optic=視野」というような意味であり、使われ始めたころの歴史を確認してはいないが、19世紀にヨーロッパで、天気図(気圧などの気象要素の分布を表示した地図)をかくことによって認識された現象をさしていたにちがいない。地上から空を見上げて認識される空間スケールは数十km以内に限られる。しかし嵐(温帯低気圧)は1日で千kmくらい動く。その動きを認識するためには、とくにヨーロッパでは複数の国にまたがって、同じ気象要素を同じ時刻に観測する約束をしたうえで、集まったデータを地図の上に表示してみることが必要だったのだ。

総観気象学」は「メソスケール気象学」と対照される表現で、どちらも対象の空間スケールだけを限定していて方法を指定していない。ただし、人によっては力学的方法を含めず観測データの解析に限る場合もあるようだ。

総観気候学」は、総観規模の現象について、毎日の天気図に現われる現象に注目した方法による気候学をさしている。たとえば温帯低気圧や前線の出現頻度を集計して分布図をかいた研究がある。これは20世紀なかばには、それまでのこの空間スケールの気候学がおもに月平均値を扱っていたのに対して、新しい研究のスタイルだった。(これを「動(dynamic)気候学」という人もいたが、この用語は力学的方法による気候学とまぎらわしいので使われなくなった。)