macroscope

( はてなダイアリーから移動しました)

亜熱帯高気圧、亜熱帯高圧帯、(勧めたくない用語) 中緯度高圧帯

【この記事は まだ 書きかえることがあります。 どこをいつ書きかえたか、必ずしも示しません。】
【便宜上「気象むらの方言」のカテゴリーに入れたが、むしろ「気候学むらの方言」の話題である。】

- 1 -
近ごろ、世界の気候の重要な部分である「亜熱帯高圧帯」のことを話題にしたとき、それが中学・高校の地理の教材で「中緯度高圧帯」とよばれている、と聞いた。

【山本・尾方(2018)によれば、高校の教科書のうち、地学の7種の用語はいずれも「亜熱帯高圧帯」だが、地理では両者を併記したもの5種、一方だけのものそれぞれ2種となっている。論文は見たのだがこの件は見落としていて、著者から教えていただいた。】

そういえばわたしが少年時代に読んだ地理の本にもそういう用語があったというおぼろげな記憶があるが、おとなになってからその用語を見た記憶がない。ただし、わたしが読んだ本にそういう用語が使われていなかったとは言いきれない。ただ気にとめなかっただけかもしれない。

ここでいう高圧帯のひろがりはおよそ緯度15度から40度くらいまでだろう。「中緯度高圧帯」という表現はうまくないと思う。

「中緯度」ということばの定義は一定していない。しいていえば、0度から90度までを三等分して30度から60度までを中緯度ということもできる。

また、(赤道近くと極近くに住んでいる人以外は) 自分が住んでいるところを「中緯度」として認識する人が多いようだ。

それで思い出すのは、ソ連(当時)のアリソフ(Alisov, 著書のドイツ語版でのつづりはAlissow)の気候区分では、亜熱帯高圧帯にあたるところが「熱帯気団」とされていて、温帯低気圧帯にあたる「寒帯前線」(英語ではpolar front)の高緯度側にある「寒帯気団」の別名が「中緯度気団」とされていたことだ。ロシアに視点をおけばロシアの人口の多くがすむところが中緯度なのだろう。[わたしはアリソフの著書はドイツ語版で見たのだが読んでいない。アリソフの気候区分に関する知識はおもに鈴木(1975)による。]

それにしても、日本のうち九州から関東にかけてのほぼ東西にのびた地方は、夏にはこの高気圧におおわれることが多いが、冬にははずれる。そこに住む人にとっては、この高気圧はどちらかといえば低緯度側からやってくるものなのだ。

北大西洋のアゾレス高気圧や、北太平洋高気圧の東端に近いところでは、緯度40度くらいになるから、そのあたりに注目した場合は「亜熱帯」は適当でないという考えもあるかもしれない。

しかし、世界全体を見わたした場合と、日本付近に注目した場合の呼びかたは、「亜熱帯高気圧」「亜熱帯高圧帯」でよいと思う。

- 2 -
亜熱帯高気圧は、帯状になっているというよりも、おもに海上で等圧線がとじた高気圧の形になっているから、「亜熱帯高圧細胞[複数]」とよぶべきだ、という考えがある。

わたしの記憶ちがいでなければ、鈴木秀夫先生が、気候学の講義で、この考えを肯定的に伝えていたのだ。

わたしには、アリソフの気候区分をも肯定的に伝えていたことと、一貫しないような気がした。アリソフの「熱帯気団」の「熱帯」はドイツ語版の tropisch の訳語だから「帯」の意味は含んでいないが、その地図上の分布は、経度によって広がりが多少ちがうものの、全経度にわたっている。それが高気圧でもあるならば、「高圧帯」という表現も適切だろう。

あとで考えてみると、鈴木先生はアリソフの用語がよいと思ったわけではなく、アリソフの体系がすぐれていると思い、オリジナルを尊重する意味でその用語も紹介したのだと思う。また、アリソフの体系を紹介したときに、東西方向が一様でないことを軽視していることを欠点として述べていたとも記憶している。だから、「一貫しない」という印象は表面的にすぎないだろう。

わたしは、地図上の気圧分布が「細胞」的であっても、東西平均した気圧が高いならば「高圧帯」と言ってもよいと思う。北半球の夏の陸上に低圧部(モンスーントラフ)が出現するところでは、高圧帯がとぎれるというべきかもしれない。

- 3 -
北太平洋それぞれの亜熱帯高気圧は、東太平洋に気圧の極大がある。おそらく、海洋(表層)の大循環の亜熱帯循環(subtropical gyre)で、海流が海の西側で高緯度へ向かう[北太平洋では黒潮]、東側で低緯度へ向かう[北太平洋ではカリフォルニア海流]ので、東側のほうが寒冷になっていることとの関連で説明できると思うが、わたしはまだ理屈を追いかけていない。

文献