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最高気温40℃以上の日は、すなおに「40度以上の日」とよぶことにしよう

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたか、かならずしも しめしません。】

【この記事は、ひとりの気象学専門家として、報道されている話題を整理するとともに、自分の意見をのべるものです。意見としての結論は (記事の最初でも最後でもなく) 3節にあります。】

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2026年2月27日から、気象庁が「最高気温が40℃以上の日の名称に関するアンケート」をしている。しめきりは 3月29日だそうだ。

気象庁はむかしから、気温があらかじめきめたしきい値をこえた日数の統計をとってきた。そして、そのうちいくつかについては名まえをつけてきた。

つぎにリンクするウェブページの「気温に関する項目」の表の項目として、冬日、真冬日、夏日、真夏日、猛暑日、熱帯夜 について、気象庁の用語としての定義がある。ただし「熱帯夜」については「分類」の列に「△」印がついていて、「備考」として「気象庁の統計種目にない」とある。

△印の説明はつぎのページの「各ページにおいて用いられている記号の意味」にある。

  • (気象庁) 知識・解説 > 天気予報等で用いる用語 > 予報用語について https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kaisetsu.html
    • 無印 ... 予報用語:気象庁が発表する各種の予報、注意報、警報、気象情報などに用いる用語
    • △ ... 解説用語:気象庁が発表する報道発表資料、予報解説資料などに用いる用語
    • × ... 使用を控える用語

そのうちわりあいあたらしくきめられた「猛暑日」は、日最高気温が35℃以上の日である。それがきめられたころは、気温が40℃以上になることは個別に報じるべき事件であり、日数をかぞえる対象とは意識されていなかったようだ。しかし、その後、ひと夏のうちに複数回 40℃以上になる地点もあらわれた。そして、(大気中の二酸化炭素などの温室効果気体がまだふえつづけているので) それはさらにふえると予想される。そこで、気温が40℃以上になった日数の統計も発表することになった。

そうすると、報道機関としては、その条件をみたす日に名まえがほしい、という意見がでてくる。すでに日本気象協会が「酷暑日」をつかっているが、(むかしの気象協会が気象庁の外郭団体だったのとちがって) いまの気象協会は多数の予報事業者のひとつにすぎないので、他の事業者としてはつかいにくく、気象庁にきめてもらいたい、という事情があるだろうとおもう。

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たとえば「夏日」は、ひとつの地点について年々を比較して「ことしの夏は暑い日が多い」とか「ことしの夏は早くはじまった」といった議論につかわれたり、地点間の比較で、夏日が多い地点のほうがそれが少ない地点よりも暑い気候だといった議論につかわれたりする。

ただし、「夏日」という用語は、温度があるしきい値をこえた日をさして、便宜上つけた用語にすぎない。それが名づけられた当時の名づけた人たちの感覚で「夏らしい」と感じる日と対応していたかもしれないが、一般に「夏らしい日」に対応するとはかぎらない。さらに、平均の温度がちがう地点のあいだでは人びとが「夏らしい」と感じる温度のしきい値はちがうだろう。「夏日」がつづく期間が長い地点が、かならずしも「夏 (の期間) が長い」とはかぎらないのだ。

こういう、約束ごとで意味をあたえられ、それが直感的な意味とかならずしも一致しない用語は、それをつかう人が覚えきれてつかいこなせるうちは便利なのだが、覚えきれないと、まちがいをおこしやすく、まちがいをふせごうとすると時間を消費するので、不便になる。

今回は、案として、「〇暑日」の「〇」のところになにかがはいる名まえがいくつもだされているけれども、「猛」と「〇」のどちらがつよいか直感的にわからないものが多い。それがきまると、それをつかう人には「猛」と「〇」のどちらが上か、そしてしきい値がそれぞれ何℃であるか、覚えてつかいわける負担が生じる。「超猛暑日」のような形ならばどちらが上かはまぎれないが、さらに上の階級をつくったときにはどうするかまで考えておく必要があるだろう。45℃以上の日をかぞえる必要が生じるような気候変化はおきてほしくないけれども、もしそうなっても用語体系は混乱しないようにしておくべきだろう。したがって、これ以上の暑さがありえないような極限のなまえをつけてしまうのはまずいだろう。

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わたしは、アンケートのフォームの「その他」の欄をつかって「40度以上の日」という回答をした。理由を書く欄はみあたらなかったのでつたえることができなかったが、つぎのように考えたからだ。

約束ごとによる用語の件数がふえると、用語をとりちがえたまま作業してしまい、まちがった情報をつたえたり、まちがいに気づいたとしても作業しなおしで時間をむだにすることが多くなると思う。また、用語をまちがえた人をけなしたり、試験のたぐいで用語をまちがえると低い成績をつけたりすることがふえるのも、のぞましくないことだと思う。

表現が多少長くなっても、数値による基準は数値のままつたえがほうがまぎれない、と思うのだ。

賛同されるかたは、アンケートに同じように回答してくださると、ありがたい。

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これとは別の件だが、気象庁が警報のたぐいの制度変更を予定していることを、つぎの記事で紹介した。

そこでは、「警報」と「特別警報」の間のレベルについて「危険警報」という用語を導入したが、これはくるしまぎれの用語で、「特別警報」とどちらが上位かは約束ごととしておぼえるしかない。むしろ、気象庁は、レベル3 (警報)、レベル4 (危険警報)、レベル5 (特別警報) というレベル番号を意識してもらうことをめざしているようだ。

これと同様に、暑い日についても、レベルをしめす用語をふやすよりも、むしろレベルを数で表現したほうがよい、といえると思う。

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レベルをしめす用語がふえてしまった例としては、電波の波長別分類の名まえがある。総務省のつぎのウェブサイトで説明されている。

波長を (対数目盛りで) 10進の1けたごとにくぎって、「超長波、長波、中波、短波、超短波、極超短波、マイクロ波、ミリ波」としている。

これは「長波、中波、短波」からはじまって、拡張してきたものにちがいない。

「マイクロ波」という用語は (これとはちがう定義でつかわれているのも見たが、ここでは) 「極超短波」よりさらに短い、という意味なのだろう。しかしそのつぎはその相対比較をあきらめて波長が mm (ミリメートル) のけたであることからくる「ミリ波」が採用されている。そちらをさきに知った人にとっては「マイクロ波」が波長が μm のけたの波でないのはやっかいだ。

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気象学用語にも「短波、長波」がある。しかも複数種類ある。

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そのうちひとつは電磁波の区分だが、電波利用の区分とはちがうところでくぎっている。そのことはつぎのブログ記事に書いた。

こちらは波長軸を2分しただけで原理的にはそれぞれゼロと無限までの区間なので、「超」がつく階級名が追加されたりすることはない。(これとは別に、電磁波についての一般的な用語である「紫外線」や「赤外線」を細分した階級名がつかわれることはある。)

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もうひとつは、天気図で見られるような規模の大気の力学的波動の細分類で、超長波、長波、短波がある。(超長波は長波からわけられた階級である。)

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電波利用の件にもどる。日本語では波長だが [注]、英語では周波数 (振動数) でなづけている。「VLF, LF, MF, HF, VHF, UHF, SHF, EHF」である。あきらかに、まず「LF, MF, HF」がたてられ、その外側に拡張されてきたものだ。用語をみると、ultra と super と extra はいずれも very よりもつよそうだが、この 3つのうちどれがつよいのかは直感ではわからず、約束ごととしておぼえるしかない。まずい名まえのつけかただとおもう。

日本語では very に「超」、ultraに「極超」を対応させ、super, extra に対応させるのはあきらめて別の語をもってきたにちがいない。

  • [注] 英語でも、ラジオ放送関係で、波長による LW, MW, SW という略語を見たことがあるが、その外の階級はつくられなかったようだ。