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短波放射、長波放射

短波とは波長の短い波、長波とは波長の長い波のことだ。だが、どのくらいのものを長いというのかは、話題によって違う。

気象学では、大気の力学的な波動についても「長波」などの表現が使われることがあった(「超長波」もあった)が、最近はあまり見かけないのでここではその議論は見送る。

一般の世の中で、電磁波について「短波」「長波」と言えば、多くの人はラジオに使われる電波のことを思うだろう。日本では大部分のAMラジオに使われるのが「中波」で、「短波」はそれよりも短めの波長の電波だ。短波は大気中の電離層で反射して地球上の遠くに伝わる特徴があるので国際放送に使われることが多い。それより波長の短い波には「超短波」などの名まえがついていたが、今では英語のVHF (直訳すれば「超高周波」)などの頭文字略語(波長でなく周波数に基づいている)が使われることが多い。

しかし気象学で電磁波の「短波」(英語shortwave)「長波」(longwave)と言ったときの意味はふつうこれではない!

太陽から来る光も電磁波だ。地球は太陽から可視光線(波長0.4--0.8μm)を主とする電磁波の形でエネルギーを受け取る。エネルギーを受け取る一方ならば地球のエネルギーはふえていくはずだがそんなことはなく、電磁波の形でエネルギーを出している。これは波長10μm前後の赤外線が主となっている。幸いなことに、地球が受け取る太陽放射と、地球上の物体が出す赤外線との波長はほとんど重ならない。そこで、大気中のエネルギー伝達を考えるとき、電磁波を「短波」つまり太陽放射の波長域と、「長波」つまり地球放射の波長域に分けて考えるのが便利なのだ。境目は4μmあたりだ。