【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたか、かならずしも しめしません。】
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地質年代区分の名まえとして、Anthropocene というものをたてようという意見がある。そういう用語が出てきた文献の年代は 2000 年だが、本気で議論されたのは2010年ごろからだと思う。それがきまれば、日本語はおそらく「人新世」となるだろう。
このブログではつぎのような記事であつかってきた。
- [Anthropocene (人類世、人新世) という新概念の複数のとらえかた (1)] (2016-02-06)
- [Anthropocene (人類世、人新世) (2) 意図的気候改変(気候工学)との関連] (2016-02-07)
- [Anthropocene (人類世、人新世) (3) 智生代?] (2017-01-17)
- [Anthropocene (人類世、人新世) (4) Lewis & Maslin (2018) "The Human Planet"] (2019-09-10)
- [Anthropocene (人類世、人新世) (5) JpGU大会を機会に考えたこと] (2020-07-16)
- [Anthropocene (人類世、人新世) (6) 地質層序専門家とそのほかの人とのすれちがい ] (2021-04-03)
そういううごきがあるからだとおもうが、人文学者 (哲学者・歴史学者など) や社会科学者のうちに、「人新世」という用語をつかう人がふえてきた。日本語圏だけをみても、2020年以後、「人新世」が題名にはいった本がつぎつぎに出ている。しかし、そのような著作をする人の多くは、地質年代名がどのようなしくみできめられているかよく知らないまま、人文学・社会科学のたちばから、地球環境への人間活動の影響が大きくなった時代としてこの用語をつかっているだろう。
地質年代区分は、地質学者のうちでも、層序学という分野の人たちがきめている。それを地球科学にかかわる人たち全体が尊重する伝統ができている。層序学以外の地球科学者は、「人新世」をどう定義するかにかかわることができないが、いったんきまったら、その定義を尊重しなければならないだろう。そうすると、地球科学者は、人文学者・社会科学者が層序学者とちがう意味で「人新世」ということばをつかったら「それは地質年代名のつかいかたとしては正しくない」と指摘しなければならない。これは、人文学・社会科学の議論を貧しくすると思う。
そう考えるので、わたしは、「人新世」を地質年代名にすることには、反対したい。
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大学の教養科目として「自然観の変遷」という科目を担当することになってしまい、くるしまぎれなのだが、そのうち1回の主題を「人間が自然環境を変えた。「人新世」というべきか?」とした。その授業の教材のウェブページをリンクしておく。
- [人間が自然環境を変えた。「人新世」というべきか?] (教材ページ)
そのはじめのほうで、上 (このブログ記事の 1節) と同じことをのべた。
教材ページの後半は、人間が大陸間の動植物をまぜてしまった話題がおもになった。わたしはこれを人間による自然環境の改変として話題にしたのであって、それを「人新世」の定義にするべきだという意見に賛同してはいない。
なお、教材ページ中で略称で参照している本 (いずれも高校用の副教材) はつぎのとおり。
- 『地学図説』 (旧課程版、新課程版とも内容は同じで、章・節の編成だけがちがう。)
- [旧課程版] 西村 祐二郎、杉山 直 監修, 2022: 『スクエア最新図説 地学 十訂版』。 第一学習社。ISBN 978-4-8040-4658-7. [旧版 (2018) の読書メモ]
- [新課程版] 西村 祐二郎、杉山 直 監修, 2022: 『新課程版 スクエア最新図説 地学』。 第一学習社。ISBN 978-4-8040-4710-2. [読書メモ、新旧対照表へのリンクをふくむ]
- 『タペストリー』
- 帝国書院 編集部, 2022: 『最新 世界史図説 タペストリー 二十訂版』。 帝国書院。ISBN 978-4-8071-6605-3. [旧版 (2003, 2020) の読書メモ]