【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】
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日本地理学会の理事会から会員アンケートがまわってきた。日本地理学会は英語名称を Association of Japanese Geographers (AJG) としてきたが、これを変えたいとのことだ。 変えることはほぼ確定で、どう変えるかについて複数の案がでている。
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いまの英語名称は、「アメリカ地理学会」として知られる団体 (のうちのひとつ) が Association of American Geographers だった (いまは American Association of Geographers になっている) のにならったものにちがいない。なお、日本語訳が「アメリカ地理学会」となる団体はもうひとつ American Geographical Society があるので注意が必要だ。AAG は頭文字略語を変えないですんだが、日本地理学会がもし同様に変更をすると Japanese Association of Geographers になり (今回の理事会からの複数の案のうちB案はこれだ)、略称は AJG から JAG にかわることになる。
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わたしは AJG (あるいは変更までのAAG) のなまえを、学会のなまえとしては変わりものだが、まずいとはおもっていなかった。しかし、変更すべきだという意見を知って考えてみると、日本地理学会で活動しているが日本人でない人にとっては、自分が会員とみとめられているのか不安になる用語かもしれない。Japanese geographers にはなんとおりかの解釈ができるが、いちばんすなおな解釈は「日本人の地理学者」だろうと思うから。(この「日本人」はかならずしも日本国籍の人という意味ではなく、日本を本拠地としている人という意味でもありうると思うけれども。)
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Japanese geographers になんとおりかの解釈ができることにすぐ気づいたのは、少年時代にみた英語の教材で、「(an) English teacher」には複数の解釈があり、話しことばではアクセントで区別されると言っていたのをおもいだしたからだ。一方は「英語教師」 (英語をおしえる人) で、ひとつの複合語 (「熟語」) となっていて、English をつよく発音する。他方は「イギリス人の教師」 (イギリス人であり教師でもある人、ここの「イギリス人」は語源に忠実に「イングランド人」というべきかもしれない) で、形容詞 と 名詞 がそれぞれ独立していて、とくに English を強調するのでなければ teacher のほうをつよく発音する。
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これを参考に Japanese geographers の意味をかんがえてみると、つぎのものがあげられる。意味が同じではないが語のくみたてがにているものは「あるいは」でつなげて列挙してみた。
- (ア) 日本人の地理学者 (日本人である地理学者)、あるいは、日本に住んでいる地理学者。
- (イ) 日本 (という地域)、あるいは、日本人、あるいは、日本語 を対象としてあつかう地理学者。
なお、ここで「地理学者」はかならずしも地理学の研究や教育を職業とする人にかぎらず、地理学の専門文献を読み書きしたり学会の会合に出たりする人をさしている。
日本地理学会についていえば、外国の地域を対象としているメンバーも多いから、(イ) は適切な解釈ではない。(ア) はおおまかには妥当なのだが、さきほどのべた問題がある。
実際の日本地理学会は、「日本語をつかう地理学者の集団」といえるとおもう。学会誌には英文誌もあるし、学会の会合で英語の講演がおこなわれることはあるけれども、理事会や学会誌編集委員会の作業言語が日本語であるという意味で、「日本語で運営される学会」といえる。日本語をつかわない人は、制度上は会員になれるけれども、marginal な存在になってしまうのはやむをえないだろう。そして、(日本語で専門教育をおこなう大学がいくつもある状況のもとで) 日本語で運営される学会には存在意義があり、英語で運営される学会にかえるべきではないとおもう。
そこで、Japanese geographers を
- (ウ) 日本語をつかう地理学者
と解釈してもらえれば、学会の現状にてらして (ア) よりも適切であり、学会の英語名称はいまのままでよいのだが、これはくるしいだろう。
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理事会提案のB案の Japanese association もなんとおりかの解釈ができるが、単純に「日本の会」という意味で、英語の習慣で形容詞の形をつかった、とみるのが妥当だろう。
(日本の気象庁は Japan Meteorological Agency で Japanese ... ではないのだが、もし日本地理学会が Japan Association of Geography となったら変な感じがする。Japan Geography Association はありうるとおもうが、英語としてこなれた形ではないのだろう。)
理事会提案の A案は Geographical Association of Japan (GAJ) だ。こちらでは「日本の」がすなおに (ただし語順はちがって)「of Japan」となっている。他方、「地理 (について) の」のところに形容詞の形をつかっている。「-ical」のついた形容詞なので、すなおに読むと「地理(学)的な会」のような意味になりそうだが、そんな会は現実にありそうもないので、心配しなくてよいだろうとおもう。別の例をあげれば、日本気象学会は Meteorological Society of Japan としており、「気象学的な会」とはなんだろうと疑問におもうことはないだろう。
なお、Aasociation と Society は厳密には同じではないものの、どちらも学会名につかわれるし、どちらも学会でないものにつかわれるばあいもある。日本地理学会の理事会は Aassociation を維持したいと考えている。
わたしの現在の意見は、会の名まえを変えることには賛成だが、A案、B案はどちらも同じ程度にもっともで、一方に票をいれられない。