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Cool Japan = 日本を冷やせ(?)

ある人が「『Cool Japan』よりも別の『XXXX Japan』のほうがいいのではないか」というような議論をしていた。(そこで話題になっていたXXXXには、ここでは話を広げないことにする。) そのときわたしは一瞬、「Cool Japan」を「日本を冷(ひ)やせ」だと思った。少し頭をめぐらして、近ごろ(2000年ごろからだろうか?) 「cool」という形容詞がほめことばに使われているのを思い出した【[2016-09-21補足] [クールビズ、ウォームビズ (2006-03-22)]参照】。ほかのことばで置きかえにくいが「気持ちがいい」と「賢い」に近いところがあるだろう。「Cool Japan」は日本のいいところを宣伝するための標語として使われているのだろう。

わたしが「cool」をすぐ動詞と解釈した背景には、気象学の専門文献を読み慣れていることがある。ひとまず気候の話は別にして狭い意味の気象の文脈で、英語では「寒冷な」という形容詞はcoldであってcoolはめったに使われない。気象の文脈で話題になるのはたいてい隣どうしの相対的高温・低温なので、低温側の用語はひととおりでよい。Coolは「冷やす」という動詞、あるいはcoolingという形で「冷却」あるいは「寒冷化」という名詞としては出てくる。(熱力学的な意味で熱を奪うことをさす場合と、温度を下げることをさす場合がある。) 反対語は、「温暖な」も「あたためる」「温暖化する」もwarmなのだが。

気候の話だとちょっと違って、日本語で「寒帯」と「冷帯」の区別をすることがあり、対応する英語表現は一定しないと思うが、たとえばcold zoneとcool temperate zoneという表現は通じるだろう。ここでは、coolは低温だがcoldほどではないという語感が有効なのだと思う。ただしcool zoneとは言わないと思う。世界の気候を大きく寒帯・温帯・熱帯と分けたとき温帯がtemperate zoneで、その温帯をcool temperate zone (冷温帯あるいは冷帯)とwarm temperate zone (暖温帯あるいは狭い意味の温帯。「暖帯」とは言わないと思う)に分けるのだ。

しかし、「Cool Japan」は「日本を冷やせ」だと理解したとして、その発言が実際に有効な場合を想像しようとしてもなかなか考えにくい。地球温暖化を防ごうということを「冷やせ」というのはわかるが、それならば「世界を冷やせ」だろう。都市のヒートアイランド現象を防ごうというのならばたとえば「東京を冷やせ」だろう。比喩的な意味で、日本の言論空間が興奮状態にあるのでもっと冷静になってほしい、という主張ならばわからないでもない。

とにかく7月や8月の東京で開くオリンピックはcoolではない。野外は暑いし、電力需給のきびしさは今後数年では解決できず、お客さんに快適な冷房を提供しようとすれば住民が節電のため何かをがまんしなければならないことになりそうだ。