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「地理教育・地学教育の中で気候・気象のどのような内容を扱うか」

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】

古今書院 から出版されている月刊雑誌『地理』の2019年3月号が出ました。特集は「地学教育・地理教育の連携協力」です。出版社ウェブサイトのこの号のページ http://www.kokon.co.jp/book/b440349.html に目次があり、「試し読み」のリンクさきで各記事のはじめの部分を読めます。また「PDFダウンロード版を購入」(雑誌1冊ごと)もあります。

この特集に記事を執筆しました。

  • 増田 耕一, 2019: 地理教育・地学教育の中で気候・気象のどのような内容を扱うか。『地理』(古今書院) 2019年3月号 20-27ページ。

内容はだいたいこのブログに2016年ごろからの複数の記事で書いてきたことですが、表題のような趣旨にまとめなおしました。

ここでは、書きだしの部分と、まとめの部分を、引用しておきます。

現代社会の中で生きていく人がもつべき知識は多様だ。専門家は自分の専門に関する知識をもっと教えるべきだと言いがちだ。それをみんな認めていくと、項目の数が多くなり、それぞれにかける時間が短くなる。教材の記述は断片的になり、いわゆる「暗記もの」の弊害が生じがちだ。それぞれの教師が教えるべきものを選べばよいという考えもあるだろう。しかし、たとえばニュース報道が短い表現でできるためには、人びとが背景知識を共有していることが前提になる。さらに、もし大学の入学試験の出題範囲を高校の科目で決めるならば、高校で学ぶ項目の標準がほしい。
わたしは気候・気象の分野の教科内容の専門家の立場から、何を標準に入れるのがよいかを考えている。

わたしが教えるべきだと考える主要項目をまとめる。
A.現象の時空間規模の認識。
B.気候システム全体のエネルギー収支、それを変化させる要因にもとづく気候変化の理屈。
C.大気の大循環、とくに、ハドレー循環と、温帯低気圧帯。
D.気候の大分類の緯度分布。それとエネルギー収支および大気大循環との関係。
E.日本の天気とその季節性 (「地学基礎」と地理では現象論まで)。
F.地表面のエネルギー収支と水収支。
G.陸上生態系(植生)の分布を制約する気候条件。

わたしが「教えるべきだ」と思うことをほかの専門家が「必要ない」と思うことは当然あるでしょう。教材の編成には、いろいろな人のあいだの同様なくいちがいを包括的に考える必要があると思います。興味をもつ生徒がふれられる題材はなるべく多く、全員に必修にする題材はすくなくするべきだと思っています。