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遺伝子組みかえ作物についてわたしはこのように心配する

遺伝子組みかえはわたしにとって専門の外だ。しかし、気候変化への適応とか、バイオマス資源とかに関連して、遺伝子組みかえ技術を使う計画があった場合に賛同するか反対するかを考えなくてはならないことはある。

遺伝子組みかえを受けた作物からできたものを食べることによる危険は、ないとは言えないが、遺伝子組みかえでない作物の場合と同様に考えてよいと思う。有用な遺伝子のついでに意図せずに毒素などをつくる遺伝子が加わってしまうことはありうるが、種(たね)などを売る前に試験栽培して安全性検査をすれば検出できるだろう。

ただし心配に思うのは、収穫後に腐敗などの品質低下をしにくくするための組みかえだ。長期保存できるので流通業者には歓迎されると思うが、よく見える種類の品質低下が起きない裏で、よく見えない種類の品質低下が起きていて、健康によくない食物になってしまうおそれがあると思う。消費者の近くにいる微生物が試験栽培所にもいるとは限らないので、出荷してから問題が起きる可能性はあると思う。【このことを思いついたのは、1970年代に野菜類の品質保持のために放射線を照射する処理に対する疑問を読んだ記憶からだ。放射線照射を受けた作物が腐敗しにくいしくみはよくわかっていなかったが、遺伝子組みかえの場合はしくみを明示できるだろうという点で、事情は同じではないのだが。】

遺伝子組みかえを受けた生物が野外に広まってしまうことによる生態系への影響の心配もある。農作物や家畜の場合は、対象を人間の管理下以外の野外ではびこる能力が高くないものに限れば、影響は限定できるだろうと思う。野生種を遺伝子組みかえして野外に出すことには非常に慎重であるべきだろう。また、人工的に作物に組みこんだ遺伝子が、自然のプロセスで他の生物に移って働くことはないだろうか。もしそれが起こりうるとすると、はびこる能力の高い野生生物の新品種ができてしまうおそれがある。

直観的印象にすぎないが、大型の動植物に関する限り、組みかえの対象となった遺伝子が野外に広まって生態系に影響を与える心配は少ないと思う。しかし、微細藻類、菌類、細菌類などの場合は、かなり心配があると思う。微細藻類などに「薬品」と表現するのがふさわしい特殊な物質を少量作らせるのが目的ならば、環境中に出ないように厳重に管理して培養する形で使ってよいかもしれない。しかし、燃料あるいは食料になる物質を大量に作らせようとすると、閉じた形で培養しようとしても、野外にもれるのを防ぐのはむずかしいだろう。このような目的に使う生物は、野外に出ても大きな影響がないことが確かめられたものに限るべきだと思う。