【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかをかならずしも明記しません。】
- 1 -
人の記録にもとづく過去の気候の記録として、日本、とくに京都の桜の開花日付がある。ここから気候を読みとる研究は、1960年代の 山本 武夫 さんによるもの (山本武夫 (1976) 『気候が語る日本の歴史』[読書メモ] 参照) など、いくつもあるが (あとでのべる 青野 2017 には、田口 龍雄 1939、関口 武 1969 があげられている)、いま代表的な成果は、大阪府立大学 農学部 の 教員だった 青野 靖之 [あおの やすゆき] さんとその学生たちが約1200年間の毎年のヤマザクラの満開日から推定した (グレゴリオ暦) 3月の平均気温の時系列である。
このデータセットは、アメリカ合衆国 NOAA (海洋大気庁) の NCEI (National Center for Environmental Information) の Paleoclimate (古気候) 部門のデータベースに収録されている。
- (NCEI Paleoclimate) Kyoto, Japan 1,200 Year Cherry Tree Flowering Dates and March Temperature Reconstructions https://www.ncei.noaa.gov/access/paleo-search/study/26430
- Dataset DOI: https://doi.org/10.25921/1xy4-ht08
このデータセットは、つぎの2つの論文の成果とされている。
- Yasuyuki Aono & Keiko Kazui, 2008: Phenological data series of cherry tree flowering in Kyoto, Japan, and its application to reconstruction of springtime temperatures since the 9th century. International Journal of Climatology, 28: 905-914. https://doi.org/10.1002/joc.1594
- Yasuyuki Aono & Shizuka Saito, 2010: Clarifying springtime temperature reconstructions of the medieval period by gap-filling the cherry blossom phenological data series at Kyoto, Japan. International Journal of Biometeorology, 54: 211-219. https://doi.org/10.1007/s00484-009-0272-x
日本語による説明は、青野さんによるつぎのページにある。(もとのウェブサイトが消えてしまったので、Web Archive にあるコピーをリンクしておく。)
- (Web Archive, もとは大阪府立大学) 京都の過去1200年間のサクラの満開日データ https://web.archive.org/web/20250114190320/http://atmenv.envi.osakafu-u.ac.jp/aono/kyophe/
また、つぎのふたつの解説も、ほぼ、同じデータセットの解説といえる。
- 青野 靖之, 2012: 植物季節の長期変化と気候変化。地球環境, 17 巻 1 号 p. 21-29。 https://doi.org/10.57466/chikyukankyo.17.1_21
- 青野 靖之, 2013: 京都の桜満開日記録による歴史時代の気候復原。歴史地理学, 55 巻 5号 (通巻 267号)p. 48-52。http://hist-geo.jp/img/archive/histricalgeograpy55_5.html (号の目次ページ、論文題名リンクさきにPDF)
- 2 -
青野さんは、2025年8月に病気で亡くなったとのことだ。その時期が大阪府立大学の大阪公立大学への再編成とかさなったので、研究室のウェブサイトがどこにもひきつがれないで消えてしまった。Web Archive にはコピーがあるが、そのさきはリンク切れのこともある。
- (Web Archive, もとは大阪府立大学) 青野靖之 https://web.archive.org/web/20240221092521/http://atmenv.envi.osakafu-u.ac.jp/aono/
- (Web Archive, もとは大阪府立大学) 青野靖之-論文・資料・出版物など https://web.archive.org/web/20240221085209/http://atmenv.envi.osakafu-u.ac.jp/aono/aonowork/
青野さんの Researchmap は残っている。
- (Researchmap) 青野 靖之 https://researchmap.jp/read0077822
わたしからみて興味深いのは、農業気象学会の2016年度学術賞を受けたときの記念講演にもとづくつぎの文章だ。
- 青野 靖之, 2017: 植物季節現象に関する気候学的研究 (学会賞記念講演要旨)。生物と気象(日本農業気象学会)17 巻 p. 11-14. https://agrmet.jp/publications/cinb_open/#anker-9 (目次ページ、論文題名リンクさきにPDF)
青野さんの研究の主題は、まず、サクラの開花日がどのようなしくみで決まっているかだった。それを応用して、サクラ (ソメイヨシノ) の開花日を推定 (予測) する統計的モデルをつくった。それは気象庁でも1996年から2009年 (気象庁が開花予測を出していた最後) まで採用されたそうだ。この主題の研究も、2016年現在の最近もつづけていた。
その研究からの発展として、過去の気候の研究に向かった。気温などの気象要素から開花日を推定するモデルを逆向きにして、開花日から過去の気象要素を推定するモデルをつくったのだ。ただし過去の花見の対象は、ソメイヨシノではなく、おもにヤマザクラである。主要な成果は1節にのべたもので、ヤマザクラの開花日の情報がとぼしいところをおぎなうため、フジやヤマブキの記録もつかっている。別の研究として、秋のカエデの紅葉の日付から秋 (10月) の気温の推定もしている。
わたしは青野さんと顔をあわせたことはたぶんあると思うが、記憶に残っていない。青野さんと議論する機会がなかったことは残念だ。