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オリンピック問題 (1) とにかく東京で7月・8月に開くのはむちゃだ

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】

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2020年に東京でオリンピックを開くことが予定されているが、この予定が決まるまでの意思決定や、オリンピックの会場その他の準備にかかわる意思決定について、いろいろ変なことが指摘されている。

そのうちには、日本の政治の問題もあるし、オリンピックという制度の問題もある。

わたしの考えは、「1896年のアテネ大会から始まった近代オリンピックの制度に無理が来ており、その全面的再編成が必要だ。もしかすると、もうやめるべきかもしれない。」というものに傾いている。

また、オリンピックの制度が変わらないとしても、東京は2020年開催を返上したほうがよいと思う。

しかし、その主張は、追い追い、別の記事として書くことにしたい。

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この記事では、東京で7月24日から8月9日に開くという、場所と日程の組み合わせが、むちゃだ、という主張にしぼって述べたい。

この主張は、すでに[別ブログ2012-02-17の記事][そのブログの2013-01-06の記事]に書いたし、このブログでも[2015-12-20の記事]に、おそれている事態の例をフィクションの形で書いた。ここで書くことも、大筋でくりかえしになってしまう。

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7月末から8月初めは、東京を含む日本の多くの場所で、年でいちばん気温が高くなる季節だ。

そして、大都市では、都市気候(いわゆるヒートアイランド)も重なって、自然の気候よりも温度が高くなりやすい。

最近数年間を見ても、必ずしも東京ではないが、関東地方では夏のこの時期に、猛暑になることがある。公的機関から、熱中症の危険があるので屋外での運動は避けるようにという勧告が出るような日もあるし、大気汚染もからむと、光化学スモッグ注意報が出る日もある。

天候には年々変動があるので、猛暑日は毎年同じように現われるわけではない。幸いにも現れないかもしれないし、数日の猛暑が続くかもしれない。

屋外での競技の場合、悪天候のために競技ができない日があることはある程度見こまれているだろう。悪天候としては雨が想定されているだろうが。およそ1週間あたり1日ぐらいの延期は覚悟のうえだと思う。しかし3日も続いて悪天候となると、選手が滞在期間をのばすか、開催を打ち切るかをせまられるのではないだろうか。(この日数の数値はオリンピックの運営を知って書いたわけではなくわたしの想像にすぎないが。)

高校野球の例などを見ると、もし日本人だけならば、猛暑でも競技を強行してしまうかもしれない。それは選手の健康を度外視した根性主義であり、わたしはまったく賛成しないが。しかし、外国からの客人に、熱中症の危険をおかしながら競技するか不名誉な棄権をするかの選択をせまることはできないだろう。(外国選手のうちには、猛暑を苦にしない人々もいるだろうが、彼らが有利になることに納得できない人々もいるだろう。)

室内の競技の場合は、よほどの嵐でないかぎり天候に左右されないで開催できるかもしれない。しかし猛暑ならば冷房が必要で、暑いほど電力がたくさん必要になる。ただでさえ、日本の多くの地域(北海道は別)で、夏の暑い時期の昼間に電力需要のピークがある。太陽光発電による供給もピークになる点はありがたいのだが、遠い将来はともかく2020年の時点では、やはり夏は他の季節よりも供給の余裕が乏しいと思う。その時期に、選手・審判だけでなくおおぜいの観客がはいる競技場の冷房の電力需要が加わるのだ。また、時間帯はずれるかもしれないが、観客が泊まる宿泊施設や、移動するための交通機関の電力需要もある。もし供給側の発電所や送電線などの故障が重なれば、競技会にも、市民生活にも、さしつかえが生じるだろう。フィクションで書いたように、もし競技して記録をとるという約束をはたすことが圧倒的に重要であれば、観客なしで、選手と審判の健康だけに気をつけて競技会をする形がありうるかもしれない。それはオリンピックに期待するほとんどの人にとって期待はずれの事態だと思うが。

水上競技だけは、この季節がよいかもしれない。

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1964年の東京オリンピックは10月10日からの2週間だった。(それで、のちに10月10日が「体育の日」とされたのだった。) この期間は、(ときどき、あらかじめ予測できない台風が来るものの) 雨の確率が低いので選ばれたらしいが、気温の点でも東京でスポーツをするのに適した時期だ。

今度も、東京でやるならば、水上競技以外は、10月ごろにやるべきだと思う。この時期ならば、冷房も暖房もいらないだろう。電力需給にもわりあい余裕があるはずだ。(電力設備の点検をする時期でもあるだろうから、それにぶつかると余裕がなくなるかもしれないが。)

しかし、近ごろのオリンピックは、開催都市選定の前の段階に、日程を7月・8月にせよという条件がついてしまって、それをのまないといけなかった、と聞いている。

これは、世界にはいろいろな気候条件の地域があることを考えると、理不尽な話だと思う。

一説には、オリンピックの(国際オリンピック委員会のだろうか?)収入源としてテレビ放映権料が重要なので、テレビ局連合が出してくる日程の希望には逆らいがたいのだと聞く。テレビ局が7月・8月を要求してくるのだろうか? どこの国の需要でそうなるのだろう? もしかすると、夏休み編成のコンテンツにしたい日本のテレビ局のつごうも含まれているのだろうか? テレビ局にとっては選手や東京に来る観客の健康よりも視聴率のほうが大事なのだろうが、そのつごうによる日程を選手や観客におしつけてよいと思っているのだろうか?

あるいは、競技団体が、毎年の競技スケジュールをなるべく変えたくないので、オリンピックの時期を固定したいのだろうか。

日本側のつごうとして、10月は学校や大学の学期中なので避けたい、夏休み中にしたい、ということがあるのかもしれない。それは混雑を避けるという意味ならばもっともだが、生徒や学生を(雇わずに)動員したいという動機だとすると個人の自由を奪う体制の横暴だと思う。

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あるいは、日程を動かさず、場所を動かすことも考えられるかもしれない。北海道や東北北部ならば、7月・8月に開催することも、気候条件からは可能だろう。ただし、会場整備や運営が、その地方だけの力ではむずかしいかもしれない。日本全国が協力するということならば、可能になると思う。

東京オリンピック組織委員会として、日程か場所を変えなければ実行不可能であるという判断をして、国際オリンピック委員会に、計画変更を認めるか、とりやめとするかの判断を求めるべきだと思う。日本としても東京としても恥ずかしいことではあるが、おおぜいの人の健康を危険にさらすよりは恥のほうがましだ。

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世界には年じゅう暑い国もある。そういうところでも、国どうしの平等という社会要因からは、オリンピックを開催する権利はあるはずだが、気候という自然要因の側から不可能になってしまうのだろうか。

選手の健康をたもって競技会をやるためには、冷房などを整備しなければならない、という意味で、そういう国で大会をやるのは、そうでないところに比べて、しきいが高くなるとは思う。

しかし、年じゅう暑い国ならば、その気温のときにお客を迎える準備をしておくことは、ほかの目的にも有意義だ。

他方、東京では、いちばん暑いときでもお客を迎えられるように準備するよりも、いちばん暑いときは一部業務休業でしのいで、もっとすごしやすい季節にお客を迎える準備をしたほうが、資源のむだが少ないと思う。

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わたしは東京での(水上競技以外の)真夏の開催を本気で止めたいのだが(それが気候専門家としての職責かもしれないとさえ思うのだが)、止めるための具体的行動はまだ起こしていない。限られた能力をどう使うか迷っている。同様な主張と行動案をおもちのかたがお知らせくだされば参加するかもしれない。