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zonalとmeridional、東西方向と南北方向

気象に関する英語の文書では、zonal と meridional ということばがよく現われる。そのいちばん多く使われる意味は、地球上の位置を示す座標に関するもので、東西方向がzonalで、南北方向がmeridionalなのだ。たとえば、風について([2012-03-18の記事「西風は東向きの流れ]参照)、風速の水平成分を2次元ベクトルで表わすときには、zonal component, meridional componentというが、日本語では「東西成分」「南北成分」というのがふつうだろう。(直訳すると「帯状成分」「子午線成分」となるが不自然にひびく。) [2012-04-09の記事「{x, y, z} {u, v, w}はどの方向?」]でも述べたように、東西成分は西風(東に向かう流れ)、南北成分は南風(北に向かう流れ)を正として扱うのがふつうだ。

Meridionalは、meridian (子午線経線)からきている。球面上の極をとおる大円だ。ふつうは円周の線を考えるが、3次元空間内でこの線を含む面を考える場合もあり、その場合は日本語では「子午面」という表現が適切となる。たとえば meridional circulationというのは南北・鉛直の2次元の循環なので「子午面循環」という。

緯線(緯度円ともいう)は英語では parallel だが、この英単語は、形容詞としては「平行な」という意味が基本なので、東西方向を示すときには出てこない。代わって、2つの(平行な)緯線ではさまれた帯状の領域(zone)に注目した表現であるzonalが使われるようになったようだ。

Zonalはまた、zonal mean あるいは zonal average という形でよく現われる。これは、ある変数の値を、緯度(・鉛直座標・時間座標)を固定して、経度について平均することだ。必ずではないが多くの場合、緯線ひとまわりの全経度での値を平均することをさす。日本語では「東西平均」とすることが多いが、わたしは全経度であることを明示したいときは「東西全経度平均」と書くようにしている。また直訳の「帯状平均」もよく見られ、慣用を習っていない人にはわかりにくいと思う。

Zonalという単語は、空間パタンを示す文脈で、本来の「帯状」の意味で使われることもある。とくにその「帯」が東西方向にのびている場合は、「帯状」と「東西方向」の両方の意味が複合していると思われることもある。