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本をもつ者の悩み

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】

【これは、世の中の人々の悩みのうちではぜいたくな悩みかもしれないが、勤め人としての経歴の終わりに近づいている学者の多くに共通な悩みだと思う。学者をおおざっぱに文科系と理科系に分ければ、文科系の学者の大部分と、理科系の学者の小部分に共通するだろうと思う。】

わたしは本をなん千冊か所有している。数えたことがない。

そのうちには、研究プロジェクトの報告書や資料集、講演会の予稿集など、単行本とも雑誌ともつかない、図書館やさんの俗語でいうgrey literatureもある。そういうもののうちに、ときどき貴重な情報があるのだが、どこの図書館でも保存されていない可能性があって、なかなか捨てられない。しかし、わたしのほうも、そういうものの目録をつくっていないし、箱詰めすると何をどの箱に入れたかは箱をまたあけない限りわからなくなってしまう。

単行本に分類されるだろう本もかなりある。(ここでの単行本は逐次刊行物でないという意味であり、文庫本や新書本も含む。)

単行本については、わたしは1999年以来、買ったときに、著者名、発行年、出版社など、その本を論文の参考文献としてあげるとしたら必要になるだろう情報のリストを、パソコン上のテキストファイルとして作っている。ただし、買った順に書いているだけで、整理していないし、1冊の本をファイルのなん行であらわすかを統一していないので、冊数を数えることも簡単ではない。検索の準備もできておらず、自分が何かの本を買ったかどうか確かめたいときは、その本を買ったかもしれない年のリストをエディターソフトウェアで開いてその中で文字検索することになる。

わたしは、運よく、職場にかなりの量の本を置く場所をもらえることが続いてきた。ただし最近は、背表紙が見える形で本棚に置ける場所は限られていて、大部分は箱詰めした状態になっている。また、自宅(賃貸アパート)や実家(両親の家)に置いてある本もある。自宅では、(遠からずまた引っ越すだろうと思って)本棚を整備してこなかった自分が悪いのだが、たくさんの平積みの山ができている。そして、自分の所有リストにある本の実物が、職場、自宅、実家のいずれにあるかはほとんど記録されていない。実物をさがそうとするとあちこちの山をさがさなければならなくなっている。図書館でさがしたほうが早いこともある。そういう本は手ばなしてしまって山を小さくしたほうが、残ったものをさがすのも楽になる、という理屈もわかるのだが....

わたしが本をためこむくせがあるのは、専門の研究者としてだけでなく、その周辺のいろいろなことを学ぶ「学者」でありたいという思いからきている。それで、読みきれない分量の本を買ってしまうのだが、いつか時間がとれれば続きを読もうという思いが残って捨てられないことがある。また、大学教員をしていたから、学生そのほかこれから学びたいことがある人たちに勧められる本をそろえておきたいという考えもある。勧められない本は捨ててよいこともあるが、勧められないことを示すためにとっておきたいこともある。

わたしは今は大学常勤ではないが、数年前までの自分の将来計画としては、また大学常勤になることを考えていた。その際に、自分が教えられることのうちならばどれを教えることを求められても対応したいと思っていた。また、自分と専門が近い人がいないところで新たに教材をそろえる立場になるだろうと予想していた。それで、自分の研究者としての専門ではないがそれに近いいくつかの分野の本を、買いたくなるし、捨てたくなくなる、ということが続いてきたのだった。

もし大学常勤になれて、そこの図書館の本を使えるようになれば (さらにできれば、その大学を退職してからも元教員という立場で利用ができる見通しが得られれば)、ぜひ手もとにおきたい少数の本以外は、その大学に寄付しようとも思った。(寄付してからあとどうなるかには口出しできないから、その大学があまり簡単に本を処分してしまうところだと困るのだが。) もちろん、大学図書館も、学者個人ほどではないとしても、収納場所にも管理能力にも限界をかかえているから、無制限に引き取ってくれるわけではないだろう。わたしが候補をあげて実物を陳列し、図書館側の人が引き取るものを判断して、残りはわたしの側で処分する、という流れになるだろうと予想する。

しかし、わたしがこれから大学常勤(あるいは常勤なみのスペースを占有できる非常勤)になる可能性はあまり高くないようだ。こうなると、わたし自身ではなく、どなたか常勤のかたが動いてくださらないと、大学への寄付も進みそうもない。行き先を複数に分ける必要があるかもしれない。行き先別にしわけるために、箱詰めや山積みになっている本をいったん棚にならべてみることができればよいのだが、まずその作業場所を確保することが課題になってきた。

話はいくらでも続けられるが、ひとまず本の内容にはたちいらないで、ここまでにしておく。