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寝台車

わたしは、(関東を本拠として)北海道にこれまでに20回くらい行っているが、飛行機に乗ったことは1回か2回だけだ。昔は座席列車と連絡船だった。青函トンネルができてからは、夜行の寝台車に乗った場合と昼間の座席列車に乗った場合がある。仕事をたくさんかかえた人が飛行機でなければ日程が組めないことが多いのは想像がつく。わたしが飛行機に乗らない意地をはれるのは、それほど仕事をしていないからにちがいない。昔は飛行機に乗るのがこわかったことがあるのだが、今では陸上の乗りものに比べて特別にこわいとは思っていない(飛行機運航の需要をふやさないほうが安全のためによいだろうと思うことは多少あるが)。自分の移動のためにエネルギー資源とくに化石燃料が消費されるのがもったいないというのが今のわたしのおもな動機だ。では寝台車ならばよいのかと問われると必ずしも自信がない。あとでもう少し考えてみる。

2013年9月に札幌でCoSTEPとSTS学会のシンポジウム[2013-09-30の記事]に出席したときは、往復とも寝台車を利用した。行きは木曜日の夜19時上野発の「北斗星」で金曜日の昼11時半に札幌着。帰りは金曜日の夜22時札幌発の「はまなす」で土曜日の朝5時半に青森着、奥羽本線に1区間乗って新青森から東北新幹線。(新幹線が新青森までのびる前は函館で乗りかえる必要があり「はまなす」の5時間のために寝台券を買う気がしなかったのだが、7時間半寝ていられるならばよいような気がする。) ただし金曜日に休みをとって自費で切符を買ったので、勤め先の出張で寝台車を使うことが認められるかどうかは確かめていない。

北斗星」の車両の製造年を確かめようと思ったのだが車内の通路には製造年は見あたらず、3号車に「平成9年改造 苗穂工場」という文字があった。個室型に改造したときなのだと思う。もし青函トンネル開通時に新車だったとしても25年たっている。別の列車で使われた車両が転用されたならもっと古い。わたしは寝台車はこういうものだと思っているのでとくに不便とは思わないが、ノートパソコンはなるべく常時使いたいので、電源コンセントが洗面所のひげそり用しかないのだけは不便に感じる。

11月になって、JRの「ブルートレイン」がちかぢか廃止されるというニュースが流れた。どうやら「北斗星」は廃止対象ではないらしいが、車両が老朽化したと判断された場合、次の車両を作ろうと判断されるかは不安だ。

運賃を見て気づいたことがあった。上野から札幌まで、「北斗星」だと27170円(うち運賃が17930円、特急料金と寝台料金を合わせて9240円)だが、寝台車を使わず新幹線を利用すると、どの列車を利用するかで少し変わるようだが、代表的な例で22870円(運賃14070円、「はやて」6300円、「スーパー白鳥」1090円、「スーパー北斗」1410円)となるらしい。寝台と座席との休まりかたの違いはあるのだが、新幹線のほうがだいぶ安いので、値段が高い寝台車を利用しようという動機は起こりにくいだろう。(とくに出張旅費の場合、行き先で決まる定額を出す制度ならば新幹線の額を標準にして差額は個人負担となりそうだが、実際に使った乗り物を確認して実費を出す制度になっていると「寝台車はだめ」というルールができてしまいそうだ。) ところが内わけを見ると、この差の大部分は寝台かどうかの「料金」の差ではなく「運賃」の差なのだ。なぜ「運賃」に差があるかといえば、盛岡以北の新幹線開業時に在来線がJRから第3セクター会社に移管になったせいだ。第3セクター会社の収入源としてはJRの夜行列車の運賃は重要で、JRなみに下げることはむずかしいだろう。新幹線を重視する鉄道政策は、貨物とともに夜行長距離列車をも冷遇していると思う。

さて、エネルギー資源の件にもどる。同じ距離を人が移動するのに必要なエネルギー資源を比べたとき、平均的意味で、鉄道のほうが飛行機よりも少ないというのはたぶん確かだと思う。数値例をすぐに引用できないが見た覚えがある。しかし、鉄道を座席車と寝台車に分けた数量評価は見たことがない。寝台車のほうが同じ大きさの車両で運べる人数が少ない。「北斗星」のB寝台で2段2組のスペースは座席車ならば8席に相当するので定員は座席車の半分になるだろう。個室ならばさらに少なくなるはずだ。ひとりあたりの必要エネルギーはそれに反比例して多くなってしまう。また、乗っているあいだ人を快適に保つための空調などのエネルギー需要は時間に比例してふえるだろう(飛行機と地上の乗り物とではまわりの気温や気圧が違い空調のしくみも違うので比較は単純ではないが)。おそらく、ここまで考慮しても、寝台車のほうが飛行機よりも必要なエネルギーは少ないということになると予想しているが、どなたかきちんと評価してくださるとありがたい。