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エネルギー基本計画に対する意見に対する意見

国の総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会が2013年12月に「エネルギー基本計画に対する意見」という報告 http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonseisaku/report-1.pdf をまとめた。これはエネルギー基本計画改訂の原案であるらしい。これについて2014年1月6日しめきりでパブリックコメント募集があったので、次のような意見を書いた。

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第2章第1節1(1)
「3E」は、電力中央研究所が主催したトリレンマ有識者会議からの提言(2000年)の「経済発展、資源・エネルギーの確保、環境の保全の三つの目標」と似ていますが、ここではエネルギーに限定した、経済的効率と環境負荷が考えられています。有識者会議提言のように、人間社会全体の問題としてとらえるべきだと思います。もちろん、その解決はエネルギー政策だけではできません。しかしエネルギー政策をそれの枠内で考えるとその外の問題に思わぬ影響を与えます。エネルギー政策を決めるには国の目標設定の何を知る必要があるのかを問うべきと思います。複数オプションを示しながら問うべきかもしれません。

第2章第1節1(3)
20世紀の経済成長はほぼ常にエネルギー資源最終消費の増加を伴ってきました。今後、エネルギー資源需要増を伴わない経済成長は不可能ではないまでも、必ずできると期待できるものではありません。経済成長を政策の絶対的目標とするのではなく、もし経済成長ができなくても人びとの幸福がそこなわれない政策を考えるべきです。

第2章第2節2(3)、第3章第6節2、第3章第8節2
「水素社会」は不適切な目標設定だと思います。目標は再生可能エネルギーの供給とエネルギー需要の時間・空間的くいちがいを克服することであり、その手段として化学エネルギーの形で貯蔵・輸送することです。水素よりも安全・確実・低コストで輸送できる媒体物質を見つけて技術を確立することが先です。その見通しのないまま水素にこだわって大規模化するべきではありません。

第3章第1節2(3)
核燃料サイクル技術は、高速増殖炉技術の困難、MOX使用後の燃料の再処理の困難、再処理工程で高放射能かつ化学的に危険な物質を扱うことの困難を考えると、取りやめるべきであると考えます。「使用済み燃料の貯蔵能力の拡大」に最大限の努力をそそぐべきと考えます。これは第8節に書くべきことと思いますが、並行して、不確実な可能性への投資として、高速炉に頼らない形での寿命放射性核種消滅技術の基礎研究を推進すべきと思います。

第3章第2節1(4)
メタンハイドレートは、歩どまり、エネルギーコスト、採取現場の安全、環境影響などが未知ですので、必ず開発するという決意で突進してはならないと思います。一方でもし安全・低環境負荷・低コストで採取できた場合のシナリオを描いてもよいが、他方でそれをあてにしないシナリオを描くことも必要です。

第3章第2節2
時間スケール数か月の需給困難への対応を考えておくべきです。その原因には、一次エネルギー資源供給国あるいは輸送経路の政治・軍事情勢、大規模自然災害あるいは偶然による多数設備の同時故障、異常天候による供給能力低下や需要増大、などが考えられます。この需給困難にさらに短期的な故障が加わっても生命維持、交通安全などに必要なものが急に止まることを予防すべきです。そのためには、エネルギー需要の優先順位づけをし、一部の産業や公共事業に休業してもらう必要があると思います。これはエネルギー行政の範囲ではなく産業政策や各種行政政策ですが、エネルギー行政が呼びかけ人の立場になるでしょう。休業してもらうところへの補償措置が必要になるでしょうが、その制度設計には、異常事態の終了後は再開することを期待してその産業・事業を保護するのか、エネルギー需給問題の起こりにくいところへの移転を期待するのか、むしろその産業・事業からの撤退を促すのか、も考えながらする必要があります。

第3章第9節
エネルギーに関する国民の理解は必要ですが、公的広報や教育がその観点に偏ることは危険です。世界人類の健康で文化的な生活を持続させるにはどうしたらよいかを考える中で、食料、水、環境などと並列にエネルギーの役割を位置づけ、市民の政策意見形成能力と個人行動(省エネやエネルギー供給者選択など)に向かう能力を高めるような教育・広報活動をくふうするべきであると考えます。