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最終列車は午前8時台 - 2002年9月、ニューヨーク郊外

(この記事は、公共に向けての情報提供や意見表明ではなくて、個人的記録と感想です。個人ブログには性格の違う記事が混ざります。「カテゴリー」で分類することができるかもしれませんが、まだうまくできていません。)

わたしは自分が「鉄道マニア」ではないと思っているが、鉄道にこだわりのある人であることは認める。資源問題の観点から、個人がそれぞれ自動車を必要とするような世の中はよくないと思っており、公共交通機関が発達しているのがよい世の中だと思っている。この部分は理屈だ。公共交通機関のうちで比較的に鉄道をひいきにしている。この部分は個人的好みだろう。

2002年9月にニューヨークに出張したときのことは「2002年9月11日の記憶」として2011年9月11日にちょっと書いたが、そのとき、わたしは、鉄道にこだわった行動をとった。

コロンビア大学の、New York州Palisadesのキャンパスで約1週間の会議があった。ここには、Lamont-Doherty Earth Observatory (LDEO)という研究所があり、そして、当時はその一部だったと思うのだが、IRIという略称で知られる気候の研究所がある。Palisadesはニューヨーク州ではあるのだが、ハドソン川の西側にある。ふつうに出張予定を組めば、JFK (John F Kennedy)空港発着の飛行機を使いNew York市を横断することになるが、Newark空港(こちらはニュージャージー州だが)のほうが近い。旅行案内を調べてみると、どちらの空港にも連絡鉄道の計画があったが、Newark空港のほうはすでに開通していて、JFKのほうは建設中らしかった。こうなるとぜひNewark発着で行きたくなった。航空会社を選べば成田からの直通便もあることがわかった。それにしても、Palisadesには鉄道の駅はないので、自動車に頼らないわけにもいかない。

Palisadesでの1週間の会議の前日に同じコロンビア大学ではあるがNew York市内の本部キャンパスのほうで開かれる小さな会議にも出ることになった。主催者が大学の近くに宿をとってくれた。地下鉄の駅から歩ける距離だ。

Newark空港からは、空港連絡鉄道、New Jersey Transit、PATH (Port Authority Trans-Hudson)、ニューヨーク地下鉄と乗りついだ。(PATHのWorld Trade Center駅へ行く線は休業中だったがNew York市内にはいるもうひとつの線は平常運行だった。)

Palisadesの会議のために主催者がとってくれた宿は、Nanuetという町の近くにあるdrive-inホテルだった。前日の会議の出席者は、市内から貸し切りバスでホテルに運ばれ、次の朝から、ホテルから会場(Palisadesキャンパス)に貸し切りバスでの送り迎えがあった。地元の知り合いに頼れない会議出席者の行動としては、ホテルと会場を往復し、会議が終わったあとはホテルでタクシーを呼んで空港に向かうのが標準的なパタンだっただろう。(Palisadesキャンパスには本部キャンパスとの大学内バスがあるので、それに便乗して市内に向かうことは可能だったが。)

ところが、期待していなかったのだが、宿に着いて周辺の地図を見たら、Nanuetには鉄道の駅があるのだった。New York州内にもかかわらず、New Jersey Transitの線がとおっているのだ。駅は宿からは2kmたらずの距離なので、歩いて見に行った。(ただし、宿の付近では歩道のない車道のわきを歩く必要があった。) 鉄道は単線で、電化されていない。昔から貨物用に使われていた鉄道を、最近、通勤用に再開発したものと思われる。時刻表を見ると、両方向に毎日3本か4本の列車が通っているのだが、大都会のほうに向かうHoboken行き(だったと思う)の列車は朝だけで、最終列車が午前8時台なのだ! 反対向きは、午後から夜にかけて、時間をあけて走っている。通勤の需要に応じるが買い物などほかの需要は見こんでいないということなのだろう。

ともかく、わたしの帰りの飛行機との連絡にはちょうどよい時間に列車があった。スーツケースを持って2kmの道を歩くのは楽ではないが、荷物なしで下見ずみの道なので、不安はなかった。駅の自動販売機だったか車内だったかは忘れたが、空港連絡鉄道のぶんを含めた切符を買った(はずだった)。ところが、New Jersey Transitの本線【と書いてしまったが、Main LineではなくてNortheast Corridor Line】に乗りかえたあと、検札にきた車掌が切符を持っていって返してくれなかった。たぶん、本線の駅までのお客に対しては切符を回収するのが正しい処理であり、できたばかりの空港連絡鉄道の利用者への対応がまだ頭にはいっていなかったのだと思う。それで空港連絡鉄道の切符を二重に買うはめになった。それにしても、NanuetからNewark空港までタクシーに乗るよりは安くついたと思う。