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ちいさい〈アキ〉みつけた

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたか、かならずしも しめしません。】

【この記事は個人的おぼえがきです。意見を主張するものでも、知識を提供するものでもありません。】

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「ちいさい秋 みつけた」は、サトウ ハチロー 作詞、中田 喜直 作曲 の歌だ。わたしはこの曲に、こどものころから したしんでいる。小学校の音楽の時間にうたったおぼえもあるし、テレビできいたこともある。

わたしがよくおぼえているのは曲のほうだ。歌詞のほうは、かろうじて、1番 (詩としては第1連) は全部おぼえている。ただし「もず」は、ながらくわからなくて、「ボクのこえ」といっているのだろうか、などとおもっていた。小学校上級ぐらいのとき、歌詞を文字でみてやっとわかった。わたしは、動物や植物の種類のなまえがにがてで、いまだに、鳥のうちで「もず」がどんなすがたをしていて、どんな声でなくのか、しらない。

おとなになって、季節というものを論じるようになってからかんがえたのだが、「ちいさい 秋 みつけた」ということばがでてくるのは、おそらく、すなおな感覚では まだ夏と感じられる時期に、ささやかながら秋の特徴のあるものをみつけたときなのだろうとおもう。ところが、わたしがこの歌からおもいうかべる季節は、そうではなく、あきらかに秋になっているときなのだ。おそらくそれは、わたしがこの歌をうたったり聞いたりした季節のせいなのだろう。たぶん、夏休みあけすぐは、先生も生徒も、夏の歌をうたう気分で、この歌はでてこなかったのだろうとおもう。

作曲者が 中田 喜直 さんだと知ったのは、中学生か高校生のころ、「夏の思い出」と「雪のふるまちを」の作曲者を知って、おなじ人がつくった曲をしらべたときだったとおもう。【なお、おとなになってから、この 3つの曲のはじまりがいずれもミの連打であることに気づいた。それは、ほかの曲をきいて、まるで中田さんの曲だとおもい、その理由をかんがえたときだった。[読書ブログ [音楽CD] Nat Yontaratak (1996) Glory to Our Great Kings]

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さて、わたしはこの歌の「アキ」が「秋」であることを知っているけれど、メロディーがそれにあっていないように感じる。この歌がうたいあげている「アキ」は、もしかして「秋」とは別のものではないか、とさえ おもえてしまうのだ。

わたしが話すことばには、高低アクセントがあり、「秋」ならば「ア」の音が高く「キ」はそれよりも低くなっているべきなのだ。音のあがりめ・さがりめを かぎ型であらわして〈ア⏋キ〉とかくことにする。 (引用符をかぎかっこから別のものにかえる。) わたしのアクセントは、いわゆる東京型で、NHKアクセント辞典が標準的とするアクセントとだいたいおなじである。自分で気づいたおもなちがいは [2012-12-03 の記事] に書いた。そのほかにもときどきちがうことがあるのだが、それはおそらく、NHKが個別の語について東京 native の人の発音を尊重するのにたいして、わたしは (わたしの認識しているかぎりの) 東京型の規則どおりにしようとするからだとおもう。ともかく、「秋」については NHK もわたしも同様だ。

わたしは歌のふしがアクセントにあっていないことをいつも気にするわけではない。日本語話者であっても native のアクセントは人によってまちまちであり、無アクセントの人もいることを知っているので、自分のアクセントとちがっていてもまちがいだとはおもわない。しかし、この歌のばあいは気になった (おそらく、ほかの大部分のところで東京型アクセントにあっているからだ)。そして、作曲者が中田さんであり、中田さんがことばの (東京アクセントでの) あがりさがりにあわせてメロディーをつけることがおおいことを知ると、ますます気になった。

「ちいさい秋 みつけた」の歌のなかでは、最初の2回は、「ア」と「キ」がおなじたかさの〈ア キ〉だ。3回めに、あとのほうが高くなる〈ア⎾キ〉になる。そして、1番の最後に3回くりかえされる「ちいさい秋」は3回とも〈ア⎾キ〉だ。

東京型アクセントでは、さがりめだけが語の判別に必要で、あがりめは特徴ではないから、あがりめのある〈ア⎾キ〉と平板の〈ア キ〉とは理屈のうえではおなじはずだ。しかし、わたしがこの歌に違和感をもつことは、おなじたかさのばあいにはなく、あがりめがあるばあいにだけ生じる。

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あがりめのある〈ア⎾キ〉で、わたしがおもいあたることばは、動詞「あく」 (〈ア⎾ク⏋〉) の名詞形、つまり「あいていること」「あいているところ」にあたることばだ。

たとえば、座席があいていることだ。ベンチや、電車のいわゆるロングシートのように、ひとりずつにしきられていない座席に、からだの小さい人ならばすわれるが、からだの大きい人はすわれないぐらいの場所が あいていることがある。「ちいさい〈ア⎾キ〉、みつけた」でわたしがおもいうかべる情景は、まずそういうものになる。

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また、「アキ」という かたかな 文字列は、校正記号として、紙面の部分を空白にしておくためにつかわれることがある。日本語の漢字や かな のフォントは正方形を基本にしているから、「全角アキ」や「半角アキ」がつかわれるが、文字をきれいにわりつけるために、さらにこまかいアキがつかわれることもある。そのような校正刷りを見る人は、印刷やさんがいれてくれた〈ちいさい アキ を みつける〉 必要があるかもしれない。

【「半角アキ」よりもこまかいアキの指定の方法として、「四分アキ」というのを見たようなおぼえがあるが、それが「四分の一角アキ」のことなのか、「十分の四角アキ」のことなのか、わからなくなった。あいまいなのでつかうべきでない表現なのかもしれない。印刷の現場でつかわれている文字の大きさの単位が「ポイント」ならば「3ポアキ」、「級」ならば「3Qアキ」のような表現がつかわれているだろうと想像しているが、わたし自身はそこまで印刷技術にたちいった校正指定をしたことがない。】