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地球科学(地学・地理)の用語をめぐって考えること (2)

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】

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[2017-05-21 地球科学(地学・地理)の用語をめぐって考えること]の続き。ただし、6月なかばにたまたま見かけた(しかし追いかけなかった)話題をきっかけに、前から思っていたことを思い出して文章にしてみただけであり、あらたな調査をしたわけではない。

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地球惑星連合のセッションで聞いた(5月21日の記事でふれた)教科書の用語の調査に関する発表のなかで、索引に出てくる用語には1つの教科書にだけのっている語が多い、という話があった。

この状況の原因のひとつに、同じ概念が教科書によってちがう語で表現されている場合もあるだろう。それは検討対象の用語問題のひとつの類型だ。(ちがう概念が同じ語で表現されている場合にくらべれば実害は少ないと思うが、試験の採点などで表現によってまちがいにされるのはまずいので、同意語集などが必要になるだろう。)

ちがう語というよりも、同じ語の表記のゆれとみるのが適切な場合もある。たとえば「地すべり」「地滑り」「地辷り (教科書ではこの字は使わないと思うが)」はその例だろう。「侵食」「浸食」も、わたしは表記のゆれと見る (意味の重なりのある別の語と見る人もいるだろうと思うけれども)。

また、地学なり地理なりの科目のねらいからすれば教科書にのせるべき語が、特定の教科書にはのっているが、ほかの教科書にはのっていない、という状況もあるかもしれない。この場合は、のっていない教科書にものせてもらうように働きかけるべきだろう。

他方、特定の教科書にだけのっていることが、悪いことではない場合もあると思う。そういう語は、地学なり地理なりを習ったならば覚えているべき語ではないのだ。たとえば、教科書に出てくる地名・人名などのうち、ぜひ知っておくべきものは少なく、大部分は、具体例として出てくるが、他の具体例でもかまわないものだと思う。(具体例なしではわかりにくく、覚えるべき語を覚えるためにもうまくないものになるだろうと思う。)

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大学受験を念頭においた教育の現場で、覚えるべき語として何をとりあげるかは、大学入試の出題を見て、受験産業(参考書、塾・予備校の教材、模擬試験、受験対策をする場合は高校などの学校も)が考えているだろう。そこで、語の数がふえてしまう傾向があると思う。

状況をむずかしくしているのは、入学試験の出題者が匿名であり、しかも問題自体のほかに出題意図は示されないのがふつうで、それを推測しようとしてもはずれることもあることだ。

  • 出題者は話を具体的にするために出したが、それを直接知らなくても答えられるはず。
  • 出題者は重要概念だと思ったが、同僚学者は重視していない。

といった場合も、受験産業が重要語とみなしてしまう可能性がある。

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学校教育用語を考えるうえでは、不統一を整理することも有益だとは思うが、まず、標準の「覚えるべき概念」のリスト(の暫定版)をつくることを優先させたほうがよいと思う。

ただし、この「覚える」が、まる暗記であることは望ましくない。知識体系の中に位置づけて使えるようになることが望ましい。

標準の「覚えるべき概念」の数は、現在の教育現場で覚えるべきとされている用語の数にくらべて、しぼりこむべきなのだと思う。

その「覚えるべき概念」のうちで、用語の不統一がある場合は、「ほぼ同義語」として記載した表をつくったうえで、標準として勧める用語を(さらに表記も)決めたほうがよいだろう。

実際には、「覚えるべき概念」の範囲を確定することはむずかしく、入れるか入れないか迷う概念についても、同様な検討をすることになるだろう。