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GCM

気象むらで「GCM」と言えば、「大循環モデル」(general circulation model)のことだ。1990年代以後は「全球気候モデル」(global climate model)のつもりで使う人もいるが、その違いは会話にさしつかえないことが多い。

【[2014-01-30補足] 大気の大循環モデル・海洋の大循環モデル・その他のものを部品として組み合わせて構成されたものを「大気海洋結合(大循環)モデル」といい、「全球気候モデル」も、必ずというわけではないが多くの場合にそれをさす用語である。】

ここでいう「モデル」は、大気のふるまいを物理法則に基づいた数値計算によって近似する計算機上のプログラムまたはその基本となる理屈をさしている。

「大循環モデル」という表現は歴史的慣例による。「大循環」(general circulation)という表現は気象の数値シミュレーションが始まる前からあった。これは、大気または海洋の流れの全地球規模のパタンのうち基本的と思われる特徴をさすものだと言ってよいだろう。たとえば「地上付近の風が、低緯度では東風(貿易風)、中緯度では西風(偏西風)であることが多い」という特徴である。大気の大循環 [教材ページ気候システム論:大気の大循環参照] のうち、低緯度の部分の基本的構造はハドレー(Hadley)循環であり、その特徴は、時間平均、東西全経度平均してしまった南北・鉛直2次元定常モデルでも再現することができる。もし大気全体がそうだったら「大循環モデル」は2次元定常モデルをさすことになったかもしれないが、そうはならなかった。中緯度の部分の主役は、西風の中を移動する気圧の谷あるいは温帯低気圧である。たとえ、ほしいのが時間平均、東西全経度平均した特徴だとしても、その数量は、時間変化と各時刻の東西方向の不均一とを表現できるモデルでないと再現できない。そこで、「大循環モデル」は、空間3次元で時間変化も明示的に表現するモデルをさすことになった。[この段落は2008年に書いた教材ページ「気候変化の予測型シミュレーションでのモデルの使われかた」からの再録。]

【[2016-11-20補足] 「大循環」については[2014-06-18の記事]もごらんください。】

他の分野の話題では別のものをGCMと言うが、ぶつかって困ることはあまりない。

ぶつかった例としては、数学用語の最大公約数(英語greatest common measure)がある。最大公約数のほうはGCD (greatest common divisor)という表現もあり、これならばぶつからない。(幸か不幸か「大循環データ」general circulation dataという表現は頭文字略語になるほど熟した用語となっていない。)