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低気圧、高気圧

「気圧」は、空気の圧力のことであり、物理量である。気象の文脈では「気圧」と「圧力」という用語は区別なく使われる。

しかし「高気圧」「低気圧」というのは物理量ではなく、大気中に現われた構造をさす用語である。水平2次元的構造をさす場合と、3次元的構造をさす場合がある。

先にできたのは水平2次元的なとらえかただ。ある一定の高さ(たとえば海面の高さ)の水平面上での気圧の分布を等値線(気圧なので「等圧線」)の形で表示することができる。このとき、等値線が閉じた曲線になるところは、気圧がまわりよりも高いところか、まわりより低いところかのどちらかだ。前者が「高気圧」、後者が「低気圧」と呼ばれる。高気圧や低気圧と呼ばれる根拠は、このように水平方向の隣との比較に基づいており、気圧の絶対的な値は使われない。

上空についても、一定の高さ(たとえば5000m)に注目すれば、その高さの水平面での高気圧・低気圧を認識することができる。ただし、上空の天気図はふつう等圧面(たとえば500 hPa)についてかかれ、等高度線がひかれる。幸いなことに、等圧面でみてまわりよりも高度が高いところは、それに近い水平面でみてまわりよりも気圧が高いところにあたる。そこで、等圧面高度が高いところを「高気圧」、低いところを「低気圧」と呼んでよい。

さて、地上に低気圧という2次元構造があるときは、上空にもなんらかの構造が伴っており、3次元的な構造ができているのがふつうだ。それを認識する経験を積むうちに、少なくとも2種類の代表的な構造があることがわかり、「熱帯低気圧」「温帯低気圧」と名づけられた。

熱帯低気圧」は地上天気図では等圧線が同心円状になっていて、中心部に強い上昇流があり、そのまわりに積乱雲が分布する。対流圏界面(対流圏の上端、熱帯では高さ約15km)付近では、地上の低気圧の中心付近を中心とした高気圧になっている。「台風」は熱帯低気圧のうち北西太平洋で発生して地上風速がある基準以上になったものをいう。

温帯低気圧」は南北温度勾配のあるところにでき、とくに温度勾配の強くなった領域(「前線」)を伴う。対流圏中層で見ると、西風(偏西風)の中の気圧の谷になっている。

熱帯低気圧温帯低気圧は、地上では低気圧だが、上空では必ずしも低気圧とは限らない。しかし、上空まで(だいたい対流圏上端まで)含めた3次元構造をさして「低気圧」という表現をする。