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ふんいき、ふいんき

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】

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ひとつまえの [えんえんと、永遠と]の記事といっしょに思いあたったことなのだが、記事をわけることにする。

「ふんいき」ということばが、まちがって「ふいんき」とされることがある。(わざとやったばあいもあるようだ。)

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これも「えんえんと」のばあいと同じで、日本語の「ん」が母音のまえでは鼻母音で発音されることからきた まぎらわしさだ。

鼻母音を母音の字のうえに波形 (tilde) をのせてあらわせば、「ふんいき」は「Φu ũ i ki
」のようになる。ここでの「ũ」と「i」のように、母音どうしが接するけれども区別されて発音されるべき状態は、言語学用語で hiatus という[注]が、話し手にとって楽でないので、楽に発音できるかたちにかわってしまうことが多い。

  • [注] 地質学用語の hiatus とか、地球温暖化の関連の話題にでてくる hiatus ([2015-01-15の記事])とは、もともと同じことばだが、さすものがちがう。

このばあいは、[ui]という二重母音の全体が鼻音化した「Φu [ũĩ] ki」のような形になりやすい。これを かな でかけば、「ふいんき」になるだろう。(もし はっきり「ふいんき」と発音したならば「Φu i ŋ ki」となるが。)

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「鼻音化した [ui] という二重母音」には もっとよく知られたものがある。ポルトガル語だ。

といっても、わたしはポルトガル語にくわしいわけではない。入門教材のはじめのほうを読んだだけだ。

しかし、この音は、会話中心の教材ならば、第1課にあらわれることもありうる。「ありがとうございます。」が「Muito obligado.」(話し手が女性のばあいは「Muito obligada.」) なのだ。この muito は、英語でいえば much にあたる。

ポルトガル語では、a や o が鼻母音化するばあいは、ã , õ のように波形 (til) をつけてしめす。u や i が鼻母音化する語はすくないのだが、muito はとてもよくでてくることばだから記号なしで書いている。かたかなで近似すれば「ムイント」だろうが、この「ム」の母音も鼻音化している。

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「ふんいき」は「雰囲気」であると認識していれば、「ふいんき」にはなりにくい。

しかし、多くの人にとって、「ふんいき」ということばを知るほうがさきで、「雰」という字を知るほうがあとだろう。

わたしのばあいもそうだった。しかも、 (そのまえに読みとばしていたことはあったにちがいないが) 「雰囲気」という文字列をはじめてはっきりと認識した文脈は、化学反応がおこるときそのまわりにある気体という、物質的な意味だった。それと「気もち」に近い意味の「ふんいき」とが もともと同じ ことば だと気づくまでに しばらくかかった。