【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたか、かならずしも しめしません。】
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山本 (2020)の本で知ったことだが、世界のあちこちの国の地方自治体が、「気候非常事態宣言」をした。国会で決議した国もある (法律として決めたわけではないらしいが)。日本の地方自治体のうちにも動いているところがある。
- 1X [2023-11-03 補足] -
日本の国会も、2020年11月に、「気候非常事態宣言」の決議をした。
- 衆議院 (2020-11-19) 気候非常事態宣言決議 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/topics/ketugi201119.html
- 決議文はつぎのページにある: 気候非常事態宣言決議案 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/topics/ketugi201119-1.html
- 参議院 (2020-11-20) 気候非常事態宣言決議 https://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/203/201120-1.html
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この件について、わたしは 2020-03-02 に、山本(2020)の本の読書メモの中で、つぎのように書いた。また書いても同様になるので、ひとまずそのまま引用しておく。
人間社会の持続可能性のためにも、気候変化をちいさくくいとめるためにも、人間社会の生産・消費活動を、これまであたりまえだったものから、ちがったものに変えていく必要がある。これまでの「通常」(いわゆるbusiness as usual)のままつづけてはいけないという意味で、「非常」なのかもしれない。
しかし、emergency というのはうまくないと思う。とくに日本語表現を「緊急」とするとまずいと思う。気候変化対策は、さきのばしにしてはいけない(30年後を待たず、ことしからとりかかるべき) という意味では「緊急」と言ってもよいのだが、各個人にとって、一生あるいは一世代の時間規模でつづける必要があることであり、「緊急」の態勢をはてしなくつづけようとすると無理が生じると思うのだ。「非常」ならば、時間規模を限定することばがないので、「緊急」よりはよい。しかし、「非常事態」というと、なにかひとつの種類の危険を避けることに集中するべきでほかのことは軽視してもよい、という感覚になりがちだと思う。たとえば、感染症の緊急事態だと、プラスチックなどの使い捨てはむしろ奨励されがちだ。また、環境の緊急事態を理由として人権が弾圧されるおそれもある。気候の緊急事態として人びとの関心を集中させると、ほかの環境要素が軽視されるおそれがある。たとえば、二酸化炭素を排出しない太陽光発電をふやすために自然生態系を破壊するようなことが奨励されるおそれがある。
このように考えて、わたしは、いまの状況を「気候の非常事態」だというのはまずいと思う。「地球環境の非常事態」のほうが相対的にはよいが、これも自分では使いたくない。他方、「気候の危機(crisis)」だというのは(気候自身が危機にあるのではなく、人間社会が気候との相互作用のせいで危機におちいっているという意味がわかっていれば)使える表現だと思う。(ただし「地球温暖化」と言ってきたものごとを「気候危機」と単純に言いかえればよいというものではない。)
- 2X [2023-11-03 補足] -
日本の国会が「気候非常事態宣言」を議決しているが、わたしは、その内容は、「非常事態」ということばをのぞけば おおよそもっともだと思う。 (わたしは、気候変動は危機をもたらしてもなお変動ではあると思うので、「気候変動の域を越えて気候危機」などともいわないけれども。) そして、わたしからみてさいわいなことには、「気候非常事態」という用語をつかった法律を制定するにはいたっていない。したがって、「気候非常事態」ということばをなるべくつかわないようにしながら、宣言の趣旨を尊重することはできると思う。
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自治体の宣言ではないし、climate emergencyという連語でもないが、類似の表現には、わたしはすでに2005年に、 Kunstler (2005)の本の題名として出あっていた。ただし、Kunstlerは、予想される将来の、資源と環境の制約にぶつかって衰退した社会の状況をさして long emergency と言ったのだが、ちかごろ(とくに2019年に)地球温暖化対策をもとめる人たちは、(将来そのようなひどい状況がくるのをさけるためではあるのだが) ひとびとがすぐ行動するべき時期としての今が emergency だと言っているので、意味は同じではない。
また、"long emergency" というのは逆説的だから本の題名としておもしろい(著者の機転を感じさせる)のであって、すでに現実になっている事態の形容としてつかうのは (その事態からぬけだしたいという願望をこめてだとしても) うまくないと思う。
文献