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短期的な記憶を失った経験

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】

【この記事はわたしの個人的経験を書きとめたものです。このブログの記事には、学術的知見を提供するものも、社会にどうするべきだと訴えるものもありますが、この記事はどちらでもありません。】

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近ごろ、半日くらい前の自分の行動をおぼろげにしか覚えていない、という経験をした。人は自分の行動をすべて記憶しているわけではなく、忘れていく。しかし、わたしにとって、今回はちょっと忘れかたが激しすぎると思った。幸いその後ほぼ回復できたようだが。

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わたしの家(A)は東京の西のほうにある。これはもともと両親の家で、わたしは週末にはだいたいそこにいるが、横浜の職場の近くにアパート(B)を借りていて、平日にはBにいることが多い。

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ある日曜日の昼間、わたしはAから外出してAにもどったのだが、その晩に、昼間の行動を、あやふやにしか思い出せなくなっていた。

証拠物が残っていたので、翌日の月曜日の午後には、次のように行動を復元推定できた。

午前10時ごろAを出て、クリーニング屋に衣類を出したあと、その足で駅に向かい、電車で秋葉原に行き、駅前のパソコン屋で大きめのノートパソコンを買った。その隣の喫茶店にはいって、飲み物をとって少し休憩した。

それから電車でBに向かった。Bに到着して、パソコンの袋をあけ、パソコンとレシートなどを取り出して、そこに置いた。

夕方Aにもどる約束をしていたので、電車を乗りついでAに帰った。ただし、少し遅れてしまい、帰る途中で携帯に電話がかかってきて、「30分以内に帰る」と返事した。

この日のわたしは、夕方の約束に遅れて相手を待たせてしまった以外は、重要ななくしものもせず、買い物や喫茶店でのお金の支払い、電車に乗ること[注]などは正常にできていたようだ。

  • [注] ただし、細かいことだが、Aにもどる最後の区間で「スイカ」(交通ICカード)の残額がたりなくなり、切符を買って入場したにもかかわらずそのことを忘れたようで、出口でスイカを出して残高をひかれている。おそらく運賃と残高の差額を現金で払ったかと思うが、それがうまくできたかの証拠は残っていない。

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しかし、この日のわたしの行動には、不合理なところがあった。

この日にパソコンを買ったのは、親が前に使っていたものの調子が悪くなったので、それと使いがってがなるべく同じで、性能がいくらかよさそうなものを買ったのだった。だから、買ったら、Aに持ち帰って、親に使ってもらう準備をする予定だった。

ところが実際はBに向かい、しかも、自分がAにもどるときにパソコンをBに置いてきてしまった。

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秋葉原で喫茶店にはいった時点で、そのとき持っていたパソコンを買った目的を忘れ、いわば「自動運転モード」になってしまったようだ。この10年あまりのうちで、秋葉原でパソコンを買って、Aに向かったこともBに向かったこともあるけれども、Bに向かった場合のほうが毎回似た行動パタンをくりかえしたから、そちらが定型として「身についた」(これは比喩であり脳のどこかで記憶しているはずだが)ことはありそうだと思う。

他方、「BからAに帰る」というパタンでは、(自分の作業用のノートパソコンはいつもリュックサックに入れているが、それのほかに) かさばるパソコンを袋に入れて手にさげて持って移動するのはふつうではない。「自動運転モード」では慣れていない行動はできなかったのだろう。

この日のわたしの行動は、わたしを機械のようなものとして見れば理解できる。しかし、意志をもつ主体としては、パソコンを買ったのに、その目的を忘れたことに、あきれるばかりだ。

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しかも、日曜日の晩の時点では、昼間の行動をもっとおぼろげにしか思い出せず、証拠物もあまりそろっていなかったので、とても不安だった。

クリーニング屋の控えは残っていた。衣類をクリーニングに出した記憶もあった。ただしその記憶がその朝のものではなくもっと前の日のものだったような気もした。なお、クリーニングに出した衣類を入れていた手さげ袋が見あたらなかった。

茶店のレシートがあったから、正午ごろに秋葉原にいたことは確かなのだが、その日にその喫茶店にはいってレシートに書かれた飲み物をとったという明確な記憶はなかった。

パソコン屋に行った目的は覚えていたし、パソコンを選んだ記憶もあった。ただしこれもその日のものかもっと前の日のものかがあいまいだった。そして、買ったという記憶はしっかりしておらず、パソコン自体もレシートも(手もとに)なかったから、買った事実は不確かだった。

そして、Bに行ったという記憶も不確かだった。

帰りに携帯に電話がかかってきて受け答えした記憶はあった。しかしその携帯電話機が見つからなかった。電車の中か駅に落とした可能性が高く、翌日に鉄道会社に問い合わせなければならないと思った。

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月曜日の朝、携帯電話はAの家の玄関の前に落ちていたのが見つかった (仕事に来ていただいている来客が見つけてくださった)。家の鍵を取り出した際に落としたにちがいない。鉄道会社に問い合わせる必要はなくなった。携帯の通話記録を見ると、夕方の約束に遅れた件のやりとりは確かにしていた。

駅に行って、スイカの記録を印字してみると、A - 秋葉原 - B - Aと電車を乗り継いで移動していたこともわかった。

月曜日の午後、Bに行ってみると、買ったパソコンも、レシートも、そこにあった。ついでに、クリーニングに出した衣類のはいっていた手さげ袋や、前の土曜日に読んでいた本も、Aに持ち帰るはずだったのに、Bに置いたままだった。

ここまで来てやっと、「- 3 -」に述べたような行動の復元推定ができて、ひと安心したのだった。

なお、二重に運賃を払ってしまった切符は、木曜日になって、財布の中身を出し入れしているときに見つけたのだった。

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月曜の夕方には睡眠不足を感じたので長時間眠った。その後、わたしの記憶の感覚はほぼ土曜日以前と同じにもどったと思うのだが、万全でない気もしている。