[2013-09-02の記事]で予稿を示した発表をした。
予稿から発表の間に追加した情報
- 気候変動政策に科学がかかわる国際的なしくみ[説明図]
- 「第1」 2012年日本でのエネルギー政策に関する国民的議論の例
- エネルギー・環境戦略 市民討議 実行委員会(2012) 市民の選択 エネルギー・環境戦略 http://www.zenkoku-net.org/ene-kan-kikin24/
- これは政府(エネルギー・環境会議 http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/archive01.html )が2012年6月29日に発表した選択肢について議論した。
- 「第2」地球温暖化懐疑論ブログは「拡大された同僚評価」の好例か?
- J.R. Ravetz, 2011: 'Climategate' and the maturing of post-normal science. Futures, 43:149-157. http://dx.doi.org/10.1016/j.futures.2010.10.003
- いわゆるClimategate事件については次の本を見よ。Fred Pearce, 2010: The Climate Files: The Battle for the Truth about Global Warming. London: Guardian Books, 266 pp. ISBN 978-0-852-65229-9. [読書メモ]
- 「第3」Future Earth [リンク先修正 2018-06-12]
- 本家ウェブサイト
http://www.icsu.org/future-earth/http://www.futureearth.org/ - 初期設計報告書
http://www.icsu.org/future-earth/media-centre/relevant_publications/future-earth-initial-design-reporthttp://www.futureearth.org/media/future-earth-initial-design-report - (その紹介) 増田 耕一, 浦島 邦子, 2013: 地球環境研究に関する国際プログラムの動向 -- Future Earthについて。科学技術動向 2013年9月号 18-24. http://data.nistep.go.jp/dspace/handle/11035/2427
- (協働の模式図の出典) Wolfram Mauser, Gernot Klepper, Martin Rice, Bettina Susanne Schmalzbauer, Heide Hackmann, Rik Leemans, Howard Moore, 2013: Transdisciplinary global change research: the co-creation of knowledge for sustainability. Current Opinion in Environmental Sustainability, 5:420-431. http://dx.doi.org/10.1016/j.cosust.2013.07.001
- 本家ウェブサイト
- 「第4」SPEEDI問題
- 「なぜいかされなかったか」という問いへの主要な答えは、寿楽浩太氏(文科省審議会配布資料 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/066/attach/1335376.htm 2013年5月)の指摘のように、SPEEDIの使いかたとして『統治者視点』だけが想定され『当事者視点』がなかったことだと思われる。
- 予稿の「第4」のところで述べたのは、もし当事者が避難の判断のために使おうとした場合に、科学的情報を媒介する人の必要性。
質問と答え
自分の発表のときにはメモをとれなかったので、うろ覚えなのだが、覚えている範囲で書き出しておく。
- 問: 専門的暗黙知による発言と専門家の利害による発言は専門外の人にとって区別できないだろう。
- 答: 現状では確かに区別はむずかしい。専門教育の流れを変え、自分が属する専門家集団以外の専門についても意識的に学んだ人をふやすことができれば可能になると思う。
- 問: 暗黙知を明示知に変えていくことをめざすべきではないか。
- 答: それが可能な件に関してはそのとおり。しかし、専門的暗黙知の中には、専門家にまじって訓練を受け、専門家のふるまいを観察することによって習得するしかないものもあると思う。
- 問: Future Earthの構想で示された研究者とステークホルダーのかかわりかたは有望か。
- 答: 望ましい方向だとは思うが、Future Earth構想の図式は、ヨーロッパの科学政策理論家の頭の中で作られ、じゅうぶん現実的でない面もあると思う。ローカルな環境問題あるいは地球環境問題へのローカルな適応については、住民参加でそのまま適用できるかもしれないが、グローバルな問題に対する適用に関しては未知のことが多い。
- 問: ローカルな環境問題でも、ステークホルダーの立場は単純とは限らない。インドのイギリス植民地時代には、植民地政庁と藩王国とで態度が違っていた。
- 答: 発表ではグローバルな環境問題のステークホルダーがローカルな問題に比べて不明確であることを強調したが、ローカルな問題の場合は単純だというつもりはなかった。また植民地時代の環境問題は、これまでわたしは具体的に考えたことがなかったが、現代の途上国対工業先進国の問題を考えるうえで参考にすべきことがあるかもしれない。
- 問: 専門的暗黙知は実体があるのか。感覚だけではないか。
- 答: 「専門的暗黙知」と表現したことの論点をしぼって言えば「専門用語を専門内で使われている意味を理解して使えること」だと考えている。用語の定義を明示できる場合もあるが、明示することがむずかしく、理解するためには時間をかけて専門家の使いかたを観察する必要があるものもある。