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地球環境問題解決に向けて期待される、専門知識をもつ人の役割 (STS学会発表)

[2013-09-02の記事]で予稿を示した発表をした。

予稿から発表の間に追加した情報

質問と答え
自分の発表のときにはメモをとれなかったので、うろ覚えなのだが、覚えている範囲で書き出しておく。

  • 問: 専門的暗黙知による発言と専門家の利害による発言は専門外の人にとって区別できないだろう。
  • 答: 現状では確かに区別はむずかしい。専門教育の流れを変え、自分が属する専門家集団以外の専門についても意識的に学んだ人をふやすことができれば可能になると思う。
  • 問: 暗黙知を明示知に変えていくことをめざすべきではないか。
  • 答: それが可能な件に関してはそのとおり。しかし、専門的暗黙知の中には、専門家にまじって訓練を受け、専門家のふるまいを観察することによって習得するしかないものもあると思う。
  • 問: Future Earthの構想で示された研究者とステークホルダーのかかわりかたは有望か。
  • 答: 望ましい方向だとは思うが、Future Earth構想の図式は、ヨーロッパの科学政策理論家の頭の中で作られ、じゅうぶん現実的でない面もあると思う。ローカルな環境問題あるいは地球環境問題へのローカルな適応については、住民参加でそのまま適用できるかもしれないが、グローバルな問題に対する適用に関しては未知のことが多い。
  • 問: ローカルな環境問題でも、ステークホルダーの立場は単純とは限らない。インドのイギリス植民地時代には、植民地政庁と藩王国とで態度が違っていた。
  • 答: 発表ではグローバルな環境問題のステークホルダーがローカルな問題に比べて不明確であることを強調したが、ローカルな問題の場合は単純だというつもりはなかった。また植民地時代の環境問題は、これまでわたしは具体的に考えたことがなかったが、現代の途上国対工業先進国の問題を考えるうえで参考にすべきことがあるかもしれない。
  • 問: 専門的暗黙知は実体があるのか。感覚だけではないか。
  • 答: 「専門的暗黙知」と表現したことの論点をしぼって言えば「専門用語を専門内で使われている意味を理解して使えること」だと考えている。用語の定義を明示できる場合もあるが、明示することがむずかしく、理解するためには時間をかけて専門家の使いかたを観察する必要があるものもある。