3月11日の記事で紹介した、InterAcademy CouncilによるIPCCに関するレビューの委員が決まったそうだ。
http://reviewipcc.interacademycouncil.net というウェブサイトができている。
"Statement of Task"のページに、期限の説明がある。記述が一貫していないように思われるが、IACが報告を8月30日までに国連に提出し、10月30日までに公開する予定となっているのだと思う。
メンバー紹介(Bios = biographies)のページから抜き書きしてみる。ただし、キーワードの選択についても、日本語での表現についても、あまり自信がない。資料としてはIACのサイトの英語原文を見ていただきたい。
- 委員長: Harold SHAPIRO。 アメリカ(カナダ出身)。プリンストン大学もと総長(President)。経済学、学術政策、生命倫理。
- 副委員長: Roseanne DIAB。 南アフリカ。南アフリカ科学アカデミー執行役(Executive Officer)、クヮズールー・ナタール大学名誉教授。大気科学とくに対流圏オゾン。
- Carlos Henrique de BRITO CRUZ。ブラジル。サンパウロ研究基金科学ディレクター、カンピナス大学教授。実験物理学とくにレーザーによる高速現象の研究、科学技術研究組織運営。
- Maureen CROPPER。アメリカ。メリーランド大学教授、もと世界銀行主任エコノミスト。環境経済学、研究の主題にはインドのエネルギー効率や気候変化が移住に及ぼす影響などを含む。
- Jingyun FANG。中国。北京大学教授。生態学。陸上の炭素循環、生物多様性、土地利用変化を含む。日本の大阪市立大学で博士号をとっている。
- Louise O. FRESCO。オランダ。アムステルダム大学教授。農学、持続可能性と科学政策。FAO幹部の経験がある。IGBP・IHDPの土地利用変化研究(LUCC)プログラムの初代代表。
- Syukuro MANABE。アメリカ(日本出身)。プリンストン大学上席気象専門家。気象学、大気大循環モデル、気候変化研究。
- Goverdhan MEHTA。インド。インド科学大学(IIS, バンガロール)教授、同もと学長(Director)、IAC初代共同議長。有機化学、科学と政策の関係。
- José Mario MOLINA Pasquel Henríquez。アメリカ(メキシコ出身)。カリフォルニア大学サンディエゴ校教授。大気化学。オゾン層破壊に対するフロンの役割の解明で1995年ノーベル化学賞。IPCC第4次報告書執筆に参加。
- Peter WILLIAMS。イギリス。王立協会副会長。実験物理学。実験機器開発会社Oxford Instrumentsでの経歴が長く、会長までつとめた。
- Ernst-Ludwig WINNACKER。ドイツ。Human Frontier Science Program事務総長(Secretary General)、European Research Council初代事務総長。生化学。
- Abdul Hamid ZAKRI。マレーシア。マレーシア総理大臣科学顧問。生物工学や生物多様性に関する政策・外交、持続可能性のための教育。
真鍋淑郎さんがはいっている。地球温暖化の科学の基礎を作った人だが、IPCCへの直接のかかわりは少なく、とくに第4次報告書にはかかわっていないはずなので、その距離のおきかたを考慮した人選だと思う。複雑になりすぎたIPCCのしくみを単純化しようと言うのではないだろうか。
真鍋さん以外の人については直接知らないが、IPCCが関与する専門分野の内外から、科学技術行政についてものが言えそうな人が選ばれたようだ。専門分野内のカバーされる範囲が人数のわりに狭い気もするが、議論が個人別にならないようにわざと共通の話題(生態学・土地利用変化、大気化学、経済学)をもつ人を複数ずつ含めたのかもしれない。