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情報公開制度に関する意見 -- CRU電子メール暴露事件を背景として考えたこと

内閣府行政刷新会議の国民の声を聞くサイト「ハトミミ」で、常設の意見募集のほかに、期限を切った意見募集がある。きょう5月14日締め切りのテーマが「情報公開制度の改正の方向性について」だった。

昨年11月のイギリスのイーストアングリア大学の電子メール暴露事件の背後には、研究機関は情報公開制度によって何を出す義務があるかという問題があり、まだ解決していない。わたしは情報公開制度についてよくわかっておらず、イギリスと日本の制度の違いもあるかもしれないが、おそらく日本の研究機関も同様な請求が来たら困ると思う。制度改正の視野に入れていただく必要があると思ったので、意見を述べることにした。「職員の声」という窓口もあり、独立行政法人の職員であるわたしはこちらに答えるべきかもしれないが、職員というよりも科学者の立場で考えており、国民にはちがいないので「国民の声」のほうに書いた。

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1.情報公開制度全般に関するご意見

1.「国民の知る権利」を保障するためには、情報公開制度の改正が必要だと思いますか?※必須
はい
その理由を下記に記載してください(任意・200文字以内)
国民が共有すべき行政関連情報には現行制度の視野の外のものもありますので、見解の食いちがいの調停・裁定機能の強化が必要です。またデータ提供サービスなど他制度によるものを含めた広い意味の情報公開の拡充が必要と思います。
2.現行の情報公開制度全般についてのご意見等をお聞かせください(任意・400文字以内)
外国で,国費による科学研究の過程の情報が情報公開法によって請求されることによる紛争が生じており、日本も対応を必要とすると思います。見解の不一致の調停・裁定、科学情報公開を情報公開の枠組みでするべきか、公共資金による科学研究の過程の透明化とは何か、公開と特定人への開示との区別、通信の秘密や情報セキュリティとの兼ね合い、知的財産権や外国の主権との兼ね合い、など複雑な問題を含みます。
2.情報公開制度の改正の方向性について
1.開示対象の拡大・明確化について改正が必要だと思うものにチェックしてください(複数回答可)※ 必須
改正が必要だとは思わない [必須の選択肢のどれも不適当なので苦しまぎれにこれを選択した。]
その他、開示対象に拡大・明確化についてのご意見をお聞かせください(任意・200文字以内)
改正必要と思いますが選択肢にありません。現場の裁量に不満が示された場合には政府全体としての裁量が必要です。請求に応じる手間が大きく業務に支障がある場合の判断も必要です。また外国の行政機関等から受け取った情報を国家権力で開示させれば国家間の問題が生じえます。
2.開示手続きの迅速化・強化について改正が必要だと思うものにチェックしてください(複数回答可)※ 必須
開示請求から開示決定等までの期限を短縮する
そのほか、開示手続きの迅速化・強化についてのご意見をお聞かせください(任意・200文字以内)
行政機関の現場が開示困難と判断し請求者が不満の場合、とくに研究関係など行政のうちで特殊な情報の場合は、まず両方の事情を聞いて調停を試みるべきです。それが不調ならば早く不開示決定したうえで不服審査に移るべきでしょう。
3.事後救済制度の強化について改正が必要だと思うものにチェックしてください(複数回答可)※必須
不服申立てがなされてから審査会への諮問を行うまでの法定期限を導入する
その他、事後救済制度の強化についてのご意見をお聞かせください(任意・200文字以内)
特殊な情報については、実質審査前に、その対象の理解や、他の情報提供の存在などに関して、スタッフによる調査が必要であり、審査中には参考人招致が必要になると思います。準備は早く始めるべきです。
3.その他
その他、情報公開制度の改正全般についてのご意見・ご提案等をお聞かせください(任意・400文字以内)
1-2の背景説明です。2009年11月にイギリスの大学の電子メールが暴露されました。メール暴露自体は犯罪として捜査されていますが、暴露した側に正義があるかのような言論が多く聞かれます。[事件以前に]大学は情報公開法に基づいて研究の材料となったデータ(研究の成果物ではない)を請求されました。研究者は公開困難と考えました。一部は提供元から再配布不可とされているもの、他のものはデータ提供を業務とする他機関から公開ずみであり、それを業務としない大学にデータ提供の労力を払わせるのは不当と考えたのです。決定が遅れたせいもあって相互不信が高まったようです。