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気象災害被害額の増加

先に書いた天候保険に関するページでふれた産経新聞社の報道でついでに、ミュンヘン再保険による将来の気象災害被害額の予測の件が話題になっていた。わたしはまだその内容を確認していないが、温暖化に伴ってこのように気象災害がふえるのだというふうに解釈を急がないでほしい。

別のところに書いたことのくりかえしになるが、保険会社によるこれまでの気象災害被害額の統計は、明らかな被害額の増加傾向を示している。しかし、これは災害を起こすような気象現象(たとえば大雨)がふえている、あるいはそれが強まっていることを必ずしも意味しない。(これは、ふえていない、強まっていない、という主張でもないことに注意。) 同じ規模の大雨でも、洪水などのあったとき被害を受けるようなところに住んでいる人がふえ、また、そういうところでのふだんの産業活動が活発になれば、被害額は大きくなる。どちらかというと、人間社会の極端な気象現象に対する感度(あるいは脆弱性=ぜいじゃくせい)が高まっているのだ。

また、保険会社の言うことには利害を反映した偏りがあるのではないかと推測する人がいる。それは必ず正しいとは言えないが、もっともだと思われる面もある。保険会社にとっては、実際の災害被害が小さいほうが保険金支払いが少なくてすむので得だが、災害被害額に対する人々の見こみは大きいほうが保険料を高くできるので得になる。産業界が温暖化の見通しを認めるのに消極的になりがちなうちで、保険業界は違うが、それは考えてみれば当然だ。

このような議論は、すべて受け入れるのでも、すべて疑ってかかるのでもなく、根拠に立ち入って評価する必要があるだろう。みんなに詳しく調べる時間があるわけではないので、詳しく調べた人の報告を読めることが重要になるだろう。