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天候保険

1月26日朝のNHKテレビのニュース番組の中で、タイ国で農家向けに天候保険のサービスが始まったという話題があった。

検索してみると、産経新聞社が報道しているこの件らしい。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/100112/bse1001122129005-n1.htm
損保ジャパンのプレスリリースがこの朝日新聞社のサイトにあり、
http://www.asahi.com/business/pressrelease/JCN201001250010.html
損保ジャパンのサイトにはもう少し詳しい趣旨説明がある。
http://www.sompo-japan.co.jp/about/csr/climate/issue1/contents1.html

東京海上はすでにインドで現地資本との合弁会社で天候保険サービスをしている。
http://www.tokiomarinehd.com/social_respon/keytask/envi2.html

この種の保険は、経済活動でもあるし、農民の気候変動(温暖化と年々変動の両方を含む)への適応度を高める政策的意義もある。

2009年7月に雑誌Natureのブログでも気候変動への適応策という観点から話題になった。
http://blogs.nature.com/climatefeedback/2009/07/a_new_adaptation_tool_climate_1.html
これはアメリカのコロンビア大学のIRIが出した次の報告書を紹介したものだ。
Molly E. Hellmuth, Daniel E. Osgood, Ulrich Hess, Anne Moorhead and Haresh Bhojwani, 2009: Index insurance and climate risk: prospects for development and disaster management. Climate and Society No. 2, 111 pp. International Research Institute for Climate and Society, Columbia University. http://portal.iri.columbia.edu/portal/server.pt?open=512&objID=981&PageID=0&mode=2

天候の年々変動に伴う作物の収穫の変動はどうしても生じる。農家の生活を安定させるためには、収穫量の少ない年に所得を保障する必要がある。

すなおに考えると、収穫量を調べてそれに応じて保険金を出すことが考えられる。しかし、それでは、保険金が届くのは収穫後だいぶたってからになるし、収穫量を調べるための費用がたくさんかかる。とくに、収穫が少なくて地域経済が苦しいときに精度のよい調査をすることはむずかしい。

収穫の少ない原因が天候ならば、むしろ、気象データを見て、収穫が少なくなりそうであるかどうかを判断して保険金を支払ったほうが、早く安く処理できてつごうがよい。コロンビア大学の報告書の題名に含まれているindex insuranceというのは、この場合、気象データを使った指標を使って保険金の支払いを決めるしくみの保険をさす。過去の気象データの統計と最新の気象データが必要だ。各国の気象庁が観測したデータの提供を受けるのがふつうだと思うが、保険主体が観測にまで手を出す場合もあるそうだ。

気象データについてはわたしの本業の課題としてもっとまじめに考えなければならないのだが、きょうはここまでにしておく。