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WMO (世界気象機関) の「国際地点番号表」についての覚え書き

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】

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世界各国の気象庁のたぐいの機関が、観測データをリアルタイムで交換している。そのための約束を WMO (世界気象機関) で決めている。

そのうち、通報の形式についての約束を書いた本を、WMO では Manual on Codes、日本の気象庁では「国際気象通報式」とよぶ。気象庁のウェブサイトのつぎのページにある。

いまでは、気象庁版「国際気象通報式」では「別冊」のほうに収録された BUFR または CREX という形式がつかわれており、それには地点の位置座標 (緯度、経度) がふくまれている。

しかし、20世紀後半の長いあいだ、「別冊」でないほうに収録された、いわゆる気象電報のコードがつかわれてきた。そのうち、固定点での地上観測を通報する SYNOP や、固定点からうちあげたラジオゾンデなどの高層観測を通報する TEMP には、緯度・経度はふくまれず、位置は WMOに登録された 5けたの地点番号でしめされていた。地点番号と緯度・経度や地名との対応は、別の表をみる必要があった。

この地点番号は、いまでは予報現業のための重要性はうすれているが、長期継続された観測を同定するのには便利なので、つかいつづけられている。

ただし、世界の観測地点はふえており、5けたではおさまりきれない。同じ気象台・測候所で地上観測と高層観測がおこなわれていて、緯度・経度を区別する必要があるばあい、地点番号は同じで、副番号「0」「1」で区別していることがある。また、日本のアメダスの大部分の地点は、国際地点番号がつけられていない。(アメダスの地点番号も 5けたの数字で、一部の地点には国際地点番号もつけられているが、まったく別の番号なので、注意が必要だ。) 多くの国で同様なことがおきているだろう。

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かつて (1960-80年代)、気象庁は「国際地点番号表」という印刷物をつくっていた。市販はされていなかったが、わたしが 1980年代に大学院生として所属していた大学には気象庁から送られてきた本があって (図書として登録はされていなかった)、わたしはそれを参照していた。

いまは印刷物ではないが、気象庁のウェブサイトにつぎのページがあり、地点番号表自体はテキストファイルで、説明文書はPDFファイルで置かれている。ただし (ファイル自体に作成日時は見あたらないが、ウェブページの情報によれば) ここにある地点番号表は 2016年4月現在のもので、その後は更新されていないらしい。

国際地点番号表は全世界の観測地点に割り振られた地点番号を、気象官署及び関係機関で使用する目的でWMO出版物No.9 Volume Aを基に作成したものです。
 
お知らせ

  • 2015年 5月1日 気象通報式及び国際地点番号表を気象庁ホームページに掲載しました。

最新版

  • 国際地点番号表について [PDF形式:299KB] ... station.pdf
  • 国際地点番号表(平成28年4月)[TXT形式:980KB] ... station.txt

「国際地点番号表」は、WMOの出版物「WMO No. 9: Weather Reporting -- Volume A: Observing Stations」ほぼそのままの内容である。ただし、日本の地点名だけ、ローマ字 (すべて大文字) 表記のあとに 漢字表記が Shift_JIS 文字コードでふくまれている。(むかしの印刷物では中国なども漢字の地点名がはいっていたという記憶があるが、いまのものはそうなっていない。)

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WMO のサイトでどうなっているか確認しようとしたが、上記の station.pdf に書かれている URL http://www.wmo.int/pages/prog/www/ois/volume-a/vola-home.htm のページは、なくなっている。

わたしが vola-home.htm のページをローカルに保存したものが 2回ぶん のこっていた。

2015年 3月 20日には、地点番号表 (Tabくぎりのテキストファイル) をダウンロードできた。ファイル名が「Pub9volA150310x.flatfile」なので、2015 年 3月 10日現在のものらしい。「x」 は、緯度経度を度・分・秒にした、当時あたらしい形式をさしていたとおもう。(それまでの型式は、度と、分の小数1けたまでだった。)

2017 年 6 月 14日には、「2016年 5月 2日に OSCAR というシステムがうごきだしたので、Volume A は廃止される。ただし、その後 2年間は、旧システム互換のファイルも提供する。」という趣旨のことが書かれている。

WMO のウェブサイトは、それ以後、だいぶ編成がかわった。www.wmo.int は、気象を専門としない人むけの広報がおもになり、専門家むけの情報は community.wmo.int におかれている。「Volume A: Observing Stations」に対応する情報をさがしまわったら、つぎのところにあった。

このページの「Observing Stations」という部分に、つぎの3つのリンクがある。

「Volume A - archive のリンクさきをみると、vola_legacy_report-20160518.zip から vola_legacy_report-20230123.zip まで毎日のファイルがある。タイムスタンプからみて、vola_legacy_report.txt は zip のうちの最新とおなじ、2023年 1月 23日現在のものらしい。2年間つづけると予告されていたものが、実際は 7年弱つづいたが、そこで更新がうちきられてしまったらしい。

OSCAR は、上記のリンクは動作しなかったが、https://oscar.wmo.int/surface/ のリンクで対話型システムのページにすすんだ。ただし、マニュアルがみあたらない。上位の https://oscar.wmo.int/ を見にいくと、https://space.oscar.wmo.int/ に redirect されて、そのページの大部分は衛星観測についての情報なのだが、「Getting started with OSCAR/Surface」という見出しの下に「Read the OSCAR/Surface User manual」https://library.wmo.int/index.php?lvl=notice_display&id=20824 というリンクがある。リンクさきは OSCAR_1.9.1_en.pdf 「OSCAR/Surface User manual (2023 edition, Release 1.9.1) 」という88ページのPDF文書だが、大部分はデータを登録・修正する人のためのもので、検索利用者むけは最初の20ページ程度らしい。

OSCAR は、メニューを埋めることによって条件にあう観測点を検索できるようになっていて、結果を画面でみるほか、CSVファイルでダウンロードすることもできるらしい。検索対象には station だけでなく station cluster もある。その意味をわたしはまだ理解していないが、5けたですまない地点数の地点群に対応しているのだろう。

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地点表ファイルが更新されなくなってしまったのは残念だ。リアルタイムユーザーは最新情報だけがあればよいかもしれないが、研究者・教員としては、解析結果の再現性や、共同作業者間の情報互換性のために、過去のある時点の情報を固定して持っていたいことがある。(このようななやみは、地点表にかぎらず、観測データ集についても生じているのだが、その話は別の機会にしたい。)

わたしは、ひとまず 2023年1月23日現在のファイルを利用することにする。更新の必要が生じたばあいには OSCAR の対話型検索でおぎなおうとおもっているが、まだためしていない。