【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】
【この記事は雑談です。専門家としての知識の提供でもなく、意見を言うものでもありません。記事カテゴリーは「多言語雑談」にしておきますが、ほとんど日本語の話題です。】
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台所で洗いものをしているうちに、菜箸 [さいばし] があった。食卓用の箸よりも長めの箸だ。「さいばし」ということばを思いだしたとき、むかしわからなかったことがわかった。
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記憶によれば場所は小学校の教室だったから、50年以上まえのことになる。だれかが「さいばし」と言ったが、わたしにはその意味がわからなかったのだ。言ったのはその教室で授業をしていた先生だったかもしれないし、教室のそうじをしていた生徒のだれかだったのかもしれない。教室の黒板にかかれた字や図形をさししめすために用意された棒があった。木か竹でできた、細長い円柱で さきがすこし細くなっている (しかし、とがってはいない) 物体を、その人は「菜箸」とみなしたにちがいない。
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ある先生は、同様な棒を「むち」と言っていた。その教室にあった棒が弾力性のある材質のものだったからかもしれない。
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わたし自身は、単に「棒」と言ったと思う。しかし「棒」は大小さまざまなものをしめしうるので、それだけでは対象をしぼりこめないことがあった。
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適切な名まえは「さし棒」だと思う。
わたしは「さし」のところに漢字をあてたくない。「指し」は許容できるが、「ゆびさし」と読みたくなることもある。「差し」は (わたしは) 許容できない。「差」という字は、ひきざんのこたえと関連する意味のときにだけつかいたい。
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大学教員になってから、教室常備品リストなどでみる表現は「指示棒」だった。文字で読むばあいにかぎれば適切な用語だ。しかし「しじぼう」ときくと「支持棒」と思い、だいぶちがう物体を想像してしまうことがある。
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ちかごろよくきく表現は「ポインター」だ。これは 英語の pointer にちがいない。それは、「点」にあたる名詞の point と語源は同じだけれども、「さししめす」のような意味をもつ動詞の point からきたことばにちがいない。この動詞の point を日本語のなかで「ポイントする」のような形でつかう人はいるかもしれないが、日本語の外来語として定着しているとはいえないとおもう。日本語の「ポインター」は「ポイント」からの派生語でなく独立の外来語だ。
「ポインター」は、むしろ、光をつかってスクリーン上に点のようなものを表示する道具をさすことが多い。また、パソコンなどの画面の位置をしめす記号 (点のようなものだったり、十字形やX形だったり、短い矢印だったりするが) をさすこともある。このようなばあいは、「点」にあたる「ポイント」との連想もはたらく。「ポインター」ときいて棒のかたちをしたものは思いうかびにくい。
【なお、わたしにとって、「ポインタ」 (長音にするかどうかの問題にはここではふみこまない) ということばをつかいはじめたのは、プログラム言語のなかでの用語としてのほうが早かった。これも「さししめすもの」ではあるのだが、計算機の記憶装置のなかでの位置をさししめすもの、あるいは、他の変数をさししめすものだ。わたしはこれがにがてなのだが、C 言語ではポインタをつかえないと用がたりないことがあるので、しぶしぶ つかった。】
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やはり、さししめすためにつかう棒をさす表現は、「さし棒」がよいと思う。